『彼岸花』
「ガーラ様は熱心ですね」
声をかけたのは図書館の司書、。
「‥‥まあ、な。」
資料を調べながらどうともとれるあいまいな返事を返すのは我愛羅。
何も変わらない、挨拶と同じようないつも通りのやりとり。
静かな室内にゆっくりとした時間が流れてゆく。
砂の国の風影ともなれば、ありとあらゆる部門に精通していることが求められる。
隣国は常に友好的とは限らないし、虎視眈々と侵略の機会を狙っているゲリラのような輩も無視できない。
そして何より、内部の不満分子が我愛羅の揚げ足取りにやっきになっていた。
その状況下でも、彼の最終目的は揺るがない。
誰よりも強く、誰よりも聡く、そして、皆から必要とされる存在、つまり真の風影になること。
そのための修行、任務、そしてまた修行。
知識を、もっとより深い情報を。
睡眠時間があまり必要ないことがこんなところで役に立つとは思っていなかった。
@と知り合ったのは、頻繁に書庫へ通い始めてから。
今まで彼女の存在も知らなかった。
普通こういう場所へは怪我をしたり、体をこわしたりして通常の任務にはつけなくなった忍者が回されることが多いものだが、彼女は忍びではないらしかった。
所作を見れば、そんなことは一目瞭然。
誰かが書庫に来ても自分が一生懸命仕事をしていればまるで気がつかないし、我愛羅のことだって里長であるということ以外、はたしてどこまで知っているのかはなはだ怪しかった。
‥‥知っていれば、こんなに気安く声をかけて来たりはしないはず。
それでも司書としては非常に有能で、我愛羅が求める資料をいつも的確に探し出す手伝いをしてくれていた。
彼の要求は多岐にわたり、年代もさかのぼることが多かったので、これには我愛羅も一目置いていた。
また、相手が明らかに忍びではないということが、風影になった今、こんなにも気楽なものか、と我愛羅は感じていた。
彼の背負う砂隠れの影の部分をはおそらく知らない。
バサバサッ
またが資料を落としてしまったらしい。
案外そそっかしい彼女はほとんど毎日同じことをやっている。
散らばった書類や本をが片付けるのを、我愛羅が黙って手伝うのも日課になりつつあった。
「いつもすいません、ガーラ様」
が照れたような、済まなさそうな、そのくせちょっぴり嬉しそうな笑みを浮かべて我愛羅を見る。
‥‥我愛羅はこの笑顔が好きだった。
拒むことを知らない、何人をも暖かく迎え入れるような微笑みが。
そして、彼女が自分の名前を呼ぶ感じも、意味を知らない故のぎこちない響きがおかしくて微笑ましかった。
「‥‥ガーラ様、か」
「え、そういうお名前ですよね。ちがったかしら」
「そうじゃない。はガーラがどういう意味なのか知らないんだろう」
「はあ、ちょっとかわったお名前だなとは、思ってましたけれど‥‥
どういう字を書くんですか」
正直に言うべきかどうか、我愛羅はちょっと迷ったけれど、どうせいずれはわかることだとあきらめ半分で告げた。
「‥‥我のみを愛する修羅、と書く」
「我のみを、愛する、修羅、ですか‥‥」
「ああ‥‥」
ちょっとびっくりした顔のの反応に、ちりっと胸がいたむのを感じながら、でももうそんなことは慣れっこだと自分にいいきかせ、我愛羅は自分の資料を受け取ってその場を離れた。
「すいません、我愛羅様、もう閉めなければ‥‥」
すでに私服に着替えたが我愛羅に声をかけたのは閉館時間を1時間以上も上回った頃だった。
予想外に調べものに時間を食った我愛羅は声をかけられるまで、そんなことにも気がつかなかった。
「‥‥すまない、とっくに閉館時間は過ぎていたんだな‥‥」
「大丈夫ですよ、我愛羅様。
私もいろいろ仕事があったし、本当ならもっと時間を差し上げたかったんですが、これ以上長引くと上の方からうるさいことを言われますので」
どうやらぎりぎりまで時間オーバーを承知で待っていてくれたらしい。
長老達の中には我愛羅を快く思っていないものもいて、なにかというと尾獣つきが、という目で見てくる。
きっとそういう手合いのことをさしているのだろう。
まったく、いつになったらこの無益な闘いから解放されるのだろうか。
「すまんな、にまでいやな思いをさせてしまったようだな。
つぎからは気をつけよう」
ため息をつきながら言うと、はあら、という顔で我愛羅を見て、
「違うんですよ、我愛羅様のせいじゃなくて、あの人達見てると悲しくなるんです。
同じ年を取るなら、素直に若い人の活躍を喜んであげられる人になりたいわ。
あんなひがみっぽいおじいさんばっかり見てると、年なんか取りたくないなって気がめいっちゃいますよ」
今度は我愛羅がを、え、という顔で見る番だった。
「、おまえ何歳だ」
「いやだ、風影様、女の人に年齢なんか聞いたら嫌われますよ」
顔を赤らめ、睨むような顔で我愛羅を見る。
「‥‥俺とそうかわらないだろう」
気にせず続ける我愛羅。
特に私服姿で今みたいにスカートに赤いカーディガンなんかはおっていると、絶対年下にしか見えない。
「風影様は落ち着いてらっしゃるからそうは見えないけど、まだ10代でしょう、私はそこからもうとっくに遠ざかってますから」
ちょっとすねたようにが言う。
「‥‥俺はもう19だぞ、それもじき終わる」
「でも10代ですっ」
だから何なんだ、とひそかに我愛羅は思う。
子供時代等ないに等しかった我愛羅にしてみれば、自分が10代だといわれてもピンとこない。
自分よりはるかに年上のはずの上忍達にも、技はともかく、精神年齢から言えば子供同然のものなどごろごろいるのが実情だ。
風影ともなれば接する人の数は中途半端なものではない。
二言三言言葉を交わしたり、相手の行動をみるだけでも、おのずとその人物のひととなりをおおかた把握できてしまう。
その我愛羅からすれば、などまだまだ子供、自分よりずっと下のような気がしていたのだ。
「20代だろうと、30代だろうと、40代だろうと、いくつになってもガキみたいな人間はゴロゴロしてるものだ」
「あら、じゃあ、私は?」
「まあ、も俺から見れば大人とは言い難い」
ム、という顔つきの。
ほら、そんな顔をするのが可笑しいからわざとからかったんだ、と内心笑う我愛羅。
風影の執務室のある棟への道のりと、彼女の帰路は途中まで重なる。
こんな風に彼女とたわいもない話をしながら歩くのは悪くないな、と、の別れの挨拶を聞きながら我愛羅は思うのだった。
こんな日もあった。
我愛羅は全く執務室から離れることが出来ず、書庫から書類を直接持って来てくれるように依頼を飛ばした。
ノックの音。
「入れ」
「失礼します‥‥」
聞き覚えのある声と共にドアがゆっくり開いて、入って来たのは‥‥資料の山と下からのぞくふらついた足。
背があまり高くないは書類の山に埋もれてしまって頭も見えない。
我愛羅はまさか、これだけの量の書類を一人で持ってくるとは思ってなかったので慌てて書籍類をおろすのを手伝う。
「なんで、が一人で持って来たりしたんだ、誰か男手はなかったのか」
「‥‥みんな出払ってしまっていて‥‥」
ちょっと言いよどんだ彼女の口ぶりから、ああ、今日の当番は俺のことが苦手な奴なんだな、と我愛羅にはわかった。
「すまなかったな、重いものを」
「いいんです‥‥私は‥‥我愛羅様とお会いできるのが嬉しいですから」
自分のことを嫌ってはいないことは分かっていたが、彼女のあまりにストレートなものいいに、少し恥ずかしくなった。
「は、やっぱり子供だな」
「もう、どうしてそうなるんですか」
「どうもこうも、お前は正直すぎる」
「‥‥いいんです、忍びじゃないし」
「まあそうだな、忍びなら、万年アカデミーか」
「もう〜、いくら私でもそれがどういう意味かぐらい、分かってますよ!」
ぷんぷん怒る。
我愛羅にはそれが面白くてしょうがない。
自分の周りではこんなにストレートに感情を表すもの等いないから。
「悪い、悪い、せっかく重いものを持って来てくれたお礼がこれじゃあな。
‥‥そうだ、気分転換も兼ねて温室へ顔を見せに行こうと思ってたところだ。
お前も来るか」
「え、いいんですか」
の顔がぱっと明るくなる。
どうも資料室以外あまり出歩いていない様子だ。
「構わん。
どうせ、あそこもたまには覗いて様子をみないとだめだからな。
では、行くぞ」
「は、はい」
我愛羅の後ろをあたふたと着いてくる。
この数年で背がぐっと伸びた我愛羅に比べ、小柄なは歩幅が合わないのだ。
それに我愛羅はせかせか移動するのがくせになっている。
彼女は資料室でゆっくり歩くのが当たり前だ。
に会わせてペースを落とす。
「‥‥我愛羅様はやっぱり優しいですね‥‥意地悪だけど」
「なんだ、それは」
「ふふふ、何でもないです」
「‥‥フン」
彼女の意味するところ等分かりきっているが、照れくさいのでしらんぷりする我愛羅。
にこにこしながらその横を歩く。
じきに温室に着く。
「好きに見てていいぞ、俺はちょっと向こうを覗いてくる」
言い残して、我愛羅は奥に消えた。
10分ほどして戻ってくると、はなにやら赤い花を眺めている。
「‥‥その花が気に入ったのか」
「ええ‥‥懐かしい花なんです。この里にはあまりないけれど‥」
「彼岸花か。お前のお気に入りのカーディガンと同じ色だな」
「あら、わかりました?
そうなんです、実はこの花が好きだから、あの服もお気に入りなんです」
「‥‥しかし、一体どこでこの花を見たんだ。
お前の出身はこの里ではないのか」
「‥‥まあ、そうです‥‥」
言いよどむ。
我愛羅は彼女はこのことには触れられたくないのだろうと感じ、ひとまずこの話は切り上げた。
‥‥本当はもっと、のことが知りたかったのだが。
なんだかが寂しそうに見えた我愛羅は、ささっと周辺の気配をさぐり誰もいないのを確認すると、花がたくさんの鉢に分けて植えられているのをいいことに、素早く一鉢に渡した。
「え、え、我愛羅様、こんなことして、いいんですか?」
「どうせたいして用途のない花だ、一鉢ぐらいかまわん、急いで逃げるぞ」
「は、はいっ」
足早に温室をあとにする。
クスクス笑う。
「我愛羅様って案外、おちゃめなんですね‥‥ふふふふっ」
が嬉しそうに笑うのを見て、ほっとする我愛羅。
「内緒だぞ!!」
「はい、誰にもいいません!」
「よし、じゃあ俺は執務に戻る」
「ありがとうございました、大事にします」
の声を背に聞きながら、なんだか心が弾むのを自分でも不思議に思う我愛羅だった。
ある時は資料室で。
またある時には執務室へ向かう道すがら。
長く顔を会わせる日もあればすれ違うだけの日もあったが、こんなふうなささいなエピソードを積み重ね、確実に2人の距離は縮まって行った。
そうこうするうち、我愛羅は彼女が実は結婚していたことがある、との情報を耳に入れた。
‥‥フン、おれより年上だといっていたし、とむりやり自分を納得させようとする。
現在は独り住まいらしいので、離婚、あるいは別居しているのだろう。
ほっとすると同時に、なぜそんなことに心が乱されるのだ、と急に不快になったり。
我愛羅は馴染みのない感情にとまどいながらも、に惹かれていることは否定できない。
ある夕方。
このあいだと同じように二人いっしょに外へ出る。
秋が深まりつつあるせいか、もうかなり暗い。
「‥‥不用心だな、送って行こう」
「あらそんな、‥‥‥嬉しいけれど大丈夫ですよ、我愛羅様はお忙しいんだから。
こう見えても‥‥一児の母なんですから、そんな若いお嬢さんみたいなことしてもらっちゃバチがあたります」
我愛羅は耳を疑った。
に子供がいる?
そんな情報はなかったぞ。
だが、このあいだ、二人でたまたま歩いていて、子供達が遊んでいるのを見たがなんだか懐かしそうな、ひどく切ないような顔をしていたのを思い出す。
「‥‥そうは見えないが‥‥」
我愛羅は、どう反応していいか分からないままとっさにそう言った。。
「まあ、頼りなく見える、とはよく言われますから、そう見えなくても仕方ないですが‥‥」
我愛羅は自分の口べたをのろった。
「‥‥そうじゃない。そんな年には見えない、といったつもりだったんだ」
が、クスッと笑って我愛羅の方を見る。
「優しいんですね、我愛羅様。
大丈夫です、‥‥そう見えなくても仕方ないです。
子供とは本当はずいぶん長い間、会ってないんです」
「‥‥どういうことだ?」
「‥‥私だけ、人質として、この砂隠れに来たから‥‥」
人質。
同盟国が裏切らないと言う証明に重要人物の妻や子供を差し出す。
非常に古くさく非人道的なやり方ではあったが、残念ながら裏切りが日常化してるこの状況ではこの悪習も廃れる様子はなかった。
しかし、この屈託ないが、まさかそんな十字架を背負っているとは思わなかった。
「‥‥いつから、ここへ?」
事実を確認すべく我愛羅がに尋ねる。
「‥‥もう、4年になります」
4年前と言えば、自分がさらわれて里が大混乱に陥った頃のことだ。
その混乱に乗じて周囲の国から相次いで攻撃を受け、国境警備は熾烈な戦闘を繰り返したと聞く。
「その間、一度も‥‥帰っていないのか」
「‥‥はい」
だが、もうじき帰れるはずだな、と我愛羅は考えた。
通常人質は一定期間以上留め置かれることはなく、1〜2年で次の者と交代する。
人質だったはずが、滞在地に必要以上に愛着を覚えてしまい、逆効果になるケースもあるからだ。
だからの4年という期間は異常だった。
ましてや、彼女のように、仕事を与えられる等というケースは非常にまれだ。
普通はほぼ幽閉に近い状態ですごさなければならないはず。
このという女は何者なのか。
もっとよく調べてみる必要があるな、とショックを覚えながらも冷静に風影としての頭で我愛羅が考えた瞬間、が口を開いた。
「‥‥もともと、私はここの出身者ですから‥‥だからこれだけ長期間、ここにいることが許されたんです。
本当はずっとここにいたいぐらい‥‥」
言ってしまってから、彼女はしまったという顔をした。
子供のことを思ったのだ、と、我愛羅にはすぐわかった。
自分のことだけを考えてしまった我が身の勝手さを後悔したに違いない。
気がつけば、彼女の家の前まできてしまっていた。
「じゃあ」
といって、立ち去ろうとする我愛羅に、は、思い切った風に
「あの‥‥よかったら、その、お茶でも如何ですか‥‥」
と、提案した。
我愛羅はだれかにこんな風に家に招待されたこと等なかったから、正直面食らったが、それがからのものであったのがやはり嬉しかった。
「‥‥いいのか」
「もちろんです、小さいし、むさ苦しいところですが、どうぞ!」
ぱっと明るい顔になり、我愛羅を迎え入れる。
人質であるといっても、仕事もまかされるほど自由を与えられているだけあって、小さいながらも一戸建てだ。
といっても、本当にこじんまりしたもので、ワンルームマンションの一戸建てバージョン、といったおもむきだ。
「どうぞ、そこにお掛けになって下さい」
勧められるままに居間のちいさなちゃぶ台の前に敷かれた座布団にあぐらをかく。
「すぐお茶を入れますから」
「‥‥」
物珍しさも手伝って、我愛羅はちらちらと部屋の様子を伺う。
ものごごろついて以来、風影の館で暮らして来た彼に取っては、こんなごく一般的な住まいの方がずっと珍しい。
窓にはかわいらしいカーテンがかかり、こまごました飾り物がおいてある。
机には何冊かの本がきちんと本立てに並べられている。
台所というほどの設備でもないが、同じ部屋の片隅にある流しのところでごそごそやっているの後ろ姿をながめていると、なんだか、懐かしいような不思議な感じがした。
じきにがお茶とお菓子を持ってきてちゃぶ台におく。
「そんなにいいお茶じゃないですが、どうぞ」
「‥‥どうも‥‥」
慣れていない我愛羅はどう受け答えしたものか分からない。
とりあえず、無難な言葉を選んで言ってみるが、どうやらにはすぐそれがわかってしまったようだ。
にこにこと微笑まれて居心地が悪い。
「‥‥変なこと言ったか‥‥」
「いいえ、とんでもない!
なんだか、えらい風影様がこんなところにお座りになってるのが‥‥かわいらしかったもので、つい‥‥
ごめんなさい」
あわてて打ち消す。
内心ほっとしながらも、どうも分が悪い、「かわいい」か、子供扱いされてるようだな俺は、と思う我愛羅。
えへん、と咳払いしてお茶を口にする。
少し苦めだが、我愛羅は濃いめの方が好みなので何も言わない。
が、が続いて口にして顔をしかめる。
「いやだ、ものすごく苦い!
////すいません、取り替えます」
「その必要はない、俺はこれぐらい苦い方がいい」
「ええ〜っ、でも、これ、尋常じゃない苦みなような気がします‥‥
すいません‥‥お客様なんて、ここへ来て以来もてなしてないものだから‥‥
緊張してお茶の葉をいれすぎたみたい‥‥」
なんだ、慣れないのは俺だけじゃないのか、とおかしくなる。
もおかしくなったのか、くすくす笑う。
「あ、これ、おいしいんですよ、いかがですか」
と、お菓子を勧める。
我愛羅はう〜ん、という顔をして、
「悪いが、甘いものは苦手なんだ」
と言う。
「え、そうなんですか。
すいません、私の知っている男の人はみんな甘いものが好きだったから‥‥」
誰のことだろう、と気になるのが、自分でも気に入らない我愛羅。
つい、眉間にしわがより、が申し訳なさそうな顔をする。
ここは話題を変えなければ、と乏しい経験を総動員して我愛羅が判断する。
「‥‥」
言葉が見つからない。
とっさに部屋を見回した我愛羅の目の端にこの間の赤い色が飛び込んで来た。
「‥‥あの、花か。」
「え‥‥ええ、大事にしてます。
‥‥実はあの花は、‥‥私が住んでいた里に群生している花なのです‥‥
ちょうど、子供が生まれた時もあの花のシーズン真っ盛りで、窓からも赤い色が刈り入れをひかえた稲の黄金色と対照をなして見え、それは鮮やかでした‥‥。」
は遠くを見るような目になった。
黙って話に耳を傾ける我愛羅。
少しでも彼女のことが知りたい‥‥彼女の口から話される言葉で。
砂と交流がある、というか、つかず離れずでどちらかというと仲があまり良くなく(人質が必要なくらいだ)、稲を主作物にしているところ、といえば容易に判断はついたが。
風光明媚で地味豊かな土地だが、我愛羅の知る限り、権力を握っている輩はかなりずる賢い男だったはず。
そこに彼女がなぜたどり着いたのか。
‥‥子供の父親は、誰なのか、どうしているのか。
思わず質問を投げかけようとした時、ガラスが風でがたがたっと大きな音をたてた。
はっと我に返ったは、時計を見て慌てた。
「大変!もうこんな時間!
すいません、我愛羅様、こんなに長く引き止めてしまって!」
こうなっては、悠長に話を聞くチャンスもない。
渋々我愛羅はいごこちのいいの城を後にした。
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