黒電話

風影邸にはアンティークな代物が多い。
別に古ければいいというものではないのだが、
代々の風影が残していった家具や装飾品などをそのまま使い続けるのが暗黙のルールである以上、
どうしてもそうなる。
そして風影邸の廊下の定位置にはサザエさんの家に登場するような黒電話が鎮座している。
今時あまりにレトロなその風貌には、かえって目新しさを感じるほど。
職業柄忍者同士の連絡にはケータイなどは使わないので、電話はもっぱらここからだ。

「あ、 ?ひさしぶりじゃん。
今度遊びにいこうぜ、もうじき休みとれそうだから」
電話の向こう側の なる人物は、しかし、この電話をケータイで受けている。
「ホント?うれしいな〜。
‥‥ねえ、今、例の黒電話からかけてるの?」
「そうだよ、ウチにはこれしか電話なんかねえの知ってるだろ」
「まあ、そうなんだろうけどさ‥‥つつぬけじゃない‥‥」
「何が?」
「カンクロウの話してる事が」
「まあ、場所が場所だからな、んで?」
「‥‥アンタ、恥ずかしくないの?」
「なんで」
「‥‥こーゆー話は自分の部屋とかでしたいじゃない、フツー」
「そうか?別に極秘任務じゃねーから誰が聞いていようが不都合はねえじゃん」
「‥‥カンクロウの任務とごっちゃにしないでよ。
そりゃさ、国家機密とはいわないけど、つきあってる人間と話すこととかってある程度ヒメゴトじゃない」
「あ〜、そうかもな」
「そうかもな、ですか‥‥」
「無理矢理かくさなくっても、変な話したらみんな姿消すぜ、うちじゃ」
「聞いてられないからって?」
「多分な」
「ふ〜ん‥‥」

「ちなみに今いるのは3人だな」
急に声を潜めるカンクロウ。
「バキとテマリと我愛羅が聞き耳立ててる」
「え〜、じゃあいいよ、恥ずかしいから又こんど話そ」
「気にすんな、いつだって聞いてるんだから」
「‥‥それってサイアク‥‥」
「職業病じゃん、悪く思うなよ、それにすぐふり落とすから」
「は?」

今度は逆に声を大きくするカンクロウ。
「こないだ良かったぜ、いつもあんな風に声だせよ」
「なっ///」
「ほれ、我愛羅が落ちた」
「‥‥」
「俺って体術嫌いだけど、こっちの体術は極めるからさ」
「ちょっ‥‥////」
「テマリも落ちたぜ」
「‥‥」
「おっさんはなかなかしぶといな」
「もういいよ‥‥私が恥ずかしくて落ちちゃうよ‥‥誤解されるし、やだ〜」
「お前が落ちてどうすんだよ、まだ実践もしてないのにさ」
「バカ〜ッ」
「ひゃはは、冗談じゃん。そうだ、今の俺のカッコあててみな」
「え、ど〜せいつものテレテレジャージもどきでしょ、中途半端丈の黒い上下」
「大外れ、風呂上がりにタオル一丁だけというパーフェクトなお出かけスタイル」
「‥‥どこ行く気よ///」
のとこへ夜這い」
「‥‥アンタね‥‥////」
「ほれ、バキも落ちたぜ、これで心置きなく話せるじゃん」
「もういいよ‥‥」
多少ゲンナリ気味の に、まだ追い打ちをかけるカンクロウ。
「だめだめ、 はテレクラとか知らねえだろ」
「知ってるわけないじゃない!」
「こ〜ゆ〜きわどい会話を楽しむんじゃん」
「なんかカンクロウ、エロモード全開だね‥‥」
「そーか?見られてるとコーフンするタイプなのかもな」
「もう、切るよ、なんかヘンだもん!今夜のカンクロウ!」
「ごめんごめん!ホントはこんなこといいたくてかけたんじゃねえよ‥‥」
「じゃあ、何なのよ!?」
いい加減ご立腹の

ややためらった後、カンクロウの声が告げる。
「‥‥おくれたけど、ハピバ、な」
「‥‥あ、ありがと‥‥覚えててくれたんだ‥‥」
「もー照れくせ〜っ///やってらんねえよ!」
「‥‥変なカンクロウ、さっきのやらしい会話は全然平気だったじゃない、普通逆だよ?!」
「バカ言えよ、こんなの他の奴らに聞かれたくねえじゃん!じゃな!」
「ちょっ‥‥」

    ツー
    ツー
    ツー

キワドイ話の時はちゃかすみたいな声してたくせに、最後のハピバでは声が裏返ってたような。
やっぱりカンクロウの基準はどっかずれてるな、と思いながらも
これが男の純情というものかしら、などとニマニマする なのでした。


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自分で祝う誕生祝い第2弾(笑)。
リキマルさんから頂いた素敵で色っぽいカンクロウにこじつけてしまいました。
黒電話、このゴツゴツしたとこがなんかとっても彼に似合います。
大きな手で受話器を変則的にもってるとこなんかめっちゃ萌えですvv
ああ、カンクロウがこんな風に電話くれたらいいのにな〜。