バトル・トラブル・ワンダフル 5
次期村長候補の、くやしいが男前がほざく。
「その男は誰だ、
!
お前の村のものじゃないだろう!
いったいどこの馬の骨だ?!」
なめられるとあとに引けねえじゃんモード、スイッチ・オン。
「馬の骨じゃねえよ、カンクロウってんじゃん」
いつのまにか背後に立ってる俺の声を聞いてそいつは仰天した。
「‥‥いったいどこの里のもんだ‥‥うちみたいな弱小忍び里を狙う必要はないだろう‥‥」
「だれが狙うかよ、俺の方が巻き込まれたんだぜ。
あんたらがしかけてこなきゃ、そもそも俺はこんなとこにいなかったんじゃん。
弱小っていうなら自分たちからトラブルおこすなよ!
仲直りしたがってる隣村に喧嘩ばっかり売りやがって、忍びの名をかたるならもっと地味にやれ!」
さすがにポンポンいわれてこいつも腹に据えかねたらしい。
「よそ者が口を出す問題じゃないだろう!
色々あってこうなったんだ。
‥‥講和したいとは考えていたのだが、チャンスがなかっただけで‥‥」
「嘘つき!!」
いきなり
が割り込んで来た。
「あんたはいつだってそうよ!
及び腰で煮え切らないの、なによ、父親に勘当されても頑張る位の根性がないの?!
いつだって言いなりでさ、情けないったら!」
「そ、そんなことはない‥‥」
「そうじゃない!
何よ、ハチアレルギーだからって、そんならそれなりの対策取ればいいじゃない。
だいたいハチがちがうでしょ、ハチが!
スズメバチとミツバチ一緒くたにするバカなんてあんたんとこの村ぐらいよ!
何でもかんでもうちの村のせいにするなんて最低!」
「違う、あれはおやじが‥‥」
「おやじが何よ!
おやじはいつまでも生きてやしないわよ!
あんたが次期村長なんでしょ、しっかりなさいよ!
そんなんだから、重役連中になめられるのよ!」
‥‥‥これって、これってさ、認めたくないが、いわゆる『痴話喧嘩』って奴じゃねえの?
すすすっ、と横へよって来たキョウシロウが耳元でささやく。
「残念ねぇ、
はさ、自分ではわかってないけど、このふがいないご子息が好きなのよ。
わかるでしょ」
俺は‥‥当て馬、かよ?!
なんだよ、なんだよ、なんなんだよ〜っ!!!!
追い打ちをかけるようにキョウシロウが言う。
「だから最初にいったじゃないの、
は辞めといた方がいいわよ、って。
どうせならアタシはどう?
カンクロウってさあ、結構あたし好みなのよね」
ざざざざ〜〜〜〜っと5メートルほど引いちまった。
「俺はノーマルだって言ってんだろ!
もともと任務の途中に巻き込まれただけのことじゃん、俺だって延々いすわるほど暇じゃねえんだ。
仲直りのきっかけは出来たんだし、もう失礼するぜ!」
「あら〜、残念だわ〜。
に挨拶しなくていいの〜」
そこまでお人好しじゃねえよ!
‥‥人に気を持たせやがって!
何が「お嫁さんになろうかな」だよっ!!
こんちくしょう!
だけどな、砂の忍びは転んでもただじゃ起きねえぞ。
いつか俺はこのミツバチの操縦法を極めて、蟲使いを‥‥
ぶ〜ん、ぶ〜ん
やな羽音がする‥‥しかも背中から‥‥
どうもクロアリから、だ‥‥
さっきのミツバチがまだ残ってやがったのか‥‥巣じゃねえっての!
トホホ、こんなもん背負って帰るのかよ。
気分はクマのプーさんじゃん、色は黄色じゃねえけどさ。
砂で養蜂でもやるか‥‥砂印の蜂蜜、新たな名産品、ってか?ありえねえ!
バキと我愛羅とテマリの俺をバカにした顔が目に浮かぶじゃん‥‥
「あら〜、クロアリの中にまだハチさんが居座ってるみたいねえ。
居心地がいいのかしら〜」
ぎょっ
「おまっ、キョウシロウ、まだついて来てたのかよっ!」
「ついて来たって、そ〜んなつれない言い方しないで頂戴、砂のゲストをお送りしてるだけよ」
‥‥なんで砂って知ってんだ‥‥
キョウシロウがケラケラ笑いながら言う。
「砂の額当てみりゃ誰だってわかるじゃないのさ、アンタって分りやすいわねえ.
顔にす〜ぐ出るんだから!」
あ、しまった、クソッ、
の一件でどうも頭の回転が鈍くなってるに違いない。
「まあ、そうゆうとこが
に受けたのよね、きっと。
だからさっさと追い払ったんだけどさ」
は?
え?
え!?
「そ〜よ、これ以上アンタに居座られて、
がアンタに本気になったら
2つの村を仲直りさせるせっかくのチャンスがふいよ。
頼りない次期村長をもりたてていくためには、カンクロウに長居してもらっちゃこまるっての!」
コ、コイツ!
暇人みたいなアホヅラしてるくせにとんだクセモノじゃんか!
「キョウシロウ、てめえ、いったいどっちの仲間なんだよ?」
「‥‥どっちもなにもないわ、ホントの忍びってのは風向きを読んで、うまく立ち回る能力に長けてなくちゃね。
カンクロウ、アンタまだまだ修行がたりないわよ」
とんだダークホースだぜ。
おれはキツネにつままれたような気分になった。
忍び里に規模の大小はあれ、忍びの質ってのはそれだけじゃ推し量れない。
基礎の基礎を目の前に突きつけられた気がした。
「さ、もうここらまでお送りすればいいでしょ。
はい、おみやげよ」
「‥‥いらねえよ!」
これ以上俺をバカにする気かよ?
みやげなんかいるかよ!
「そう意固地にならないでよ〜、別に玉手箱とかあやしいものあげるわけじゃないんだからさ。
蜂蜜よ、ウチの村の名産品ってことで」
ハチに関するもんなんか、もう見たくもねえ!
このニヤニヤ笑ってるキツネ男も超カンにさわりやがる。
ブーン、ブーン
この背中のハチも、みやげってか?
俺は欲しいもんは自分でゲットするぜ、押し付け土産なんかごめんじゃん!
「ほら、そんなにムカついてないでさ、ボーヤ」
ぶち
俺はものも言わずにキョウシロウの手からハチミツをひったくると、
栓をあけて中身をキョウシロウにふりかけた。
「きゃ〜、何すんのよ、いくら美容にいいからって‥‥」
俺はクロアリをどんっと地面に下ろすとカラスのテーピングをほどいた。
そしていつもの要領でバラバラに空中に浮かべた部品をクロアリめがけてつぎつぎ串刺しにした。
「なにしてんのよ、中に誰もはいってないのに‥‥」
キョウシロウがハチミツをぬぐいながらバカにした声を出したその時。
俺はクロアリの頭をチャクラ糸ですぱっと抜き去り、
さっき教わった操縦法で中のハチを全部たたき出した。
ハチはマッタリくつろいでたとこを、カラスの手足がぼこぼこ入って来て頭にきたらしく
一匹残らず飛び出してきやがった。
ターゲット・ロック・オン。
キョウシロウのハチミツあえを狙え!
「え?え?ちょっと〜っ、きゃ〜っ」
まさかそういう展開は考えてなかったらしく、キョウシロウは黒雲のように
自分に向かって来たミツバチの群れにおののいて逃げ出した。
そのあとを追うミツバチ。
あばよ!!
連中の姿が消えたあと、こっそり、しかし盛大なため息をつきながら傀儡を巻いて背負う。
「は〜」
いかんいかん。
こんなことで落ち込んでいてはいい笑い者じゃん。
気分を盛り上げねば、と俺は木々の間を飛びながら自分で自分を鼓舞する。
ハチはいなくなっちまったけど、さっきのワザはまた使えるかもしれねえ。
なんか名前つけるか。
黒秘秘技機々一発の応用だよな‥‥そーいや、こんな風に遊ぶ似たようなゲームがあったじゃんよ‥‥
思い出した、『黒ひげ危機一髪』!
‥‥
なみのネーミングセンスだな‥‥
ああ、また落ち込んで来たじゃんよ‥‥
ボタ
‥‥鳥のフン。
黒い頭巾に白々と。
くっそ〜っ、どいつだ!
目を走らせると大慌てで飛び去るハトが見えた。
はっきりとは見えなかったが、あれは、絶対キョウシロウのハトだ!
主人の仇討ちかよ?!くそったれ!
‥‥だが、だんだん笑いがこみ上げて来た。
あのキョウシロウとかいうやつもナメられるとほうっとかねえ野郎だな。
借りはきっちり返す、か。
フン、またな!俺も忘れねえぜ。
俺は頭からよごれた頭巾を取ると、スピードをあげて帰路についたのだった。
蛇足的後書:初めて書いたのが2005年の9月ですから、一年半以上かかりました(滝汗)、
引き延ばしすぎだっつ〜の。
最後はヒロインさんよりキョウシロウとの掛け合いになっちゃいましたね。
新技の名前とか書いちゃったけど、ホントはこっちがもとなんでしょうね。
本編に不釣り合いにカッコよすぎるカンクロウはリキマルさんより頂いたものですvv
最後まで読んで下さった方、おつきあい有り難うございました〜。
2007/5/3