修羅の親
腕の中の小さな我が子よ。
私はお前になんという重荷を背負わせてしまったのだろう。
無事生まれるとは正直思っていなかった。
羊水に浮かぶちっぽけなお前に、この巨大な力を封じ込んでおくことなど出来はしないとタカをくくっていたのかもしれない。
きっと、胎児はその力に耐えかねて流れてしまうだろうと。
しかし、お前は生き延びた。
子供を宿しただけの母親は耐えきれなかったというのに。
なんという生命力。
‥‥こんな憑き物などなければどれほどの前途が開けていただろうか。
あのとき、私が長期不在などしなければ、お前にこのような残酷な未来はなかった。
お前はその計り知れない力故に憎まれるだろう。
疎まれるだろう。
愛というものを知らずに生きて行かねばならないかもしれない。
我愛羅よ。
我が子よ。
母親がどう思ってこの名前を彼に残したのかは、もう誰にも分らない。
生涯孤独を友として生きて行かねばならないお前。
我のみを愛する修羅。
他人を愛さなければ、傷つく事もない。
しかし、人は誰かを愛せねば生きて行く事は出来ない。
愛しても答えてもらえない時、どうすれば良いのか。
我のみを愛せよ修羅。
私が風影でなければ、こんなことにはならなかったのだ。
‥‥‥許せとは言うまい。
私を憎んで気がすむなら、それですこしでもお前の心が救われるなら、憎めばいい。
‥‥風影として、自らお前を手にかけねばならない時が来るかもしれぬ。
そうすればお前の最後を見届けることができるのだから、かえって救われるかもしれぬ。
どこの誰ともしらぬ輩にお前の命を奪われるよりは。
私には自分の命がつきるまで、お前の行く末を見守る義務がある。
それが地獄の道であろうとも、修羅の道であろうとも、逃げはすまい。
お前が歩まねばならぬ道なのに、親の私が逃げる事は出来ない。
我を愛する修羅。
我を愛せよ修羅。
修羅にも親はあったろう。
彼の気持ちがわかるのは私だけ。
蛇足的後書き:LINKさせて頂いているFADE TO BLACK様への捧げ物です。
先代様と仔我愛羅の素敵なイラストにぐっときて書いたお話です。
なんか今頃UPして、って感じアリアリですが、先代不足のおりご勘弁下さい。
誕生月によせて。