森の中で散歩

待ち合わせ場所まで息を切らせて急ぐ。
はやる心を抑えようとすればするほどあまのじゃくな動悸は早くなる。

森の木々は色づくのが早い。
私がこの季節の森の中を歩くのが大好きなことを知っていて、カンクロウから声をかけてくれた。

「たまの休みなのに、いいの、かな‥‥?」
嬉しいけれど、そんなことに時間を割かせていいのかどうか、自信がなくてつい聞いてしまって後悔する。
「なんだよ、 は行きたくないのかよ。
喜ぶと思ったのに」
むっとした顔で聞き返される。
ドジった、素直に喜べばよかったんだ。
彼は裏表のないひとだから、いやなら自分から言い出したりしないことは百も承知だったのに。
「ち、違うって、嬉しいんだけど、カンクロウも上忍になって初めての休みだし‥‥いいのかなあって‥‥」
「いいから誘ってんじゃん、全く。
んじゃ、いつもみたいに遅れるなよ、
言葉を最後まで言わせずに、私の頭を軽くたたくと彼はかき消すように立ち去った。

「‥‥お・そ・い!」
約束の場所にしゃがみ込み、上目遣いに開口一番憎まれ口をたたくカンクロウ。
ぶっきらぼうだけど、その瞳を見れば怒ってなんかいないのがよくわかる。
「ごめ〜ん、だって、足場悪いんだもん」
ぜいぜい息を切らしてる私。
「なら、早くに出りゃいいだろ、まったく、 はいつもこうだからな」
ゆっくり立ち上がって、ぽんぽん、とズボンについた落ち葉やほこりを払う。
わざと時間をとってくれてるのがわかる。
言葉は優しくないけど、思いやりが伝わって来て心が温かくなる。

なんか、普段着の彼を見るのはずいぶん久しぶりな気がするなあ。
普通のパーカ着てるだけなんだけど、カンクロウって、こんなに男っぽかったっけ?
‥‥思う以上にがっしりした首筋がみえるせいかな。
知り合った頃は‥‥‥

「なんだよ、 、黙り込んじまって?
‥‥怒ったのか?」
ぶんぶん、と首を横に振る。
秋の木漏れ日がカンクロウに降り注ぐ。
「んじゃ、行くじゃん」
差し出される大きな手。
私に向けられる優しい緑の瞳。
今日は、カンクロウを独り占めしていいんだ。
手を握り返して、一緒にやわらかい地面に足を踏み出す。
歩いた数だけ、彼と同じ時間を積み重ねて行ける嬉しさで胸をいっぱいにしながら。

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蛇足的後書:弊サイト一万ヒット記念SSです、お持ち帰りはイラストなしバージョンでお願いします
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カンクロウへの愛しかないシロモノですが、お気に召しましたら幸いです。
そして、創作のヒントを下さったちきんさんに感謝!