木の葉で非常勤
第一時限

緊張する木の葉丸達の教室に非常勤講師陣が入って来た。
情報がもれていたとはいえ(忍び里である、諜報活動はチビとはいえお手のものだ)ざわつく教室。
「情報は本当だったんだな、コレ」
「さすが5代目様は思い切ったことするわ‥‥」
「どんな技をおしえてくれるんだろうね〜」
こそこそ話をする木の葉丸とモエギとウドンの方へいきなり講師の一人の視線が飛んで来た。

「‥‥オイ、そこのお前」
すいっと人差し指が木の葉丸の前で止まる。
凍り付く生徒達。
それもそのはず、一番無口なはずの講師が真っ先に口火を切ったからだ。
「前へ来い」
直々のご指名に顔面蒼白になりながらおどおどと前へ進み出た木の葉丸。
小柄な講師の横には忘れもしないにくたらしい黒装束隈取り男。
むこうも木の葉丸のことを記憶してるらしい、ニヤニヤ笑いを浮かべている。
あの恨みは忘れてないぞ、といわんばかりにキッと睨み返す木の葉丸。
唯一の救いはきれいなお姉様がいることか‥‥しかし彼女はこの2人の姉、つまり大奥である、油断はできない。

「今から班分けをする。
俺たちは3人だから、3班に分けて面倒を見る。」
再びどよめく教室。
一体誰に当たるのか。
「心配すんな、担当は固定制じゃない。
ローテーションでまわるから、公平じゃん。」
生徒達の動揺を見透かしたように黒装束男が言う。
安堵のため息があちこちから聞こえる。
無理もない、つい最近まで敵だと言われて来た砂隠れの里の忍者だ。
いきなり彼らに教われと言われて、動揺するなという方が無理というものだ。

テマリが『我愛羅』『カンクロウ』『テマリ』と大きく板書するとみんなの方を振り返る。
「じゃあ、さっそく班を分けるよ。
木の葉丸とか言ったな、我愛羅とじゃんけんしな」
静まり返る教室。
聞き間違いだろうか。
しかし、誰にも聞き返す勇気はない。
それにテマリの声は低いがよく通る声だ。
「まじめにやんないやつには、我愛羅の技が発動しても知らないよ」
テマリの冷淡な声が静まり返った教室に響く。
「来い」
我愛羅が腕組みをほどく。
本当にただのじゃんけんなんだろうか、なぜこんなに禍々しいオーラが彼から出ているのだ?
「ほら、いくじゃん」
カンクロウが木の葉丸を我愛羅の前にぽいっと放り出す。
もう逃げ場はない。
テマリが楽しそうにカウントダウンを始める。
「最初はグー、じゃんけん‥‥‥」
「ま、まつんだ、コレ!」
木の葉丸が叫ぶ。
眉間にしわを寄せて不快げに我愛羅が返事する。
「‥‥なんだ」
「じゃ、じゃんけんでどうやって3つの班に分けるんだコレ!
勝ち負けだけじゃ2つの班にしかならないじゃないか、コレ!」
人間必死になるといろいろ頭が回るものだ。
「‥‥フン、物わかりの悪い。
あいこもあるだろうが。」
時間稼ぎに必死の木の葉丸。
次なる質問を叫ぶ。
「じゃあ、じゃあ、勝ったら誰で、負けたら誰で、あいこなら誰に当たるか知っときたいんだ、コレ!」
フフン、という顔で我愛羅が睥睨する。
「お前が勝てばテマリ、負ければカンクロウ、あいこならオレだ」
ここは勝ちたい、と本能的に思ったのは木の葉丸だけではないだろう。
「ああ、忘れてたじゃん、大事なことを言っとく。
お前ら我愛羅の得意技を知ってるよな。
これが勝つ秘訣じゃん」
あおるようにカンクロウが告げる。

我愛羅の得意技‥‥
砂瀑柩、砂瀑送葬、‥‥
そのいずれも‥‥グーである。
しかし!
最新の情報によれば、流砂瀑流はパー、砂瀑大葬もパーだ。
じゃあ、じゃあ、チョキは出ないのか。
ああ、どうすれば、どうすれば‥‥アカデミー生には重すぎる選択だ!
「最初はグー、じゃんけん‥‥」
見切り発信でカンクロウが追い立てるようにかけ声を発する。
もう、いちかばちかだ!
人間最新の技を使いたがるものだ、きっと我愛羅はパーで来る!
こう踏んだ木の葉丸は大きな声とともに手を出した。
「チョキ!」
無言の我愛羅は‥‥え?え?チョキ?
「なんでだ、コレ!
グーかパーじゃないのか、コレ!」
「‥‥もう一方の手はグーだ」
よく見れば、これは、こともあろうに人差し指と中指を立てた例の印だ!
背中に回したもう一方の手は確かにグーである‥‥
「こんなのサギだ、コレ!」
緊張し過ぎでキレ気味の木の葉丸が叫ぶ。
口の端で笑いながらも我愛羅が木の葉丸を睨んだ。
「なら、逆にしてやろうか、砂瀑‥‥」
木の葉丸が「我愛羅」と板書してあるところへ速攻で並んだのは言うまでもない。

一時間目は組み分けに終始した。
しかし、ただのじゃんけんとはおもえない、半ば命がけの闘いにアカデミーの子供達はへとへとに神経をすり減らした。
我愛羅はグーもパーもチョキもまんべんなく出した。
ひっかかるようにしむけたのはもっぱらカンクロウとテマリといえよう。
「さっきから砂瀑送葬つづきだったから、そろそろ砂漠大葬かな〜」
「いやいや、我愛羅はあれはめったに使わないじゃん」
なにげない二人の会話にもれなく翻弄されたかわいそうなアカデミー生達。
組み分けが終わった段階で、トップバッターだったため、いささかなりとも回復した木の葉丸が苦情をぶち上げた。
「これはフェアじゃないぞ、コレ!」
「フェアってなんだコレ、じゃん?」
またしても黒装束クマドリ男である。
「じゃんけんってのは、正々堂々とやるべきじゃないのか、コレ!」
「フン、だから木の葉は甘いんだよ、しっかり翻弄されやがって。
俺たち砂忍が来てる意味ねーじゃん。
たとえじゃんけん一つでもいかに自分に有利になるように勝負を運ぶかが俺たちの忍道なんだよ!」
「そこまで砂を陰険な里にするなよ、カンクロウ」
テマリが割って入る。
「ガキ相手に本気でむきになってるな‥‥」
これは我愛羅のつぶやき。
「ともかく、班は決まったんだ、2時間目からはこの班でいくよ」
テマリが皆に告げる。
「1時間目はただの班分けだけだったんだな、コレ」
木の葉丸がまだ憤懣やるかたない様子で憎まれ口をを言う。
「ば〜か、こういうのを心理学っていうんだ、覚えとけ」
カンクロウが黒板にでかでかと『一限目 心理学』と書きなぐりながら言い返す。
違う、と思ったのは砂姉弟だけではなかったが、アカデミーの彼らが、まだまだ未知数の講師を怒らせると後がやばいと自粛したのは賢明な判断であったろう。

さあ、これからどんな授業が展開されるのであろうか‥‥

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蛇足的後書:そうです、いったいどんな授業をしてたのか、アニメのナルトを見た方なら誰でも思いますよね〜!
「ガキって苦手」じゃなかったのかよ?!
といいつつも、せっかくですので、あり得ないこのシチュエーションを利用させてもらいます。
完全捏造ですのであまり期待しないでね(でもブスになる心配はないよ、文章ですから!:まだ根に持っている管理人でした)