SS 「 とゴキ」

山育ちで、蛙もトカゲも蛇も虫も平気なくせに、 はなぜかゴキブリだけは苦手だ。
里に来てはじめて遭遇したらしいが、初対面から生理的な嫌悪が走ったらしい。
顔めがけて飛んできたときは、側にいたカンクロウにしがみついて、キャーキャー叫んでいた。
我愛羅としては、まったくおもしろくなく、カンクロウがゴキブリを退治した後、
眼をキラキラさせながら英雄を見るような眼でカンクロウに感謝の意を告げているのを見たときは、
心底カンクロウをキューーーーッとしてやりたくなった。

そして…。
今日、我愛羅にも に英雄視されるチャンスがやってきた。
(俺はスリッパなんてものは使わない。)
「砂縛柩!」
憎い黒い物体は跡形もなく消えた。
砂が瓢箪に戻る。
スリッパでたたきつぶすと跡が残る上、始末も嫌な作業だ。
俺の砂なら、このとおり、何も残らない。
我愛羅は鼻高々で、部屋の隅に避難していた を見た。
今にも、 は感謝に瞳をキラキラさせながら俺に礼を言いに寄って来るはずだ。
「それじゃ、あの黒いのは、お前の砂に混ざったのか?」
え………
「お前、あの砂を身体に密着させるんだよな?」
いや…、それは………
一歩我愛羅が前に出ると、 は、三歩下がった。
どんどん は我愛羅から離れていく。
の頭の中で、砂の鎧を発動した我愛羅の顔から、あの触角がピンとつきだしているところでも想像したのだろう。
「我愛羅、ごめん、オレ、お前の砂には二度と触りたくない。もし、砂の鎧を発動しているお前に触られそうになったら…」
今まで見たことのない程深刻で暗い顔をして は、低い声で言った。
「守鶴を完全に封印する!」

…封印…。
そうだ封印だ!
、封印だ!」
我愛羅は自分の声に眼がさめた。
心臓がバクバク言っている。こんなことは生まれて初めてだった。
隣で、 が寝返りを打って、我愛羅の肩に頬をよせてきた。
にあんな顔で拒絶されることは、どんなことをしても避けたかった。

翌朝、我愛羅は にゴキ退治の方法を教えた。
「封印しろ」
テマリも もぽんと膝を打った。
なぜ今まで気づかなかったのか?
の封印ならば、いつまでものたうつゴキを見なくて済む上、後かたづけもさほど嫌ではない。

ただ一人、カンクロウだけが我愛羅の入れ知恵を苦々しく思いふてくされていた。

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リンクさせて頂いている『愛のかさぶた』ヨーコさんから、相互リンク記念に、とずいぶん前に頂いていたものです。
名前を変換しないとヨーコさんちの大河小説の主人公、風花になれます。
せっかくだからこの小説が完結してから載せさせて頂こうと思っておりまして、今回我愛羅の誕生日に完成されたので
ではでは、といそいそ載せさせて頂きますvvv
風花は我愛羅のパートナーになる方なので、カンクロウがいくら思ったって片思い決定なのですが、それでも
おいしいシーンをたくさん描写していただいておりまして、ここでもその片鱗が伺えると思います!
とても素晴らしいお話なので、ぜひお読み下さい!