プールガメ

ぷかぷか、ぷかぷか。

甲羅がお腹についたカメさながらに、でっかい浮き輪に腹這いになってプールに浮かぶカンクロウ。
「ちょっとは動いたら?若さのない」
あきれる の言葉にも動じる気配はまったくない。
「だってさ、オレって夜仕事してんじゃん」
「なんかそれだけ聞いたらコンビニで深夜バイトしてるみたいだね」
「まあ似たようなもんさ、俺たちの任務なんてなんでもありだからな」

突然中断される会話。
「こら、そこの男の子、プールサイド走らないの!」
笛をピピーッと吹いてすかさず注意。
グダグダの彼氏を尻目に はただいま任務中、正確にはプールの監視員のバイト中である。
「ほっときゃいいじゃん、痛い目見た方が本人も身を以て危険だってわかるんだし」
「しょうがないでしょ、決まりは決まり!
ケガしてからじゃ遅いの!」
「ケッ、過保護だねえ〜」
違反行為がないかプールサイドをきびきび動く の後ろから、
微妙な間隔を保って浮き輪で甲羅干しのカンクロウがけのびでついて来る。

「い〜な〜、 はすぐやけてさ」
「・・・・それって褒め言葉になってないし」
トレンドは美白、色白=美人。
もっともそんなことは全く意に介していないカンクロウ。
「いいじゃん、黒い方が強そうでさ、俺なんか全然やけないぜ」
「ならあの衣装をなんとかしたら、夏なんだし、タンクトップにするとか」
「砂忍は禁欲的なんだよ」
「あ、っそう。まあ、あのボロ人形しょってそんな格好してたら
廃品回収の兄ちゃんみたいに思われかねないもんね」
バシャッ
盛大な水鉄砲が浴びせられる。
「もう、何すんのよ!」
「いやいや、 が暑いだろうと思ってさ〜、このピーカンにプールの外で歩き回るだけじゃん」
相変わらず浮き輪に身を預けたぐ〜たらな格好でうそぶく。
「そんな格好で一日いたら、背中痛くて傀儡持てなくなっても知らないから」
「じゃあ日焼け止め塗って〜」
「仕事中だからだめ」
「冷たいなあ、俺は仕事のあとの疲れた体にむち打って の様子見に来てんのによ〜」
「来てくれなんて言ってないわよ」
「ふ〜んだ」
寝不足でややご機嫌ななめなのか、カンクロウはぷいっと方向転換して向こうの方へ行ってしまった。

ちょっと冷たくしすぎたかな、と反省する
夏の間、このバイトを入れてしまったから夜間任務の多いカンクロウとはすれ違い続き。
実際は、だから、彼が来てくれてすごく嬉しかったのだけれど、ちょっと照れくさかったのだ。
普段は直接見えない男らしさまるだしの上半身がいやでも目に入って来て。
でも立場上、いまさらこっちから呼びかける訳にも行かず。

ちゃ〜ん」
馴れ馴れしい声がした方を見ると、見るからにプレイボーイの先輩だ。
「疲れただろ、ちょっと休憩室で一服したら」
セクハラすれすれに肩に手をかけて来る。
「まだ時間じゃないですから」
するりと身をかわそうとしたが、どうもこの男、新入りを狙うのに長けているようでがしっとつかまれてしまった。
「いいって、気にすんなよ」
「結構ですから!」
もみ合いになりそうになった途端、先輩の足が不自然に浮き上がったかと思うと突然飛び込んでしまった。
プールに鈴なりの子供はいつもうるさく言う監視員がプールに落ちたとあって大喜びである。
「わ〜い、落ちた、落ちた!」
「服来てプールはいっちゃいけないんだよ〜」
「飛び込み禁止!!」

あっけにとられた だったが、はしゃぐ子供たちのそばで浮かんでいるニヤついたカンクロウガメに事情が飲み込めた。
手を合わせて(ありがと)と合図。

「どういたしまして」
後ろからの声にびっくりして振り返るとご本人。
「ええっ??」
「あれはオレの忠実なる部下の『廃品』じゃん」
「・・・・カンクロウって案外根に持つタイプね」
「評価挽回したい?」
「ハイ・・・」
「んじゃ、熱中症になった俺を別部屋で介護したら帳消しな、ほれ行くぞ」
「ちょ、もたれかかんないでよ、重たっ」
「あ〜、監視員さんだずげで〜、気分悪くてじにぞう〜」
「もう〜っ」

ずるずるとカンクロウをひきずるように休憩室に連れていく
「なあ」
「何よ」
「なんで俺が日焼けしたコが好きかわかる?」
「え〜、焼けた方が引き締まってみえるからでしょ」
「まあ、それもあるけどさ」
肩にかけた手で のTシャツといっしょに水着の肩ひもをつまんでひょいっとずらす。
「な、何やってんのよ」
「へへへ、このコントラストがたまんね〜じゃん」
「/////」
「また残りも見せろよな、 ちゃんv」
「このドスケベ!!」
「でもあの男は要注意じゃん、しばらく通うぜ」
「ええっ、マジ?」

この砂忍はプライベートでは禁欲的でもないし、結構過保護なのね、と思う でした。

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蛇足的後書き:PBBSに頂いた恐ろしく素敵なイラストに衝動的に書いてしまいました!
このポーズ、この目線、カンクロウの魅力を夏向きに凝縮したような作品ですっかり舞い上がってます(笑)。
Nonさん、感謝でございます!これからもグダグダな私をよろしくです〜(^^)