バトル・トラブル・ワンダフル3

「新技として、蜂を操る方法でも教えてやったらどうだ。
んなもんがあるのかどうか、しんねえけどよ」
たいしていい考えがうかばないまま、思いつきで提案する。
「へえ〜、心配してくれてるのね、ありがとう。
蜂を操る方法ねえ‥‥ないこともないけど、どっちかってと、いかにさされないようにするかってかんじ、かな。
うまくかわす方法とでもいうか」
「それだっていいじゃん、要は自分は平気で敵さんがやられるようにもってくのが狙いなんだからよ。
新しい忍具として蜂を提供しちゃうんだよ、操縦法と一緒に。
農具だけじゃマンネリだからな」
「あ、それいいキャッチコピーにできそう!
きゃあ、なんかうまくいきそうな気がしてきた、ありがと〜カンクロウ!!」

うわっ、抱きついてきやがった。
かすかに甘い香りが髪から立ち昇り俺の鼻をくすぐる。
やわらかな の体がぴとっとひっついてきてあせるのなんの‥‥
は俺の慌てぶりなんて一向にしらんぷり。
無邪気な顔して、この、小悪魔め。
上目遣いで俺の反応を楽しんでやがる、いたずらっこみたいなその瞳をみてりゃわかるんだよ。

「ふふふ、カンクロウって、いかついくせにうぶでかわいいんだあ〜、ますます気に入っちゃったVVV」
な、なんて奴だ、こっちが狼狽するのを見越してのこのセリフ。
やっぱ、あのじじいの孫娘だけのことはあるじゃん。
言葉がみつからないままに、なんとか の体を離して洗い終わったカラスを収納する。

「わ〜、スゴイ‥‥そのやり方教えてよ」
「そんな簡単に覚えられるかよ、だいたい は忍者でもないんだし。」
「‥‥そんなこと、いったっけ?
確かに養蜂が専門の村だけど、兄弟村は忍びの里だよ、うちだって、ひととおりのことはみんなできるんだよ」
げ、そういや、仲が良かった時はお互い足りない人員を貸し合ってたとかなんとかいってたな。
「そんじゃ は‥‥クノイチなのか」
「そんなたいそうなもんじゃないけど‥‥まあ、10引く1ぐらいの腕はあるかな」
「‥‥なんだよ、それ」
「クノイチマイナスイチで、9ぐらいかなってこと。
ま、見習いぐらいかな」
‥‥さすが、カーコと名付けただけはあるな、このオヤジギャグのセンスはだてじゃねえぜ。
よくわかんねえけど、ま、基本は知ってるらしい。
「そんなら、そのハチの操縦法とかだって、とっくにお互い知ってるんじゃねえのかよ」
「ううん、これを忍術として活かすなんて今まで誰も思いつかなかったわ。
だ、か、ら、感心したんじゃない〜」

おいおい、また接近してきやがった、嬉しくない訳じゃないけど、俺はどうもこういうシーンは苦手だ。
みっともないと思いながら後ずさる。
「ぷっ、ほんっとに純情なんだ〜。
ま、いいや、今んとこは勘弁したげる、でも、さっきの術教えてくれたら、だよ」
こいつ〜、俺としたことが完全になめられてるじゃんか。
しかし、「術」ねえ、カラスをぐるぐる巻きにするやり方か。
仕方ない、俺たちは小一時間ほどその川っぷちでテーピングをするやり方を練習した。
驚いたことに、 はその時間内でこれをほぼマスターしちまった。
まだ、そんなにきっちりとは巻けねえけど、この短時間でこれだけできるとはかなり筋がいい。
「上達はやいな、 、たいしたもんじゃん。
でも、こんな術何に使うんだよ」
「ふふふ、内緒。
てか、私もわかんな〜い、でも知らないより少しでも多くのこと知ってた方がいいじゃない」
ま、そりゃそうだけどよ。
「んじゃ、おれにはそのハチの操縦法とやらを伝授してもらうじゃん。」
「オッケー、でもカンクロウはまさか、ハチアレルギーないよね?」
「ないない。
つらの皮も厚いって話だしな」
「ぎゃはは、んじゃ大丈夫ね、でも一応防虫ネットはつけてよね、万が一のためもあるんだし」
というわけで、グルグル巻の術(俺がつけたんじゃねえ、こんなださい命名は に決まってるじゃん !)のかわりに、俺は彼女から蜂の操縦法を教わった。
虫全般に使えるならあの、木の葉のシノとかいう奴にリベンジもできっかな、と思ったりもしたがどうやら、この術はミツバチにのみ有効らしかった、残念。
ミツバチって一口に言ってもかなり奥深い生き物なんだそうだが、それはまた後で。

さて、で、肝心の隣村の奴どもだが、いったい誰にハチの操縦法を教えりゃいいのか。
はなから攻撃をしかけてきたさっきの野郎どもみたいな奴らは問題外だが、こっちの村に協力的なやつとなると‥‥
やっぱ、さっき、 が言ってた親戚みたいな人選が無難だな。
「親戚かあ。なら、いい子がいるわ。カー子に手紙つけて連絡とってみる」
「おい、カー子は病み上がりってか、けがしてんのに大丈夫かよ」
「大丈夫よ、あの子ってばそんなにやわじゃないから。
それにいじめっこどもは大方カンクロウが始末してくれたから安心だし。」
けっこう、スパルタだな、全然温室育ちじゃねえじゃん。
などと、俺が考えてるうちに はさっさと手紙を書いて、カー子に結びつけると空へ放った。
「すぐ会えると思うわ。村境にすんでる子だから。先に落ち合う場所へ行ってましょうよ」
なんか、すっかり作戦の中に組み込まれちまったな、まあ、成り行き上しょうがねえじゃん‥‥
とかなんとか言い訳しながら、実は に惹かれてる俺、ああ、ヘタレてんなあ。

約束の場所ってのは、初めて と会った森の中からさほどはなれてない場所にある森番の小屋だった。
しっかし、なんかこの小屋やけに屋根に鳥のフンがたくさんついてねえか。
もうカラスのフン攻撃は勘弁じゃん。
「さ、入って。大丈夫だとは思うけど、隣村の奴らが来ないとも限らないでしょ」
に小屋の中へと押し込まれる。
薄暗い小屋の中で目が慣れて来たら、うわっ、なんだよ、ハトがてんこ盛りじゃねえかっ。
カラスの次はハトかよっ。
「大丈夫よ、映画じゃあるまし、襲ったりしないわよ‥‥こいつらの主人が命令したらしらないけど」
おいおい、もう鳥は勘弁してくれよ‥‥

「お・ま・た・せ〜」
お、ご主人登場か。
の遠縁とか言ってたな‥‥な、なんか、この野郎、野郎だよな、こころなしか仕草や口調が女っぽくないか?
ちゃ〜ん、ひさしぶりねえ、誰連れて来たの、初めて見る顔だけど。」
「紹介するわ、カンクロウっていうの、うちの村の人間じゃないんだけど、信頼できる人よ。
今回の作戦を考えついてくれたのも彼なの。
彼も忍者よ、傀儡師なの。
カンクロウ、彼は私のいとこでキョウシロウっていうの。
カラスじゃなくて、ハトを使うの。まあ生き物を忍具にしてるし、私と幼なじみだし、ちょうどいい人選だと思うのよね。」
はあ、まあ、そういう意味ではよさそうな人間だが‥‥
問題はそういうことじゃなくてさ、なんか、気のせいか、さっきから俺をみてる視線が、な、なんか、普通じゃねえんだけど‥‥
「あ、こら、キョウシロウ、カンクロウはだめよ、私が先につばつけたんだから!」
つ、つば‥‥何言ってんだ、 の奴。
「あら〜、残念ねえ、アタシ好みのいい男なのに〜い。
カンクロウさん?
みたいな跳ねっ返り辞めといた方がいいわよ〜、幼なじみのアタシが言うんだから、これは確かよ。
おまけにこの子のじいさん、きっと会ったでしょ、あれがまた、こまったじいさんでさあ‥‥」
「もういいわよっ、キョウシロウ、本題に入りましょう、カンクロウの目が点になってるじゃない」
「あら、本当ね、ほほほ、ごっめんなさあ〜い、つい、いい男みるとさあ、くどきたくなっちゃってさ」
な、なんなんだ、ここの村ってのはどうも普通じゃねえじゃん。
「俺は悪いけど、ノーマルなんで、その趣味はないぜ。
んで、お前、もといキョウシロウはどんな忍術使うんだよ」
キョウシロウを牽制しながら尋ねる。
「うふふふ〜、知りたい?」
こら、すり寄ってくんなよっ!
しっしっ。
「つれないわねえ。
あたしはねえ、ハト使いなの」
「へ?手品でもすんのかよ」
「ばっかねえ〜、ハトってこわいのよ、ヒッチ○ックの映画みたことないのお」
「そりゃしってるけどよ‥‥」
「ハトは平和のシンボルなんていわれてるけど、仲間イジメだって死ぬまでやんだから、恐い鳥なのよ。
それに相手は油断するでしょ、たかがハトって、そこが狙い。
小さいから狙いにくいしね。
ヒステリー起こさせたらこんなおっかない鳥はないわよ〜」

参ったな、この里はカラスやらハトやら、鳥使いばっかりなのかよ。
そんな俺の思考を読み取ったかのようにキョウシロウが続ける。
「鳥って忍具にしやすいのよね、どこにでもいるでしょ、賢いリーダー格を育成しておけば、
戦場でもそいつ一匹使うことで、地元の鳥をうまくまとめて操れるんだから」
「はい、キョウシロウのごたくはそこまで。
あたしのカンクロウにべたべたしないでよ、もう」
あたしの‥‥
固まる俺の腕を が引っ張って自分の方へ寄せる。
「本題に移るわよ。
ハチを忍具にするやり方教えるから、キョウシロウがそのやり方をマスターして、あんたんとこの里で宣伝してよ。」
「ハチねえ、鳥の方が害なくていいんだけど‥‥ま、いいわ。
あたしだって、村同士のもめごとはもうたくさんだし。
そういえば、好物のハチノコもお預け食らって長いわ‥‥」
げっ、ハチノコって、あの、ジバチの幼虫かよ。
「おいしいのにねえ〜、気の毒に。
別にミツバチとは関係ないのにさ、そこまでハチアレルギーになってんのね、みんなして」
同調する
「おい、なら、 も食うのかよ、その、ハチノコを!?」
まさかとは思うが尋ねてみる。
「何びっくりしてんのよ、当たり前じゃない、養蜂やってんのよ、ハチノコぐらい食べなくってどうすんのよ。
あれ、カンクロウはああいうの、だめなの?
忍者でしょ、山で自給自足しなきゃなんないことだってあんだから、選り好みしてちゃだめじゃない」
「そーよ、だいたい、おいしいんだから、そんなに引くことないわよ」
キョウシロウが追い打ちをかける。
いや、そりゃ、必要とあれば何だって食うけどよ、俺的にはハチノコよかハンバーグの方がありがたいじゃん、非常時でもない限りはよ‥‥
「大丈夫なの、 、この子けっこうお坊ちゃまじゃないの」
ぼ、ぼっちゃんだと!?
俺の中で切り替えスイッチが入ったことは言うまでもない。
「オイ、いらねえお話はそれぐらいにして、さっさと任務にかかるじゃん!」
「あら〜、カッコイイわ〜、じゃムダ話は終わりにしましょうか」
はニヤニヤしながらことの成り行きを見守ってやがる、全くもってどうなってんだ!

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蛇足的後書:ちょっと戦闘シーンはいつなの?!てな展開ですいません。
4でいよいよ、の予定ですのでしばしのお待ちを。
キョウシロウはひそかに贔屓の大蛇丸をイメージしてたりします、ははは、蛇と鳥は近いでしょ(無理あるなあ)