約束
「おっかえり〜、
ちゃ〜ん」
ギョッ。
嘘でしょ、あれだけ、あれだけ絶対来るって約束した日にはまったく姿を見せなかったじゃない!
「ディ?‥‥ただいま‥‥」
「な〜んだよ、元気ないなあ。
せっかく超多忙な身を顧みず、
んちに寄ったってのになあ、うん」
な〜によ、勝手な事ばっかり言っちゃって!
いつもすっぽかされるのに慣れたとはいえ、こないだのはちょっとばかりこたえたわよ!!
‥‥だって、初めてのバレンタインだったから。
その傷も癒えないうちにこれだもの!
「‥‥今日はどういう風の吹き回し?」
「え〜、なんかよそよそしいじゃない、
ってばさ。
決まってるだろ、バレンタインだから約束通り帰って来たんじゃないか、うん」
ええっ?!
な、何いってるのコイツ?
バレンタインはもう3日も前よ?
あの日は日付かわってもまんじりともせず待ってたのよ、アンタを?!
泣き寝入りしたんだから!
「‥‥デイダラさん‥‥今日は何日か知ってます?」
「は?バレンタインっていったら2月の14日だよ、今も昔もさ、うん。
ったら、何とぼけてんだよ」
コイツ、素で今日がバレンタインだと思ってるらしい‥‥
ひょっとして寝てない日が続いてボケてるのかもしれない‥‥
こんなにひょうひょうとしてるけど、任務はいつだって超Sランクだし‥‥
どうしよ‥‥。
マジやばいよ。
実はあのあと、泣きながらやけ食いして、あげるべきチョコ自分で消費しちゃったのよね‥‥
ああ〜ん、おいとけばよかった!
今から買いに行くにも、遅いからコンビニぐらいしかあいてないし、コンビニは商品回転が早いからもうバレンタインの商品なんて置いてないし‥‥
「どしたのさ?やけに無口だねえ。
心配しないでも、チョコはた〜くさんもらったけど浮気はしてないよ、うん?
オイラの本命は
だけだからさ、ははは」
いや〜ん、嬉しいこと言ってくれてるんだけど、余計に重責が肩にのしかかるわ‥‥
どうしよ、今家にあるチョコレートに一番近いものと言えば‥‥
「ねえ
、別にさ、オイラ、ポリフェノール不足じゃないよ、うん。
どうしてココアなんか入れてくれたんだい?」
「え、えええっと、まあ、いいじゃない、体にいいって言うし。
今日はなんか、肌寒いし、いいかなって‥‥」
「ふ〜ん、そうかな。
オイラは今日はやけに生温い天気だなあと思ったんだけど?」
じっと私を見つめるデイダラ。
ううう、そんなに見ないでよ、嘘つくのへたなんだから。
「‥‥
、チョコ‥‥」
「きゃ〜っ、ごめんなさい、デイ!
実は食べちゃったの、だって、デイ来ないんだもん!
約束したのに、あれだけ約束したのに平気ですっぽかしたから、もう無茶苦茶腹立っちゃって、
バレンタインチョコ食べちゃったの、ごめんなさいっ!」
こたつにつっぷしてわめく私。
「‥‥ぷっ、くっ、くっ、くっ、‥‥まったく、
は面白いなあ、だから好きなんだよ、うん。
知ってるよ、今日はバレンタインなんかじゃないってことぐらいさ」
え、ええ、ええええっ?!どういうことよっ!
がばっと顔をあげるとニヤニヤ笑顔のデイ。
「いや〜、どうしても抜けられなくてさ。
今日になっちゃったからどう言い訳しようかと思ってたんだけどさ、
があんまりあっさりオイラの芝居にのってくれたから、つい面白くってさあ、うん」
こ、こんのヤロ〜ッ!
「デイの嘘つき〜!!」
「まあ、まあ、そう言わないでよ、オイラも悪かったなあと思って反省はしてるんだよ〜、うん」
「う、嘘ばっかり!もう、デイの言う事なんて、信じらんないっ!」
「そう言わないでよ、バレンタインは何も女から男へだけじゃないって知ってた?
ハイ、
へオイラからだよ」
目の前に差し出されたのは‥‥度肝を抜かれるほど大きな、それは見事な深紅のバラの花束。
言葉を失ってひたすらびっくりする私の様子をニコニコ見ているデイ。
‥‥ずる〜い、ずる〜い、ずるいよ〜っ!
私だってデイにプレゼントしたかったのに!
大奮発して限定もののチョコを、朝から並んで手に入れたのに!
嬉しいのになんか悔しいような、でもやっぱりすごく嬉しくて、でもなんか納得いかなくて‥‥
「よしよし、泣かないでよ、
。
ごめんね、
の気持ちをくんでやれなくってさ。
わかってたよ、きっとオイラのためにすごいチョコを手に入れててくれたんだろ、うん?
だから、今日はお詫びのつもりでもあったんだよ‥‥さあ、もう泣かないで‥‥」
デイダラの言葉がやさしすぎて。
そして彼を好きでいる限り、こういうことが続くってわかってるだけに切なくって。
彼の腕の中で子供みたいにわんわん泣いた。
デイは黙ってやさしく私を抱き締めたまま、なだめるように髪をなでていた。
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蛇足的後書:
バレンタインが過ぎた後でアイデアが浮かぶ困った管理人です。
なんかプツッと切れたような終わり方ですが、ちょっと切ない感じを出したかったの‥‥
一応砂至上主義サイトですので〜(^^;)。