バトル・トラブル・ワンダフル4


さすが鳥使いだけあって生き物を操るのは慣れてんのか、キョウシロウもなんなくハチの使い方はマスターしてしまった。
しかし、外で練習できねえのかよ、蜂がぶんぶん小屋の狭い部屋の中を渦巻いてて、息苦しいったらない。
「バカね、ばれたらもともこもないじゃないのよ?」
キョウシロウがからかい半分でこっちにハチを向かわせるそぶりをする。
こらっ、やめろっ、俺の方にあおるみたいにハチをとばすなっつーの!
「飛ぶものならなんでも同じなのか?」
ハチを跳ね返しながら尋ねる。
「何バカなこと言ってるのよ、昆虫と鳥類を一緒にしないで頂戴!
鳥類はずっと高等生物よ!」
キョウシロウがふふん、といった調子で偉そうに言う。
が負けじと反論する。
「なによ、昆虫の方が昔っからいるのよ、それに人間が死んだ後も生き残るのはコイツらよ!」
養蜂やってるから虫にはあんまり抵抗ないらしい、それどころか、このかばいっぷり。
「あら〜、 はそんなにゴキちゃんのご同類にご執心なのね、知らなかったわ。
でもカンクロウはそうでもないみたいだけどお」
な、なんでオレに話題をふるんだ!
オレは虫にはあんまりいい思い出がないから、好きとはいいがたい。
だが、苦手だと認めるのもしゃくと言えばしゃくだ。
ここは、さっさと話題を転換するべきだな。

と、思ったとたん、ドカドカドカッ、と身に覚えのある振動が小屋を揺すぶる。
「な、何?」
がふいをつかれて戸惑った声を出す。
「こりゃ、バレたわね、察するにカラス使って攻撃して来たみたいよ」
さっきまでちゃらけてたわりに、冷静なキョウシロウの態度。
「‥‥みたいだな、俺がクロアリん中で感じたのと同じじゃん。
おい、キョウシロウ、おまえんとこの村って‥‥」
「そう、カラス使いが多いのよ。
アタシはかなりの異端よ、黒い羊ならぬ白いハトね」
冗談言ってる場合かよ、もともとぼろい小屋の壁に穴があいてカラスのぶっといくちばしが覗き出したぞ!
「やだわ〜、あとで弁償してよね〜」
「もうっ、キョウシロウ!ふざけてないでなんとかしなきゃ!」
さすがの もあの太くて真っ黒なくちばしが次々とキツツキさながらに出入りする様子にはびびったみたいだ。
「あのね、カラスってさ、群れてるけど別にリーダーとかはいないのよね。
烏合の衆っていうじゃない、統制が取れてないの。
おりこうなハトさんとは偉い違いよ、だいたい‥‥」
キョウシロウがまだのんきに言い募ろうとするのを遮る。
「わ〜たっよっ、もうそんなことどうでもいいじゃん、早くしねえとハチの巣ならぬカラスの巣だぜ」
「非常時にくだんないだじゃれ言ってんのはカンクロウじゃないのよ?
ま、いいわ、要するにカラスの気をそらせばいいの、ちりじりにして追っ払うのよ。
それから使い手をやっちゃえばパーフェクトね」
今俺たちに使える武器と言うと‥‥ハチか。
、あの穴を通してハチ使えるか?
ハチが襲いかかればカラスどもも逃げる方が先になって攻撃どころになるんじゃねえのかな」
「うう〜ん‥‥こうカラスがぼこぼこモグラたたきみたいに出たり入ったりしてるとやりにくいわ‥‥」
そういえば、群れにして操るやりかただったな。
あらかじめ小分けにしちまうと操りにくいってわけか。

そうこうするうちにもどんどん、突っ込んでくるカラスの顔の面積がでかくなって来た!
このにくったらしい顔!
人間も可愛い顔の方が絶対得だと、常日頃もてる弟を持つ身として実感してたりするのだが、鳥も同じだ。
こいつらの顔がオウムみたいだったら‥‥それはそれで怖いか。
「ちょっと、何ぼけっとしてんのよ、何かいい考えないの、助っ人さん?
そんなんじゃ、 とられるわよ、隣村の息子に!」
は?
何の事だ?
「もうっ、キョウシロウ、いまそんなこといってる場合じゃないじゃない、っ、いたっ!」
が狭い小屋の中でうっかり壁際に近寄りすぎて、カラスどもが突き破りかけた穴のでかいささくれに引っかけた。
「大丈夫か?!」
「平気よ、これ位!」
気の強い奴だ、でもとにかく本当になんとかしないとヤバいな、こりゃ。

バンッ

ひときわでかい音がして、壁を突き破るのに成功したカラスが一羽飛び込んできやがった!
思わず をかばって、傀儡を動かして退治しちまった。
ただでさえ狭い小屋の中はテーピングがとけた傀儡でぎゅうぎゅうだ。
「もうっ、何このグロい人形、傀儡ぅ?
ああ、カンクロウの忍具なのお?
にしても、カラス一羽に2体もいらないんじゃないのかしら‥‥」
キョウシロウのいうことはもっともだが、別に俺はこの争いを見込んで傀儡を2つしょってきたわけじゃねえよ!
‥‥そうだ!
、クロアリん中にハチ入れてくれ!」
「え?」
「いいからっ、早くしろっ!」
「は、はいっ」

クロアリの腹の中にハチを目一杯入れて外へ放つ。
カラスども、正確にはカラス使いの野郎どもも含めて、いったい何ごとかと一瞬動きが止まった。
が、すぐ、飛んで火にいる夏の虫じゃねえが、クロアリめがけて攻撃しかけてきやがった!
チャンス!
パカパカパカッ
クロアリの腹をわってハチを外へ出す!!
‥‥出した、つもりだった。
が、なぜか、出ない。
「おいっ、なんで出ないんだよっ、これじゃ駄目なんじゃん、出てカラスを襲ってくれなきゃ駄目なんだよっ!」
「やってんのよ、でもなんか、出ないのっ」
が焦って言う。
「居心地がいいんじゃないのお〜」
のんきにキョウシロウ。
「ひょっとして、巣と似てるのかも‥‥」
自信なさげな
冗談じゃねえよ!
「もたもたしてるとこっちにカラスが来るじゃん!」
そう言ってる間にも2、3羽のカラスがこっちへ目を向けやがった。
「んもう、しょうがないわねえ」
キョウシロウがハトの入っていたケージを開け放ち、ピーッとするどく口笛をならした。
「カンクロウ、クロアリのどっかにもう一つ穴開けて!
ハトが通り抜けられるように!」

奴は言うが早いか、連続してするどい口笛を鳴らし続ける。

ピーッ、ピピピッ、ピーッ!

小屋から一気に飛び立ったハトが挑発するみたいにカラスの鼻先をかすめて旋回する。
カラスって奴はからかわれると結構ムカッとするらしい‥‥なんか、俺に似てるような‥‥
すぐにつられてハトのあとを追っかけ出した。

ピーピーピッ

ハトがクロアリの中へ消えるとカラスどももあとに続いてクロアリの中へ!
「さっ、閉めんのよ!」
「よっしゃ!」

バシュバシュバシュッ

そしてクロアリの頭の部分をすぽっと抜いてやる。
そこから小柄なハトは素早く逃げ出して来た。
が、カラスは‥‥
クロアリの中ではハチが巣を(巣じゃねえんだけど‥‥)襲われたと思って大暴れ。
ギャーギャーいうけたたましい声が当たりにこだまする。
「ぞっとする声ね‥‥」
「自業自得」
「カンクロウって、残酷〜」
なんでそうなんだよ?俺はお前の頼みで手伝ってんだろうが?!

「あっ、逃げる気よ!」
がカラス使いの連中が逃げ出したのをめざとく見つけて指差した。
「逃がすかよ!」
八つ当たりとも言えなくもないが、ともかく、ここで逃げられちゃまたもとのもくあみ。
俺はカラスを使って連中の行く手を塞ぎ、手直にあったテープでまとめて縛り上げてやった。
「かっこいい〜、そうか、こういう時にも使えんのね、グルグル巻きの術!」
「‥‥頼むからそのダサイ名前はやめろよ‥‥」
『カーカー』
いつの間にか戻って来ていたカー子が の肩に止まって笑うみたいに鳴く。
キョウシロウの肩には白いハト。
‥‥目つきが悪い‥‥ハトのくせに。
きっと主人に似たんだな。

「さあ、どうしようかしら〜、こいつら」
キョウシロウが楽しそうに言う。
「お前の村の仲間だろ」
「フン、どうだか、ハト使いとカラス使いは仲良しとは言えないわよね、そもそも。
ちょっとお仕置きしてやるわ、同じ村の鳥使いのクセに私のこと襲ったんだからね」
「お前が先に裏切ったんだろうが!」
カラス使いの一人が言い返す。
「裏切るう?
オーバーね、私はこちらの隣村の使者さんと会見して、新しい忍術を教えて頂いてただけよ」
「嘘付け!」
「ふふふ、なら、体で分らせてあげるわ」
言うが早いか、またピーッと笛をふくキョウシロウ。
ハトが何羽かやって来た。
足になにか持ってる。
「闘いの後はお疲れでしょ、甘いもの要らない?」

ピッ

バシャバシャッ!
ハトが足に持っていたものをカラス使いどものあたまにこぼした。
「な、なんだ、これ?!」
「ハチミツは美容にいいのよ〜。
ま、ハチにはそんな言い分は通らないでしょうけど」
いつの間にか、ハチがにおいにつられてか、クロアリから抜け出て来ている。
キョウシロウが楽しそうに手をうごかして、ハチを連中の顔の前で操作する。
「うわっ」
「こら、お前が除けるとこっちへくるだろっ」
「やめろっ、俺がさされるっ」
いっしょくたにぐるぐる巻きにされたカラス使いどもはハチが来る度よけようと大騒ぎだ。

、お前のいとこってサドだな」
「あら、そう?これぐらいいい薬よ、あたしのカー子いじめたの彼奴らだもん」
なんでそうなんだ、おれがやったときはひどいとかなんとか言っといて?!
「いとこには甘いのかよ?」
「あれ、カンクロウ妬いてるの〜、きゃはは、かわいいっ」
やってられねえじゃん?!
あ、そう言えばさっき、キョウシロウが隣村の息子が に気があるとかどうのこうのと言ってたが‥‥

「やめるんだ!」
誰かが大声で叫びながら向こうの方から駆けてきた。
「‥‥」
の表情が硬くなる。
「ほら、ご子息の登場よ」
キョウシロウがハチを戻しながら言う。
「一体どういうことだ?!何だって同じ村のもの同志がけんかしている?キョウシロウ?!」
そいつが怒鳴る。
「だって〜、私は何もしてないわよ、そいつらが先に攻撃しかけて来たんだもん。
正当防衛よ」
「うそだ、キョウシロウは隣村の奴らと組んでなにかやらかす気だ!」
ハチがいなくなったもんだから、元気になったグルグル巻のメンバーの一人が叫ぶ。
「単に昔は仲のよかった兄弟村との和睦の道を探してるだけじゃない。
次期村長だって、 と仲直りできて損はないでしょ、ねえ?」
おもねるようにキョウシロウが言う。

やっぱ、コイツが例の村長の村長か。
てことは、こいつが に懸想してるってことか?
気に入らねえな。
気に入らねえよ!
気に入らねえじゃん!!
ハチに弱いくせに養蜂の村の娘に手出すなよ!!

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年越しそばもびっくりの更新の早さですいません!一年越し、以上ですかね(滝汗)、でもちゃんと終わりますから(^^;)。
バトルといってもたいしたことないなあ、しかもキョウシロウにいいとこ取られてるし、ははは。
ハトやカラスの生態については正直捏造です、信用しないでね!