木の葉で非常勤
第3時限目

さて。
具体的な授業が始まり、いよいよ2人目の講師だ。
一人目に対して皆善かれ悪しかれいろいろな感想を持った事であろうが、次の先生が同じであるとは思われない。
期待と不安で胸をふくらませ教室で講師を待つ。

モエギは実はちょっぴり憧れのお姉様を待つような気持ちでテマリの登場を待っていた。
「一体、何をおしえてくれるのかしらね〜」
「さっきは地理の授業のような体術の授業のような、微妙な展開だったらしいわよ〜」
何にせよそう甘くはない事は確かだ。
戸ががらっと開いて、テマリ先生登場。
「なんだ、えらくこの教室は暑いな」
確かにテマリの言う通り、風が通り抜けないこの部屋はむっとした空気がこもりかなり蒸し暑い。
「よし、皆外へ出ろ」
「え、先生、体育ですか?」
「違う、私は一応地理担当だ、さっきのクラスからも聞いただろ。
ともかくこの教室でなくても授業は出来る。
出るぞ」
「ハ、ハイ!」

いぶかりながらもえぎのクラスの一同は運動場に出た。
ふと見れば、我愛羅のクラスも外にいる。
揃って運動場で授業とは、いったい砂ではそういった講義のやり方が一般的なのだろうか。
間髪入れず、うどんが恐れ多くも我愛羅先生に質問だ。
「センセ〜、砂では外で授業するのが普通なんですか〜」
「‥‥どう思う」
返事次第では砂の餌食にもなりうる、と皆に緊張が走るも、天然うどんは全く意に介していない模様だ。
「ん〜、砂では雨があまり降らなさそうだから、学校は屋外なんじゃないんですか〜」
『あのバカ!』
うどん以外の全員が大きな音を立てて心の中で舌打ちをしたことは確実だ。
が、意外と我愛羅は表情を変えず、いや、いつも通り表情を変えずに
「‥‥ば〜か」
そのベーシックな反応に女子生徒がまたもやムズムズしたのはモチロンである。

よそ見はこれぐらいにして、テマリ組に戻る。
「ここで、地理の勉強ですか?」
もえぎが質問する。
「そうだ。体で覚えてもらう」
(出た!)
皆がさっきのクラスから得た情報を脳裏に思い描く。
が、テマリは
「棒切れを持て」
「は?」
「いいから、早く、持て!」
みんなあわてて、あちこちから棒切れを拾う。
「じゃあ、協力して10分でグラウンドいっぱいに地図を描いてもらおう。
木の葉とその周辺国だ、砂も忘れるな、大きさも正確にするように!」
「ええ〜っ!」
幸か不幸かアカデミーの運動場はかなり広い。
ここいっぱいに地図を描けというのか?!
「‥‥心配するな、こっちの組からも助っ人が出る」
いつのまにか我愛羅がテマリのそばに立っている。
「ええ〜っ!」
今度は我愛羅組が不満の声をあげる番だ。
「暗号伝達の授業じゃなかったんですか〜」
うどんがまたもや、気配を無視して声を発する。
そうだ、そうだ、と同意しながらも逃げ腰の我愛羅組一同。
「‥‥うるさい、やれ」
声は穏やかだが、それなりに殺気立った気配に一同大慌てて作業に取りかかった。

一方教室に居残っているカンクロウ組。
木の葉丸がブーイングを出す。
「なんでうちの組だけ教室の中なんだ、コレ!」
爽やかな戸外で楽しそうに(はたからみるとそう見える)作業をする他のクラス。
一方自分たちはみるからに暑苦しい黒装束にクマドリの先生とむんむんする教室で授業だ。
「君子危うきに近寄らず、じゃん。いいから授業行くぞ!
ほれ、ノートぐらいとれ」
ぶーぶーいいながら筆記用具を出す子供達。
「さっきお前らの組は、我愛羅と秘密文書をやったんだろ、なら鉄は熱いうちに打てっつ〜ことで、この授業は国語だ」
一応カリキュラムがあるのかも、とちょっと感心しつつも、どっちかっていうと体術の方がいいなあ、とまだ外の様子に未練がある子供達。
その気配を感じたカンクロウがばっさり切り捨てる。
「お前らは阿呆だな。
俺の授業でよかった、と3時限目が終わる頃には絶対思うじゃんよ」
あいかわらず、むだな自信も傀儡と同様常時携帯しているらしい。
「この授業では威嚇についてやる。
戦闘は、相撲だって、フリーキックだって、昆虫の闘いだって基本はにらみ合い、おどしあって始めるからな。」
「待つんだカンクロウ先生、国語の授業と威嚇とどういう関係あるんだ、コレ?」
「つまりだな、技の命名のコツを教えてやろうってんだよ。
戦闘時にそれがインパクト大なら勝負は半分以上もらった、ってことじゃん。」
そうなんだろうか、なんだかセールストークをきいてるようだ。
「強そうに響かせて相手をびびらせる、これが基本じゃん。
サバクソウソウ、サバクキュウ。
クロヒギキキイッパツ、とかな。
(さりげに自分の技も入れるなあ、と気がつく生徒達)
まあ、木の葉じゃシャリンガン、とかラセンガン、とか。
カゲシバリとかもあったっけな。
(なんか、いやそう、とうすうす感じる子供達)。
おい、木の葉丸、この名前の共通項はなんだ」
「ええ〜っ、‥‥‥濁音がはいってることか、コレ?」
「当たり。
強そうでこわそうな技ってのはすべからく濁音まじりって決まってんだよ」
木の葉丸が突っ込む。
「テマリさんのカマイタチには、濁音はいってないぞ、コレ!」
カンクロウがイライラした様子で言う。
「あいつは本当に怖いから必要ないんだよ、バカ!」
姉弟関係かいま見たり。
「映画のヒット作品には濁音を入れるって原則を知らねえのかよ。
スター○ォーズ、ジョ○ズ、黄○帰り‥‥」
「タイタ○ックにははいってないぞ、コレ」
「主演俳優の名前にはいってるだろ!
レ○ナルド、ディ○プリオご丁寧に2文字も!
我愛羅とかにしたっていきなり濁点じゃん、バキもそうだ」
「ガングロウ先生はインパクトないんだな、コレ!」
「うるせえ、ゴノバ丸!」

教室組が自分の名前にてんてんがあるかどうかで大騒ぎしている間に、外はどうなっているだろうか。
涼しい顔の先生達とは打って変わって、息をあげながらどうにかこうにか子供達は地図を書き上げた模様だ。
「よし、だいたいできたようだな」
ひとまず合格が出た、とホッと一安心したのもつかの間、また指示が飛ぶ。
「じゃあ、これから我愛羅組とテマリ組で陣取り合戦をやる」
「ええ〜っ?」
「‥‥木の葉死の森」
ぼそっと我愛羅がつぶやく。
いきなりのことで意味が飲み込めない子供達。
「走れ!早くついた組の勝ちだぞ!」
テマリの激にはっとした子供達が一斉に走り出す。
と、突然地面が動いて、山のあるべきあたりの砂が盛り上がった。
近道のつもりでそこを通った子供が足をすくわれごろごろと転がる。
「‥‥地理の授業だといっただろうが、グズども」
なにやらうれしそうなS我愛羅先生、本領発揮か?!
他でも谷に当たる辺りを通った子供達がテマリのカマイタチで吹っ飛ばされる。
「地形を考えていきな!」
こちらなら、はたまたここなら、と子供達はあちこち動き回るが砂が盛り上がるわ、風が道を阻むわ、でなかなか思うように進めない。
みるみるうちにグラウンドはでこぼこ、砂嵐が吹きまくり、視界も非常に悪くなってしまった。
そんな中でテマリと我愛羅の指示が乱れ飛ぶ。
「霧隠れの○○山!」
「‥‥滝隠れの××川」
そしてやっかいなことに、どうやら先生同士が相手の生徒が先につかないよう足を引っ張りあっているようなのだ。
陣取りに走り回る生徒にとってはいい迷惑だ。
チャイムの音。
子供達は一斉に
「木の葉アカデミー!」
と、自分たちで叫ぶと教室へ散り散りになりながら逃げ込んでいった。

「ほれ、外見るじゃんよ」
カンクロウが大騒ぎをしている子供達にあごをしゃくって外を見ろ、と促す。
「うわ〜っ‥‥‥」
さっきまでの穏やかな初夏の風景はどこへやら、一面のオフロードバイク選手権会場を子供達がヒーコラいいながらあちこちへ進もうとあがいている。
「だから言ったんだよ。
んじゃ、3時限目はおしまい。
それぞれ強そうな技の名前を考えて次のオレの授業で発表してもらうじゃん。」
「そんなの、楽勝だな、コレ!」
内心カンクロウの授業でよかった、と思いながら木の葉丸が調子よく言う。
「‥‥‥ただし自分の実力に見合ったものにしとけよ。
変な名前付けた奴は、グラウンド整備にまわすじゃん」
静まり返る教室。
「‥‥やっぱり、誰の授業でも同じだ、コレ!」
出て行こうとするカンクロウの背中に向かって木の葉丸が文句を叩き付ける。
ちらっと振り返りカンクロウが薄ら笑いを浮かべて言う。
「俺たち砂の忍びは木の葉ほど甘くはねえんだよ」
「性格が悪いだけだ、コレ!」
「うるせえ、アカデミー生のくせに実戦経験者にたてつくんじゃねえよ!」
はたの生徒達は
(精神レベル的には同じだな)
と冷静に見ていたのを砂の黒装束が気付いていたかどうかは定かではない。

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蛇足的後書:なんかいまさらですが、残ってた3時限目を付け足しました。
字画とかの知識がないもので安易な濁点ジンクスに逃げました、すいません(汗)