菜の花の君 #1
にわか露店商達で賑わう歩行者天国。
週末を目前にしたなんとなくうきうきした気分も手伝って、私もいつもは素通りするその界隈を冷やかしていく。
そこでやけに派手なロン毛の男性が、怪しげなオブジェを商っているのが目に留まる。
容姿端麗な売り子に、すでに結構な人だかり。
私がもっとよく見ようにも近づけない。
女の子ばっかりね‥‥
まあ、こんだけ目立つ男なら仕方ないか、本人も軽そうだし。
「‥‥鳥とか、クモとか、変なオブジェ〜」
「アクセとかないの〜、お兄さん」
好き勝手言う女子高生達。
意外にもこびない返事が飛び出した。
「失礼だな、究極の芸術ってのは所詮アンタらみたいな人間にはわかんねえもんだけどな、うん」
「なによ、客に対してずいぶんな口の聞き方ね〜、失礼はどっちよ」
「そうよ、そうよ」
「気に入らねえなら帰んな」
ぴしゃりと叩き付ける。
「何よ、ちょっとかっこいいからって、感じ悪い〜」
「帰ろ、帰ろ!」
女の子達が立ち去ったあと、取り残された私とその売り子の目が合う。
「おね〜さんは帰んないの?」
挑むみたいな口調で、そのくせニヤニヤして私に尋ねる彼。
「え‥‥まだよく見てないから」
そう言うと、近くへ行って並んだオブジェをしげしげ見る。
確かに‥‥なんというか‥‥すごいユニークではあるなあ。
「ちょっと変わってるよね‥‥でも、かわいいような気もする‥‥埴輪みたい」
「ハニワねえ‥‥ま、あんたの方がさっきの女どもよか見る目はあるみたいだな、うん」
「特にこの鳥‥‥ほら、スヌーピーの相棒のウッドストックにくちばしつけた埴輪版って感じ」
「ええ〜っ、まいったな‥‥ま、いいや、あんたなんて名前?」
カチン。
「ちょっと、私、そんな簡単な女に見える訳?
見ず知らずの相手にいきなり名前なんか教える訳ないでしょ!」
いかにもついで、という感じで呼び名を聞かれた事にむっとして言い返す。
「へえっ、こりゃ失礼。
さっきいた女の子達は向こうから教えてきたもんでね、ごめんごめん」
革ジャン野郎が肩をそびやかして謝る。
‥‥ふんだ、見なきゃ良かった。
くるりと回れ右して帰ろうとすると後ろから声が追いかけてくる。
「お嬢さん、どっちの方角へ帰るの」
‥‥こいつストーカーかよ‥‥にしては女には不自由しなさそうだけど‥‥
ほっとけばいいのに、つい反応してしまうのは、私も彼の事が気になってるからだ。
あんた→お嬢さん、に格上げしたことに彼なりの気配りを感じながらも、やっぱ知らない相手に‥‥
という迷いの板挟みになって、後ろを向いたまま反射的に正反対の方向を指差す。
くすっ、と笑う声が聞こえる。
絶対バレてる‥‥
「じゃあ毎日いい眺めが堪能できてる訳だね、羨ましいよ、うん。
また来てね〜」
彼の声を背に聞きながら、ウソ言っちゃった手前、遠回りになるのを承知でそちら方面へ足を向けた。
いい眺めってなんのことだろう、という私の謎はものの5分も歩かないうちにきれいに解けた。
春のやわらかな夕暮れの下にひろがる一面の菜の花畑。
黄昏れて行く茜色の空と白い月をのせた濃紺の空の下、黄色い菜の花の海が風を受けて静かに揺れている。
近くにこんな素敵な場所が有るなんて知らなかった。
次の日。
私は彼にお礼を言うべく‥‥また会えるかな、という期待もあったし‥‥きのうの場所へ向かった。
でも既に違う露店商がそこを陣取り、あの変わった店は影も形もなくなっていた。
たった一回会っただけなのに、心にぽかんと穴が開いたみたい。
‥‥‥週末の蚤の市のにぎわいが空しい。
虚ろな心を慰めるべく、教えてもらった菜の花畑へ足を向ける。
ぼんやり佇んでいるうちに、昨日と同じ時刻を迎える。
こんな幻想的な光景を見ているとだんだん時間なんて気にならなくなる。
ただでさえ、春の宵は現実感があまりない。
‥‥巨鳥がそこへ音もなくふわりと舞い降りて来ても違和感がないほどに。
あの鳥だ!
‥‥人が乗ってる?
マントに身を包んだ宇宙人の長い髪は菜の花と同じ色。
広い広い黄色の海を、ゆっくりとその巨鳥を操りながらまるで散策するかのように低空飛行を続ける。
何をしているのか分りかねたけど、2度、3度と優雅に飛び回るとすうっとまたもとのように空に帰って行った。
はっとした。
きのうの彼に瓜二つではないか。
でも、そんなことってあるだろうか。
‥‥ちらりと見えた傷入りの額当てとマントの一風変わった模様。
‥‥意味する所は抜け忍、それもとびきり危険な。
あれが、あの軽そうなストリートボーイ?
内なる警告が聞こえたけれど、その姿が目に焼き付いて離れない。
かくして、私は連日そこへ張り込むはめに。
春雨のしとしと降る日も、春一番並のすごい風が吹き荒れる夜も。
宇宙人はたびたびそこへ現れては、まるで花を愛でるように低空飛行を繰り返しては去って行った。
‥‥私はすっかりこの光景の虜になってしまった。
いや、率直に言えば、彼に。
つぎの金曜日の夕方。
ひょっとして今日こそは、と淡い期待を胸に歩行者天国へ向かったけれど、やはり彼はいない。
がっかりして人ごみの中を歩き出す。
「ちゃん♪」
ぎょっとしてうつむいていた顔を上げると、そこには革ジャンボーイ!
「ハ〜イ、元気だった?
誰か探してるの?
それってさ、ひょっとしなくてもオイラじゃないのかな〜?」
くっ、ハイ、そうです、なんていえるわけないでしょ!
‥‥‥ちょっと、待って。
確か「ちゃん」って‥‥
「なんで、アナタが私の名前しってるわけ?」
「ふふん、ほら、いいもの落としてったからさ」
彼が手にしているのは私の身分証明!
「か、返してっ」
「ご挨拶だなあ、ひったくったわけじゃないぜ、うん。
拾ったげたんだから、お礼の一つも言って頂きたいもんだねえ」
お礼で思い出した、そうだ、お礼言いたくて探してたんだわ、もとをたどれば‥‥
「あ、あ、ありがとう、その‥‥」
「デイダラ、さ」
「あ、ああ、そうなの、えっと、デイダラさん、菜の花畑も、身分証明書も」
「菜の花畑?
ふ〜ん、やっぱ、あっち方向じゃないんだ、ちゃんち」
意地悪くニヤニヤするデイダラ。
分ってたくせに!
「ま、いいや、意地悪してちゃ嫌われるもんな、うん。
それよりさ〜ちゃん、お礼に明日ご飯ごちそうしてよ。
きっと明日は寒いから鍋がいいな、一人で食べたって詰まんないからね、鍋はさ」
え‥‥鍋、ですか。
「え、えへん、悪いけどよく知らない男性家に連れ込むほど‥‥」
「心配しないでいいよ、こう見えても紳士なんだから襲ったりしないからさ、うん」
「自分で言われたって‥‥」
身分証明書をちらつかせるデイダラ。
「返してほしいよねえ?」
「当たり前じゃない!」
「はい、契約成立。
じゃあ明日のこの時間にここでね」
あっと言う間に姿を消しちゃったデイダラ。
「あ、コラ〜ッ、身分証明書かえせ〜っ!」
‥‥‥来ない、来ない、来ないじゃないのよ〜っ!
私は約束の蚤の市の指定場所で寒さに凍えながら足踏みを始めていた。
嘘つき男め、もう約束の時間から1時間よ、暮れて来たじゃない!
おまけに今日はまさに『鍋日和』っつ〜か、寒いのよ!
もう待てないわ!
たったか、たったか、鍋の材料を入れたスーパーの袋をぶら下げて、プンプンしながら歩いて行く。
‥‥すっぽかされたのかな‥‥だんだん悲しくなる。
いや、そんなことないわ、だって、落とし物拾ってくれたじゃない‥‥
返してくれてないけど。
秘密の菜の花畑、教えてくれたし‥‥私なら誰にも教えないかもしれない‥‥大事な人以外には。
大事な人?‥‥ぶんぶん、と首を振る。
騙されちゃだめよ、たかが2回会っただけじゃない!
あんな軽そうな男!
気がつくと、お決まりのコースに来てしまっていた。
悲しい気持ちで眺めるけれど、相変わらずきれいな菜の花畑。
大きくため息をひとつ。
この光景を見てると心が癒されるような気がする。
今日は曇り空、吹き付ける風もまるで冬に逆転したかのような冷たさ。
花冷えって奴ね、ううっ、雪でも降りそうよ‥‥って、降って来たよ!
ひらり、ひらり。
雪って不思議と心が落ち着く。
泣いちゃった方が空も気が楽になるのかな。
「バアッ」
「ぎゃあああああっ」
いきなり後ろを取られた私はビックリして、買い物袋を取り落とした。
「デイダラねっ!び、び、び、びっくりするじゃないのよっ!」
「ハハハ、ごめん、ごめん!
ちゃんはまるで背中が無防備で面白くってさ、ついおどかしたくなっちまったんだ、うん」
おっこちた荷物を拾い集めながら思わずキツい口調で文句を言う。
「デイダラってば一体どこから降って湧いて来たのよっ!」
驚きとちょっぴりの腹立ちで思わず呼び捨てで連呼。
すぐそれに気がついてニヤニヤするデイダラ。
「へへへ、オイラのこと呼び捨てにしてくれんのかい、いいね〜、親しげでさ。
オイラもそうしよっと、いいだろ、」
いいも悪いもしてるじゃない!
「ねえっ、一体いつ来たのよ?」
「え〜、いつも通りのアレで来たにきまってるだろ、うん」
彼が見る先には‥‥例の巨大ウッドストック!
じゃあ、じゃあ、やっぱりあれはデイダラだったんだ!
改めてしげしげと彼を見る。
マントをまとった一風厳然とした雰囲気のデイダラと、今みたいに目立つもののごく一般的な青年の姿をした彼と。
重なるような、重ならないような。
見つめてたら照れるのかと思ったらその逆。
「いやあ、そんな風にじろじろみられると嬉しいねえ。
オイラって罪なイケメンだからさ〜」
‥‥超自信過剰、でもそれが嫌みになってないとこがまた、何とも言えないわ‥‥
「ここで遊泳してるときもさ、が瞠目してくれちゃっててなかなか立ち去りがたかったぜ」
なんて野郎だ、なら一言声でもかけてくれりゃいいものを。
私は、一体全体こっちのデイダラがあっちのデイダラなのか、やきもきしてたってのに!
「だってさ、あの格好、だってどういう意味なのかぐらい知ってんだろ、うん?
万が一ヤバイ奴に仲よくお話してるとこ見られたらどうすんだよ、巻き添え喰らうかもしれねえだろ。
オイラだってそれぐらい考えてるぜ」
‥‥そうなんだ‥‥
「ところで‥‥待ち合わせ場所はここじゃなかったでしょ?」
「ああ、そうだったっけ?
ま、いいじゃない、会えたんだから」
「よくないっ、このクソ寒い中、デイダラを1時間以上待ってたんだから!」
「ハハハ、そりゃ悪かったね、じゃあお詫びに家までおおくりしましょう、お姫様」
ぐいっと腕を引っ張られて、ひゃっ、と思ったらもう私たちは鳥上の人。
雪降る菜の花畑の上をふわりと浮き上がる。
「‥‥静かなんだ‥‥、もっと風切って飛んでるのかと思った‥‥」
「まあ、その時次第でいろんな飛び方できるからさ。
今日は2人乗りだから、ちょっとおしとやかにいってるんだよ。
さしずめフクロウ飛びってかんじかな、うん」
まさにフクロウのように音もなく、そのくせ相当なスピードを出して鳥は飛ぶ。
‥‥ふわりと何か暖かいものが肩にかかった。
デイダラの革ジャンだ。
「当たり前だけど高いとこ飛ぶの初めてだろ」
‥‥やだな、こんな風に優しくされると心が揺らぐよ。
「で、どっちの方角?」
「え、何が?」
「何がって、どこ行くんだよ、んちに決まってんだろ」
「あ、ああ、私の家ね、え〜と‥‥」
今日みたいに暗いと‥‥正直よく分らない‥‥
「な〜んだ、自分ちの方角もわかんないの?」
あきれたデイダラの声。
「ま、いいや、知ってるからいくぜ、うん」
ちょっと、わかってるんじゃない!?
「ははは、最初っから言うと警戒されちゃうだろ、ストーカーかってさ」
‥‥図星。
「寒かったでしょ、ごめんね、さ、入って」
私に上着をかしちゃったから、ちょっと凍えてるみたいなデイダラを家に招き入れる。
「平気平気、オイラは乗り馴れてるからね。
それに今からのおいしい手料理が食べられるんだしねェ、うん」
‥‥ううう、そんなに料理得意じゃないんだけど‥‥
あ、しまった!
鍋がない!
一人暮らしで、料理もさして好きじゃない人間だからそんな気の利いたものないのよね‥‥
デイダラが来るからって、緊張してて、肝心のもの買うの忘れちゃったよ‥‥
ええい、しょうがない、コンロに普通の鍋をかけて台所で作るしかない。
「え〜、ちゃ〜ん、こういうのってさあ、コタツでくつろぎながらやるもんじゃないのかなあ、うん」
好き放題言う彼にどんどん地が出てくる私。
「仕方ないでしょ、ないんだもん、ポータブルコンロも土鍋も!
押し掛け客はごちゃごちゃ言わないの!」
適当に切った野菜をインスタントだし汁に放り込み、鶏肉やお豆腐なんかを入れて、取りあえずの鍋ができあがり。
あんまりムードないけど仕方ないわ。
鍋をご所望だったんだから、鍋には変わりないでしょ‥‥
かくして、デイダラの前にも自分の前にもまんま、小鍋、柄付きのヤツ、が鎮座。
「‥‥ずいぶん、ムードのある鍋だなあ、うん」
こたつの机に顔だけのっけたカタツムリ状態のデイダラが上目遣いにいやみを言う。
「だって、一人暮らしだからさ、土鍋なんてないもん!
大きい鍋だってないから、これで作るしかなかったのよ。
文句言わないでお食べなさいよ、デイダラの言う通りに「鍋」やったんだから!」
「は〜い、おっかないなあ、は〜。
ハイ、約束の品、ちゃんと返したぜ」
身分証明書が差し出されてほっとする。
約束守ってくれたし‥‥この人ってやっぱ、いい人なんじゃ‥‥
‥‥‥などと思ったのもつかの間、ぱっと開かれた手には、く、口!
「ぎゃあああああっ」
「ははは、ビックリした?」
「な、な、なんなのよっ、手に口って‥‥!!」
ホラー漫画で頭に口が開くのはよく見るけど。
「そう言わないでよ、オイラ自慢の第2、第3の口なんだからさ。
コイツがあるお陰でオイラは活躍できるんだぜ、うん」
「そ、そうなの‥‥」
「そ、こいつに特性粘土くわせて芸術作品を作り上げんのさ」
しかし不気味だ‥‥。
「そう?もともとついてりゃ別に怖くも何ともないぜ?
歯もないからかむわけじゃなし、オイラの芸術を作る大事な助手さ、うん」
「ふ〜ん‥‥本当に、噛まない?」
「ためしてみろよ?」
「ええっ‥‥」
じろじろ観察した所確かに歯はないわね。
好奇心がうずき出す。
「じゃあ、‥‥ちょっと見せてよ」
「ど〜ぞ、ど〜ぞ」
おそるおそる、てのひらにある閉じた口をつっつく。
何?
「!‥‥ちょっと、アカンベしたわよっ、コイツ!」
「ははは、嫌われたんじゃないの、うん」
生意気な!
「では、いただきま〜す」
きれいな顔でニコニコしちゃって、小憎らしい。
お腹よっぽど減ってたのか、黙々と食べるデイダラ。
珍客とはいえ、やはり男性が自分の料理を食べているのを見るとその反応が気になるというもの。
自分も箸をつけつつ、もうちょっと味濃くしときゃ良かったかな、とか軽く後悔。
実はあんまり本格的にやるのもしゃくだったのよね‥‥いかにも、でさ‥‥
「‥‥ああ、おいしかった、ごちそうさま、ちゃん」
それなのにきれいに平らげてくれたデイダラ。
「よかった‥‥おいしくないって言われるかとヒヤヒヤした‥‥」
最後まで言わせずにデイダラが急に身をのりだして聞く。
「へえ〜っ、、オイラの反応気にしてくれたんだ〜」
「な、なによ、そりゃ気になるわよ、いくら押し掛け客とはいえ、お客さんだもん」
「心配しないでよ、オイラ味覚音痴だからたいていのものは平気なんだ、うん」
‥‥‥それって喜べないわよ‥‥‥
「あの場所さ、も気に入っただろ」
突然デイダラが言う。
「ま、まあね」
「わかるなあ、オイラにもお気に入りなんだ、うん。
満月の日には『菜の花や、月は東に日は西に』を地でいく美しさだもんな、うん」
あ、あら、意外にも詩人な発言‥‥
デイダラって‥‥顔の前で組んだきれいな長い指といい、さらさらの髪といい、端正な顔といい‥‥
黙ってりゃ実に様になるわ‥‥。
‥‥そのくせ、「オイラ」か‥‥手にはへんな口つきだし‥‥。
「バアッ」
「きゃあ〜っ」
びっくりして、食器を落としそうになる。
「もうっ、手も入れてインパクト大のあっかんべえ三重奏はやめてよっ!
「ははは、さっきから目の前にいるのに何びっくりしてんだよ、うん。
さ、じゃオイラはごちそうになったし、もう行くよ」
「え、あ、ああ、そう」
なんか、残念‥‥
下から顔を覗き込まれる。
「そ〜んなに残念がらなくってもいいよ、、また来るからさ、うん!
急いては事を仕損じるってね、あ、これは聞かなかった事でいいよ」
な、何よ?
「そうそう、次はデザートつけてね、オイラ甘いものに目がないから」
厚かましい‥‥
外へ出るとさっきまでの曇天はどこへやら、満天の星。
「うわあ、すごい、きれい!」
「やっぱり寒いはずだよ、うん」
デイダラが軽く手で合図すると例のUFOならぬ妙な鳥が音もなく舞い降りて来た。
「やっぱり、それにしても思い切り変わった鳥ね‥‥」
「えへん、オイラ自慢の芸術作品さ」
「え、やっぱりデイが作ったの?こんなでかいものを?」
あ、うっかり短くしちゃった。
だって長ったらしくて言いにくいんだもの、デイダラ、ってさ‥‥
しっかりそれに気がついてニヤニヤするデイダラ、もといデイ。
「どんどん親密度が増すねえ、いい感じだ〜、うん。
それじゃこっちもグレードアップさせるか、またね、」
素早くかがみ込んでほっぺたにチュッ。
「ちょっ‥‥‥!」
頬がそこだけやけどしたみたい。
「甘いものに目がないって言っただろ、うん」
抗議する間もなく、彼は鳥とともに夜の闇に消え去ってしまった‥‥ちょっと意味深な言葉を残して。
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