パパは17歳

「‥‥話が違うじゃない!」
「まあいいじゃん、そうカッカすんなって」

カップル、ゲーセン入り口前で口論の図。
ラブホの前で押し問答よりましではあるが、本日は休日、ひっきりなしに通行人が横を通り過ぎ
例外無くこの2人は何をもめているのだろうという好奇の目線を投げかけていく。
こうなったら人目を気にする の負けである。
図太いカンクロウ、先行白星。

「ほら入るぜ、 チャン。
3時間パックでいいだろ」
「3時間も?一体そんな長い間何するのよ?あたしこんなとこさっさと出たいもん!」
「フン、今のセリフ3時間後も覚えとけよ。
絶対もっといたいって言うからな」
「言うもんですか!」
「言う」
「言わないって言ってるじゃない!」

こんなとこで言い争っていても仕方ない。
実践あるのみと見たカンクロウは肩をすくめて、ぷんぷん怒る を的当てゲームコーナーへ連れて行く。
「‥‥何よ、コレ」
の頭の中ではゲーセン=ピコピコ画面とにらめっこする場所、らしい。
「何もコレも、単なる的当てじゃん。
1から9までの数のゴールにボールを投げて早くクリアした方が勝ちなんだよ」
言うが早いか、カンクロウはボールを拾って素早く1の的に当てる。
ランプが点滅して派手なファンファーレが鳴り響く。
「ほら、 の番じゃん」
ポイッとボールが渡される。
運動神経は悪くない 、とっさにうけとめて
「こんなことで騙されないんだから」と、一応カンクロウを睨んだ後きれいに的に命中させる。
点滅、ファンファーレ。
「何よこれ〜、恥ずかしすぎ!」
言いながらまんざらでもなさげだ。
これだから は単純なんだよ、と密かにほくそ笑んだカンクロウはその気のゆるみが災いして、2の的を外す。
「え〜っ、マジかよ?」
「カンクロウくん、あたしに勝とうなんて10年早いわよ」
余裕のストライク、ファンファーレ、同点白星の
「ちっ、なめられてたまるか!」
「フフン、受けて立つわよ!」

あっというまに的当てゲームを終了した二人。
カンクロウのむくれ具合からすると、 が勝ってしまったらしい。
「ふふふ、次は何するの」
「まあ、体動かしたあとは王道のゲーム、だな」
ゲームと聞いてちょっとひく 、それに気がついたカンクロウはポンと彼女の頭を叩く。
「ったく、ちょっと昔絡まれたからって、全部のゲーセンに悪いイメージ持つなんてナンセンスなんだよ!
まわり見てみろよ、ガキだって親と、ご老体だってマゴ連れで来てるじゃん。
今時のゲーセンは健全なる娯楽空間だぜ」

言われてみれば確かに老若男女、雑多な人種が楽しそうにゲームに興じている。
(‥‥あたしって偏見持ちかも、こんなに明るい雰囲気なんだから)
そう、 はまだ小学生の頃、興味津々でいった場末のゲーセンでからまれたトラウマ持ち。
よっぽどいやだったのか、それ以来ゲームと聞くだけでも露骨に拒否反応を示す有様。
カノジョと同じことで楽しみたい派のゲーマーカンクロウは、今日は行く先を内緒にして を引っ張り出したのだ。
バレンタインに毎度の事ながら任務が入り、当日決済がかなわなかった としては
今日はカップルらしいムードでやり直しが望めるかな、とか期待していたのだが。
もっとも彼女とて、今まで持っていたゲーセンに対するイメージを訂正しつつある。
しかし、いかんせん意地っ張り。
「ホントね、あたしが間違ってた」などと素直に言えるはずも無い。
一旦タイミングを外してしまうとどうやってチョコへ話を持っていけばいいのか、いい案が浮かばない。

さて、 の思惑等気にも止めていないカンクロウが次に選んだのはショベルカーゲーム。
重機を使って画面に現れる建物を壊したり、砂を移動させたりするゲームだ。
「ほれ、競争するぞ」
「ええ〜、操作方法もわかんないのに」
「やってりゃそのうちわかるって、行くぞ」
問答無用で見切りスタート。
手元のレバーと、足のペダルで操作する、のだが、右に動かすつもりが左へ、バックさせようろするのになぜか旋回したりでとんとうまく行かない。
画面にでてくる現場監督風のオッサンは容赦なく「ヘタクソ!」だの「減給!」だの言うし、も〜、どうすんのよ、と横の連れをみると‥‥
別に同レベルである。
「ちぇっ、うっせえな、こっちだって初心者なんだからな」
口を尖らせて盲滅法レバーを倒したり、ボタンを押したり。
なんだ、上手なのかと思ってたのに。
「しょっちゅうゲーム機入れ替わるのに、全部に精通してられっかよ、それほどオレは暇じゃねえじゃん」
それはそうだ。
しかし‥‥さすが傀儡師、ある意味エンジニアなカンクロウはあっという間に操作方法を掴み、ちゃっちゃと課題をこなしていく。
負けん気発動で もなんとか操作方法を曲がりなりにも把握して家をつぶしにかかる。
しかし、ここは勝負あったようで時間切れになった時はカンクロウの圧勝。
「へへん、よそ見してっからじゃん」
鼻でかでか、違った、高々、である。
「ふ〜んだ」
ガキなんだからと思いつつ、さすがだな、とへんなことでちょっと見直したりする。

ゲームコーナーの後ろの方から子供のにぎやかな声が聞こえてきた。
振り向くとそこにはキッズ専用コーナーがあって、ジャングルジムやトンネル、ボールプールや滑り台、
トランポリンやアスレチックなどが所狭しと並べられ、子供達がきゃあきゃあ嬉しそうに遊んでいる。
「いいなあ〜、昔はこんなコーナーなかったよ」
「なんだよ、なら今遊べばいいじゃん」
「ばっか、何言ってるのよ、もうあんなとこで遊ぶ年じゃないし」
「なら、そういう年になりゃいいんだろ」
「は?」
こういう時忍者のカレシがいると便利である。
はどこからどう見ても小学生になりたてほやほやの少女になってしまった。
カンクロウはというと、あれ、変化していない。
「ちょっと、なんでカンクロウはそのままなのよっ」
「ひゃはは、 憎たらしいコムスメそのものじゃん、いてっ。
いいんだよ、オレは運動足りてるからこっちで休憩させてもらうじゃん」
彼の陣取ったのは、キッズコーナーのまわりにある保護者用に提供されているマッサージチェア。
どっかと座り込んで
「お〜、気持ちいいなあ、たまんねえ〜」
「なによ、おやじね!」
確かにチェアのところはおじさんに人気の様で、お子様に連れ出されたおじさん達がごろごろしている。
カンクロウの座った所が空いていたのは、隣の席にどうみてもヤッチャンかと思えるような柄の悪いおっさんがいたからだ。
もっともそんなことでひるむカンクロウではない、目つきの悪さならまけてねえよ、といわんばかりに
おっさんがじろっとみても知らん顔で椅子を占領してしまった。

見切りをつけて一人キッズコーナーにもぐり込む
「ふん、どれ」
ずぶずぶとボールプールに入り込む。
以前、いとこの子供につきあって遊園地のボールプールで遊んだ時は大人の体がじゃまをしてそんなに楽しめなかった。
しかし、今は身軽なのがいいのか、ボールの海に変に体が沈みこむ事も無く、いい感じである。
手当たり次第ボールをなげてみる。
おお、ストレス発散!
夢中になってぼかすかやってると、他の子供も来て と一緒に遊び出す。
うわ〜っ、と盛り上がった所へ係員がやってきた。
「ごめんね、ボールは外へ出さないでね」
うるさいなあ、もう、大人はいつだって水さすんだから、と自分も中身は大人のくせに心の中で舌打ちをする
渋々ボールプールを抜け出すと、今度はジャングルジムともアスレチックともつかない遊び場の集合体にチャレンジ。
大人なら到底通り抜ける事の出来ないせまくるしいトンネルをくぐり抜け、網でできたはしごを落っこちそうになりながら必死で昇り切ると、飛行機の形をした頂上に到着。
わけもなく到達感で嬉しくなる。
「カンクロ〜ッ!」
大声で叫んで、姿を探すと‥‥マッサージチェアにで〜んと寝転んで‥‥寝てる。
もう、若おやじ!
ふんっと鼻をならして、さあ次はなにしようかな、とあたりを見回す。
と、足下に誰かの顔がちらっとみえた。
小学4、5年生ぐらいの少年だ。
なにをニタニタしているのかと思ったら‥彼のいる角度から見ると のミニスカの中が丸見えなのだ。
「ぎゃ」と思わず飛び退く
少年の顔も消えた。
ったく、そういえばこれ位の男ってスカートめくりとかよくやってたな、と懐かしい訳でもないが思い出す。
アンタが覗いたのはそんじょそこらのガキのスカートじゃないんだからね!
次やったら承知しないわよ、と姿を消した少年を睨みつける
昇ったら今度は降りるのみ、さっきから子供達が行列して待っているのは巨大滑り台だ。
もしっかり列にならんで、ワクワクと順番待ち。
と、誰かが強引に割り込もうとしている、見ればさっきの男ではないか。
「ちょっと、アンタ!!なに順番抜かしてるのよ、みんな待ってんだから並びなさいよ!」
がここぞとばかり怒鳴りつける。
「何だよ、偉そうにいうなよ、この男ドブス!」

おおっと、なんとも古典的な罵声。
案外子供の世界には懐かしいスラングがみちあふれてる。
「チャリラ〜、鼻から牛乳〜♪」なんかも健在だ。
閑話休題。

にらみ合う と少年。
気持ちは大人なので全くひるまない
しかし、である。
この少年、さっきは足下にいたので気がつかなかったがやたらでかい。
はたからみればちびっ子の少女とでかい番長がタイマンしているかのようにしか見えない。
まわりの将来は善良な民間人になると思われる子供達はびびって固まっている。
とて本物の子供であれば、こんな無茶はしないと思われるが、今は中身が大人なので引くに引けない。

「この変態男!」
「なんだと、この男女!」
「ちかん!」
「いちごパンツ!」
本日の下着の柄をばらされた は羞恥心より怒りの方が先立っておもわず少年につかみかかる。
しかし、体が覚えている位置に腕が配置されていないがために胸ぐらではなく‥‥
急所を直撃してしまった。
「‥‥!!!!」
うずくまる少年。
しかし、少年も負けてばかりはいられない、 めがけて今度は本気で殴り掛かる。
ヤバいと見た は素早くよけて‥‥体が軽すぎた、滑り台を真っ逆さま。
しかし転んでもただでは起きない砂忍が連れ、とっさに足で少年を引っ掛けていっしょに転がり落ちる。

騒ぎを聞きつけた親達&係員がなんだなんだと駆けつける。
半べその少年と乱れ髪の少女に視線が集中する。
親達はめいめい自分の子供達を見物客の中にみつけて安心する。
(ウチの子に限って、やはり大丈夫だった)そんな安堵の声が聞こえる様だ。
しかし、しかしである、この保護者の中に2名、自分のミウチを関係者の中に見つけてしまった者がいた。
カンクロウと例のヤクザまがいのおやじである。

、おまっ、一体何があったんだよ?」
「どうも何も、このガキが‥‥」
説明しようと思った所で少年が口を挟む。
「ガキガキいうなよっ、てめえの方がずっとガキだろっ、この男女!」
「負け犬の遠吠えは見苦しいわよ、この女男!」
の性格を知るカンクロウが割って入ろうとする。
「もうやめろよ、 、十分じゃん、大人げない」
見た目はやっさんまがいのおっさんもあんがい平和主義なようで止めに入る。
「おい、お前もやめるんだ、ボウズ!」

だがその垣根をものともせず、2人の、ののしりあいが続く。
「スケベ女!」
「あんたの方がスケベでしょうが!」
「さっき急所に触っただろ!」
「だから何よ、触ってへるもんじゃなし!」
「お前それでも女かよ!」
「男、女うるさい、このドーテー!」
おっさんが眉間にしわをよせて、この娘はいったいどういう教育を受けているのかと、連れてきていると思われるカンクロウを睨む。
無理も無い、よく見て7歳の
引きつったごまかし笑いで頭をかくカンクロウ。
少年にはこの言葉の意味が不明だったのだろう。
「何わけわかんないこと言ってるんだよ、このイチゴパンツ!」
この発言には『大人げある』カンクロウが反応した。
鼻にしわを思いっきり寄せて乱暴に少年の胸ぐらを掴むというか、宙づりにする。
てめえっ、おれの女に手ェ出すな!!

周辺の空気が凍り付いた。
別に が普通の状態なら何の問題も無いのだが、今の彼女は態度はともかく見た目は立派な子供だ。
そしてカンクロウは立派な青年、しかもどっちかというと老けてみられる。
ロリコン。
変質者。
「きみ‥‥ちょっと来なさい!」
おっさんがカンクロウの肩へがしっと手をかける。
「何だよっ」
その手を振り払うカンクロウ。
おっさんが懐へ手を入れる、まさかリボルバーか!?
伏兵、警察手帳登場。
「キミ、年は何歳だね?そしてこの少女は?
一体どういう関係なんだ?単にベビーシッターとは言わせないぞ!」
思わぬ展開に周囲の人間の輪がどんどん大きくなる。
まずい。
未成年者拉致容疑。
とっさに は『なめられたらひけねえじゃんモード』突入のカンクロウの足にしがみつき、叫ぶ。
パパ〜ッ、こわい〜っ」
ファンファーレ、点滅。
たまたま誰かが例の的当てゲームでうまくやっただけなのだろうが、タイミング的にはぴったりだ。
「まあ、なんて若いお父さん‥‥」
「へえ〜、これだから最近の若い子は‥‥」
「いったい何歳の時の子供かしら‥‥」
そんな声が漏れ聞こえてくる。
しばらく固まっていた警察官氏は、気を取り直すと今度は苦笑い。
「‥‥ははは、そうか、悪いことしましたな、お父さんだったんですか。
それにしても若いお父さんですな‥‥」
同様に固まっていたカンクロウも、「お父さん」の連呼に気を取り直す。
「じょ、冗談じゃねえよ、俺は‥う”っ」
「パパ〜、もう帰ろうよ、こんなとこやだ〜」
がカンクロウの後ろから背中に飛び乗って、おんぶのふりして首を絞める。
(せっかくごまかしたのに、バカンクロウッ、黙んなさいよ!!)
「ぐ、げほっ、そ、そうだな、もう帰ろうか‥げほっ」
「いやいや、すいませんでしたな、ウチのボウズがお嬢さんに嫌がらせをしてしまって。
どうも可愛い子にはついちょっかいを出してしまうようでしてな」
おやじの背後にはきまり悪そうな少年がいた。
カンクロウの背中からウインクを飛ばす
それを見て顔を赤くする少年。
その様子を見て の行動が分ったのだろう、カンクロウは再び鼻にシワを寄せると
おやじに見えないように少年にガンを飛ばし、その後自分の背中にのった のおしりをペン、とはたいた。
(いたっ、なにすんのよ!)
(へん、悪い子だったお仕置きじゃん)
「じゃ、気を悪くしないでまた来て下さい、私も仕事にもどらないといけないですからな」
少年をひきつれて警察官のおっさんはキッズコーナーへ戻っていった。

人の輪が消えた後にはちびのままの とにわかパパになったカンクロウが取り残された。
を背中から下ろすと我愛羅張りの腕組みで を睥睨するカンクロウ。
同じポーズでカンクロウを見上げる
サイズは小さくとも、 の態度はカンクロウ同様でかい。

「ったく、勝手におれをおやじにすんなっての!」
「そのお陰であの場をまるく納められたんでしょ!
こんなとこでもめて、カンクロウの上司に話がいったらどうすんのよ!」
「上司ぃ?」
『ウチの我愛羅』
それはちとやばい、とさすがのカンクロウも思ったらしい。
「ほら、ごらんなさいよ。
感謝されこそすれ、お尻たたかられるおぼえは無いわよ。
だいたい、カンクロウが始めたんじゃないの!」
「‥‥まあ、それはそうだけどさ‥‥」
なにやら語尾がはっきりしない。
「何よ」
「‥‥パンツの柄見られて、何でウインクすんだよ」
そこか?!
「も〜っ、冗談じゃないのっ!や〜ね〜、パパ!」
「だからっ、俺はお前のパパじゃねえよっ」
「んふふ、若いお父さんってかっこいいけどな〜」
「やめてくれよ!ったく、今回は選択をミスったぜ、さあ帰るじゃん」
「え〜っ、まだ時間あるんじゃないの〜?!」
「俺はカノジョと来たんだよ、娘とゲーセンにきたんじゃねえよ!」
「なら、変化とけばいいじゃない」
「あのな、さっきあれだけ注目されたんだ、今 が大人になったらどうなると思ってんだよ?」
「どうって‥‥」
「俺がパパ、んで、お前がママだよ」
「え〜っ、マジぃ?」
「決まってるだろ、顔だって子供と瓜二つじゃん」
それはそうだ、本人なんだから。
「んふふ」
何やら小悪魔な笑いが から漏れる。
「‥‥なんだよ」
「ソレもいいかも」
「じょ、冗談じゃねえっ、さあ帰るぞ!」
「え〜」
ぶーたれる を引っ立てて出口で清算するカンクロウ。
「まだ3時間経っていないですけどいいんですか?」
「いいっていってんだろ!」
「ハア」
店員の一人が を手招きする。
「何ですか」
「はい、これ、バレンタインに入場者に配ってたチョコレートだけどあげるよ。
パパはどうも機嫌悪いみたいだからね、キミも早く帰るはめになっちゃって気の毒だねえ。
でも、まさかこんな可愛お嬢さんがいたなんてさ、よく顔はみてたけど‥‥
それにママは?今日一緒に来てたんじゃないの?別行動なの?」
思わず、ソレ、アタシです、といいたい誘惑をかろうじてこらえ、 はいいこちゃんぶりっ子。
「ありがとう」とお礼だけいって出口でまつカンクロウのところへ駆けていく。
「何話してたんだよ?」
「うふふふ、やける?」
「バ、バカ、余計なことしゃべってんじゃないかと‥‥」
「お母さんはどうしたの、って聞かれた」
頭をかかえるカンクロウ。
「ああ、当分はここに来れねえじゃん‥‥」
「なんで?いいじゃん、別に」
「よくねえよ!」
「ふ〜ん、カンクロウでも人目気にするんだ〜」
「てめ〜、オレをなんだと思ってるんだ」
「図太いパパ」
「やめろ〜っ!!」
「いいじゃない、ハイ、愛娘から遅ればせながらのチョコ」
「‥‥チロルチョコかよ‥‥」
「愛よ、愛!」
「フン」
「冗談よ、ちゃんと本命もあるもん」
「‥‥‥え、あ‥‥‥そう」
さりげなさを装おうとしても嬉しさバレバレなカンクロウ(パパ)。
「ねえ、お願いがあるの、それしてくれたら渡す」
「わ〜ったよ、もとの姿に戻せっていうんだろ。
んじゃそこの物陰に行くじゃん」
「ちょっと待った!」
「なんだよ」
「もちろん戻してもらわなきゃこまるけど、その前にほら、アレ」
が指差す方向には‥‥プリクラ。
「‥‥‥マジかよ〜っ!!
さてはパパと娘のツーショットを狙ってるな!」
ニコニコと笑う
「さ、いこ」
どうやら拒否権はパパには無いらしい、全くもって娘に弱い父と愛娘そのもの。
カーテンの中にぐいぐいひっぱりこまれて、ぴこぴこという操作音を聞くしかないカンクロウ。
「なんだよ、 はゲーム嫌いな割にこーゆーのは好きなんじゃん」
「え〜、だってゲームじゃないもん」
似たようなもんだろ。
「さ、準備オッケー、笑って!」
娘のサイズに合わせてしゃがまされるカンクロウ。
ええい、もうヤケ。
ニッと笑うカンクロウ。
その顔を確かめて満足げに もカメラの方を向いた。

パシャ!

現像をまつ間に実物サイズに無事戻り、カンクロウにチョコを渡す
「は〜い、バレンタインおめでとう‥‥なんか、カンクロウ小さくなった?」
「何言ってんだよ、お前がもとのサイズに戻ったんじゃん」
「あ、そっか」
「さんきゅ〜」

ジーッ

写真が出て来た。
「わ〜い、どんな出来かな‥‥」
なんと。
そこにはチビ2人がうつっていた。
「へ〜、かわいいカップルじゃん」
うそぶくカンクロウ。
「こら〜っ、なんで、カンクロウまで変化してんのよっ!」
「え、だって変化なしとか言わなかったじゃ〜ん」
「‥‥‥ホント、砂忍って最後まで油断大敵ね!」
「そういうこと」
「ま、いいや。また来ようね、ゲーセン!」
「え、マジ?」
「うん!」
「へ〜っ、じゃあ来た甲斐があったな、トラウマ解消か」
「パパになった甲斐が、でしょ」
「それ言うなよ〜」
「ふふふ」

さっそく包みをあけてチョコをつまみ出すカンクロウに、ムード無いなあと文句をたれつつ
ちゃんと釣り合うサイズに戻った は自分から腕をからませて、仲良く帰りましたとさ。


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蛇足的後書:パパシリーズ第2弾(うそです)。
ゲームセンターって今はホント娯楽施設ってかんじで明るいとこ多いですよね、ラスベガス説も(笑)。
カンクロウ=ゲーマーなイメージをいかして、遅れまくりのバレンタインもどきにさせて頂きました。

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