フレーフレーフレー

人気のあまりない、図書館の閲覧室。
俺はここを、非番の日の格好の昼寝の場所にしてる。
だれもでかい声ださないし、空調完備だし、立ち退きを要求されることもない。
退屈になったら、本は当然のこと、DVDでもCDでも漫画でも雑誌でも、なんでもござれだしな。

あ、あの娘また、来てる。
熱心なこって。
この図書館は取り扱い分野が広くって、それこそ、赤ん坊のための絵本から、最先端テクノロジーまで揃ってて、司書も結構大勢いる。
俺のお気に入りのここは、利用者がかな〜り少ない。
高等数学の応用とかいうのが主な取り扱い文書のセクションだから無理もない。
おれだって、昼寝でもなきゃ、こんなとこに足運びゃしないじゃん。
大学生や大学院生やはたまた研究者が対象らしいが、そんなヤツらは自分の大学で文献漁ってることの方が多いから、正直ここはなんのためにつくられたのかはナゾだ。
で、その彼女だが、ここの司書の一人に熱をあげてるらしい。
まあ、男の俺から見てもソイツは結構男前で、物腰もおだやかだし、なにより知的って点では抜きん出てる。
でもなあ、明らかに無理があるんじゃん。
彼女は問題の司書のにいちゃんと言葉を交わすべく、すっげえ努力してるみたいなんだけど、この場所では場違いすぎる質問の数々に、物陰で聞いてる俺でも笑いをかみ殺すのに苦労するぐらい、レベルが‥‥低い。
実のとこ、すごく苦手なんじゃねえの、数学。
にいちゃんも、いつも苦笑いしながら、それでも丁寧に答えてやってるけどな。

ちょっと可愛い娘ではあるんだ、まあ、そんなすごい美人とかいうんじゃないし、見方によっては男顔なんだけど。
勝ち気そうな大きなアーモンド形の瞳に長いまつげ、ツンと上を向いた鼻にかたちのいい唇。
背中の中程まであるロングヘア。
やせてるからスタイル抜群、とはいかないけど、見る目のある男なら「可愛いな」という感想を持つだろうな、フツー。
そうそう、なによりかまいたくなっちゃうとこは、気が強そうな顔の割に、とにかく恥ずかしがりらしくって、す〜ぐ赤くなるトコ。
こないだも、落っことした本を渡してやったら、真っ赤っかになってた。
そんなに恥ずかしがり屋のくせに、このオニイチャンのことは、よっぽど好きなんだなあ、いつ来てもこの場所にいてるじゃん。
ああ、じれったい、さっさと告っちまえよ。
それとも、もう伝えたんだろうか‥‥って、なんで俺がそんなこと、心配しなきゃなんないんだよ。

「あの‥‥ここ、いいですか」
声を掛けられて、顔をあげると、なんと、問題のカノジョ。
「は、ああ、あいてるよ」
あいてるもなにも、このセクションはがら空きでどこでもよりどりみどりじゃん、なんでわざわざ俺んとこに来んのかね、まあ‥‥‥いいけど。
これだけ聞くのに、もう赤くなってるじゃん、大丈夫かよ。
いったい、いつもどんな顔して、司書のニイチャンと口聞いてるんだろうな。
昼寝続行、のつもりだったんだけど、やっぱ、気になって眠れないじゃん。
しかたねぇ、なんか読むか。
全然数学と関係ない本ばっかり積み上げてあるオレの机の上を見て、ちょっと面食らってる様子。
「あ、あの‥‥」
「なに?」
「数学がご専門じゃ、ないんですか?」
「全然。俺いつも昼寝しにここに来てんじゃん」
いいカッコしたってよさそうなもんだけどよ、どうせ、他の男に熱あげてる娘にネコかぶってもしかたねえしな、っていうか、できねえのが悲しい俺のサガじゃん。
「そういうあんたも、ご専門は数学じゃないだろ?」
「え‥‥」
「だって、どう考えても、数学苦手そうじゃん。
悪いけど、いつも司書のニイチャンに聞きに行ってる質問がきこえてきちまってよ、盗み聞きしてたわけじゃないんだけど。」
「/////////」
「ごめん、よけいなこと言ったみたいだな。」

しばらく黙ってお互い本を読む。
そこへ例の司書がやってきた。
「はい、 、返しとくよ。お、いい席見つけたじゃないか、頑張れよ」
ふ〜ん、 っていうのか。
にしても、もう呼び捨てにする仲なのかよ、なんだ、心配してソンしたじゃん‥‥つまんね〜の。
「もう、余計なこと言わないでって言ったのに‥‥‥」
「は?」
「い、いえ、なんでもないんです、ゴメンナサイ」
気になるなあ。
「あのさ、 、さん?」
「は、はいっ」
そんなにびっくりすんなよ、こっちまでびびるじゃん。
「こんな席に座ってたら、誤解されるんじゃないの、カレシにさ。」
「は?」
「今の司書のにいちゃんだよ、アンタのカレシだろ?」
「ち、違いますっ、違いますっ///////誤解ですっ」
そんなに恥ずかしがらなくても別にいいのに。
「いつも通ってきてるみたいだし、別に今さら隠さなくてもいいじゃん」
「だ、だから、そうじゃないんです!!!!」
コンコン、と窓を鳥がつついた。
ちっ、今日は休みの予定だったんだけどな、仕方ない。
「俺、いかなくちゃ。まあ、頑張って、な」
呆然とする を後にして、俺は任務先へと急いだ。

なんだかんだと任務が重なって、あれからまるまる2週間ほど休みなし。
やっと、今日の非番をGETした。
こう言う時、心置きなく眠れる場所ってえと、やっぱ、図書館だな。
そういや、 、だったっけ、どうしてるかな。
ま、どうせ人の彼女だ、関係ねえけどな。

あいかわらず時間が止まったかのような、独特の空気のただよう図書館の閲覧室。
指定席に陣取って、周りに本のバリケードを積み上げて、いざ出陣、じゃねえ、ひつじと散歩、と思ったら、例の司書がこっちへ歩いてきた。
「キミ、ちょっと、いいかな」
なんなんだよ、きょうはアンタか。
「はあ、どうぞ」
のことなんだけど」
「ああ、あんたの彼女なんだろ」
「違うんだよ、彼女は生徒。数学の家庭教師なんだ、私は」
え?
「まあ、他に誰もいないから、ここで話しててもいいかな。
が好きなのは、君なんだよ。こんなこと、私の口から言うのもおかしな話なんだけど、2週間ぐらい前だっけ、君に誤解されて以来、落ち込んじゃってね。君の姿もみえないし、まあ、それで私がしゃしゃりでてきたってわけなんだよ。」
なんと。
「よけいなお世話なのは重々承知なんだけど、ほっといたら、 の性格からして、何も言わずに一人落ち込んだままでいそうなんでね。きみが のことをどう思ってるかは知らないけど、とりあえず、彼女に一度会ってやってくれないかな。」
「はあ」
「よかった、じゃあ、善は急げ、というか、君も忙しい人間みたいだし(いつも寝てるだろ)、 を裏の公園に呼び出すから、行ってもらえるかい。」
「‥‥オッケー」

俺は司書氏から手渡された添削済みの課題を持って、裏の公園へ急いだ。
こんなときに、こんなモン普通渡すかよ?やっぱりセンセイだな。
あ、あれ、 じゃないか。
あれま、髪がばっさり短くなってセミロングになってるじゃん、‥‥まあ、はやとちりというか、おっちょこちょいな娘だなあ。
「よっ」
わざと後ろから声をかける。前から行ったら逃げそうな気がしたからな。
「きゃあああああああっ」
「そ、そんなにびっくりすんなよ」
「ご、ごめんなさい‥‥‥」
「名前いってなかったな、おれ‥‥」
「カンウロウさん、でしょ?」
「な、なんで知ってんだよ」
「‥‥////ごめんなさい、色々調べたから‥‥‥」
「ま、いいや、あのさ、司書の先生から話聞いちゃったんじゃん。」
「え////な、何を‥‥‥」
色々調べた、とかまで言っときながら、いまさらそんなに赤面することないじゃん?
「オレのこと、好きなんだって?」
ボボボボボボッ
うわ、耳の付け根まであかくなっちゃったじゃん、ちょっと、単刀直入すぎたかな。
「ありがとよ。で‥‥」
「ご、ごめんなさい、迷惑でしょ、もう、カテキョのヤツ、おせっかいなんだからっ
わ、私のことなんか気にしないで、ああ、もう、どうしよ‥‥‥」
大慌てで俺の話をさえぎろうとする 、今度は青くなってる。
「ちょい、待てよ、俺の話も聞けよ!?」
びくっ
「まだ、何にも言ってねえじゃん。あわてんなよ、 。」
また赤くなる彼女。ああ、名前呼んだからか、ヒェ〜、ウブだねえ、いじめたくなっちゃうじゃん。
「あのさ、司書のニイチャンがカレシじゃないなら、俺と付き合う?」
俺を凝視したまま固まる
「‥‥‥///////か、からかわないで、下さいっ」
「いや、マジで言ってんだけど、俺」
「あ、ありえないわっ」
なんか、意固地になってないか、こいつ。
「なんで、ありえないんだよ」
「だ、だって、そんなの、話がうますぎるものっ」
「‥‥つきあうってのは、単なる始まりじゃん、そんなに構えなくてもいいじゃん」
「そ、そんなに、構えてなんか、い、いない、と、思うんだけど‥‥」
自信なさげに声がちいさくなっていく
「あのさ、俺のことどんぐらい調べた?」
「えっ、あ、ああ、え〜と、忍者で、風影様のご子息3姉弟の真ん中で、傀儡師で、14歳で、傀儡の名前がカラスで、誕生日が5月15日で、好きな食べ物がハンバーグで、きらいなのがホウレンソウで、血液型がB型で‥‥‥」
「‥‥よく調べたなあ、探偵でもできるんじゃねえか。
‥‥で、いつから、俺のこと好きなの」
聞くだけ聞いといて、話を全然違うとこへ振ってやる。
「////え、え〜と、半年位前から‥‥」
「半年も見てるだけだったのかよ?なんとまあ、オクテなんだな、 ちゃんは」
「うっ」
「告ろうとか、思わなかったのかよ」
「そ、そんなこと、できるわけないじゃないっ」
「なんで」
「な、なんでも」
「言わなきゃ始まんないじゃん。自分一人の中で完結しちまってオワリ、それじゃ発展ないじゃん」
「そ、そりゃそうだけど」
「じゃあ、つきあえよ」
「う、うん」
ハメてやった、しゃべってるうちに の口調も化けの皮がはがれてきて、本当の話し方になってきたじゃん。
「おれさ、裏表ないから、覚悟しといてくれよな」
「え‥‥いいじゃない、ない方が、そんなの」
「キツ〜イことも、平気で言っちゃうぜ」
「え‥‥そ、そうなの」
「でも、歯の浮くようなことも、平気で言っちゃうんだよな、これが」
「‥‥」
「でもって、スケベだから。」
「///////」
「後悔する前に、やめとくか?」
「そ、そんなこと、後悔なんてするわけないもの!」
お、即答じゃん、よしよし。
俺だって、実は のことは、ここへ昼寝に通い出してすぐ気が付いたんだが、例の司書を好きみたいだったから、あえてちょっかい出さずにいただけだからな。

「じゃ、座るぜ」
の隣に腰を下ろして、彼女の方を見ると、案の定、赤くなってうつむいてる。
「なんで、髪切っちゃったんだよ」
「え‥‥‥だって‥‥き、気分転換しようと思って‥‥」
「どーして気分転換しようと、思ったワケ?」
「そ、それは、あの、失恋したと思ったから‥‥」
「オレにか?」
「‥‥‥そうです‥‥」
「じゃあ、勘違いだった、ってことだな。でも、これくらいの長さの方が似合ってるじゃん。」
これは、本音。おれは好きな子相手でもお世辞なんか言わねえ、もしくは言えない。
長すぎる髪より、ばっさりあごのあたりで揃えられた今の髪型の方が、 のちょっと、男の子っぽいような不思議な魅力がよく出てる。
「そ、そうかな、アリガト」
「あ、これ、司書のニイチャンから」
「げ、もう却ってきたの。‥‥あ〜あ、ペケばっか、もうやんなるなあ」
「やっぱり数学苦手なんじゃん。俺もだけどよ」
「そうなの?‥‥へへへ、なんか嬉しいなあ〜」
「な、なんでだよ」
「だって、お揃いじゃない」
「‥‥お揃い、ねえ」
「ふふ、変だよね、でもさ、長いこと憧れてたヒトと共通項があったなんて、嬉しいよ、やっぱり。」
ああ、やっぱり、思ってた通り、笑うとすんげえ可愛いや、
強気な瞳がたれ目になっちゃって、ボーイッシュなのに可愛い絶妙なバランスの笑顔がうまれる。
ふ〜ん、と、この機会にしげしげと を観察させてもらう。
課題のプリントを弄んでる手は指が長くって、いかにもピアノかなんかできそうに見える。
まさか待ち合わせの相手が俺と思ってなかったからだろう、ラフなTシャツとGパン姿だ。
今まではけっこう、気合い入れてたらしいな、今日初めて気が付いた。
まあ、でも、こういう、素のままもいいじゃん。
サンダルばきの足の指をもぞもぞ、ずっと動かしてる。
落ち着かないのかな、やっぱ。
おれがじっと見てるのに気が付いたら、おやおや、またしてもたちまち真っ赤になりやがった。
「恥ずかしがりだなあ、 は」
「い、言わないでよ、すぐ赤くなるの、自分でも分かってるんだけど、どうしようもなくって、すごくヤなんだから‥‥」
「な〜んでさ、可愛いじゃん。」
「それでも、いやだよ‥‥‥」
「ま、いいじゃん、どうせ直りっこないよ、俺が直らないようにいじめちゃうからな。」
「そ、それ、どういう意味よ?」
「ぼちぼち、分かるって。」
釈然としない表情の

たとえば。
、指長いな」
「へ?ああ、そうかもね、よく、でかい手、とかいわれちゃうもん」
「お前も傀儡師になる素養あるんじゃん。傀儡使いは指長くないとだめだからな」
「そうなの?」
「ホレ、手、かせよ、俺の手と比べてみたら大きさわかるじゃん」
ぐいっと の手を引っ張って、おれの手とあわせる。
まあ、そりゃ、いくら の手が大きくても、俺の手にかなうわけないな。
「//////」
またまた赤面する l。
「細い指だなあ」
「/////、でもさ、昔フォークダンス踊った時に、ごつごつして、骨張ってる、とか言われたんだよ。
あれは、傷付いたなあ‥‥」
バカもいたもんだな、きっと、 のことが好きでわざと照れ隠しにそういう憎まれ口叩いたんだろう。
おかげで、俺がそれを利用させてもらえるんだけどよ。
「男によっちゃ、ぽっちゃりした小さい手が好み、ってやつもけっこういるからな。
俺は、 みたいな手が好きじゃん」
手を握ったまま言い放つ。
「///////////か、からかわないでよ」
「信じてないのかよ」
「そ、そんなこと、ないけどさ、いきなり言われても、どう反応したらいいのか、わかんないよ‥‥」
目を伏せて真っ赤になってる。
いやあ、こういうの、ダイスキじゃん、からかいがいありすぎ。
べつに嘘こいてるわけじゃないし、赤くなるのは の勝手じゃん、なんちって。
「あ‥‥‥こういうこと、なの?いじめるって、さ」
「そ」
ニンマリ笑うと、ちょっとこっちを睨みながらまた赤くなった。
「まあ、俺といたら飽きないのは保証付きじゃん。
見てる限り、 はすごく保守的だろ。
俺はその反対じゃん、頑張ってくれよな」
「よくわかんないけど‥‥が、頑張る‥‥、せっかく、カンクロウさんが‥」
「カンクロウ、でいいじゃん」
「じゃ、じゃあ、カンクロウが、付き合うって、言ってくれたんだから。」
わかってんのか、わかってないのか、はなはだ怪しい台詞だが、まあ、いいじゃん。

きゅるきゅる〜
ぶっ、はらの虫かよ〜、そういえば、もう昼頃かな。
「‥‥もう、やだあ‥‥ごめん‥‥」
「誰だってハラ減りゃ、虫がなくじゃん、昼飯食いに行こうぜ、こいよ」
「え、だって、お金持ってきてないし、こんなかっこで」
「そんないいとこ、行かねえよ。まあハンバーガーぐらいおごってやるから、来いよ」
図書館近くのファーストフード店にしけこむ。
「‥‥カ、カンクロウ、食べるの早いなあ〜」
は、おそいなあ〜」
「な、なによ、真似しないでよっ」
「へへへ、わりい、でも、職業柄チンタラ食べてらんないんだよ。
でも、今日は別に急ぐわけじゃないんだから、お前はゆっくり食えよ。」
「う、うん。」
「でさ、な〜んで、おれのこと、好きになったの。さっき、聞きそびれた」
げほっ、 がむせてる、予想はしたけど、あまりにもその通りの反応で笑えてくる。
「‥‥言わないと、ダメ?」
「うん、ダメ」
「////一目惚れ‥‥‥」
「はあ?」
「だから、いってるじゃない、もう、恥ずかしいなあ、ヒトメボレだってば!!!」
「なんで」
「もうっ、そんなのわかんない、見た瞬間に好きになっちゃうんだから、理由なんか聞かれてもわかんないっ!!!!」
「あ、そういうもんなの。俺、そう言うの、経験ないから、ちょっと不思議でよ」
「えええええっ、経験ナイのっ、信じられないっ」
なんだよ、その過剰な反応は。
「ホンットに、ないの、一目惚れしたこと????」
「ナイ」
「‥‥‥うそみたい。私なんか、今までの人生で好きになった人なんて、み〜んな一目惚れだったのに〜」
おい、俺でいったい何人目なんだよ?!
「ははは、こんな言い方したらすごい惚れっぽいみたいだね〜。ってか、そうなのかな////」
大丈夫かよ。
「う〜ん、初恋は6歳のときに、近所の眼鏡かけたお兄ちゃんを好きになった時でぇ、あと、小学校で4年の時に同じクラスの子が好きになったなあ、そのあとはクラス換えあるたびに誰か好きになってたような‥‥」
な、なんだよ、それは。
「あ、心配しないで、こんなの、全部風邪みたいなもんで、べつに付き合いたいとか告白するとか、そんな段階までもいってないの。ただ、ある日突然、気になり出して見てることが多くなる、ってだけ。」
‥‥そんなもんなのかね
「そうなの。‥‥‥今回のは大分違うけど/////」
そこを詳しく知りたいとこじゃん。
「え〜、なんていうか、私にしては、珍しく、本当に近しくなりたいなんて思った、のよね‥‥」
「でも、半年間、見てただけなんだろ」
「まあ、そうなんだけど、カテキョにも相談したりしてさ、そんなこと、今までしたことなかったもん。」
「こそこそ調べる間にぶつかっちまえばいいのに」
「そ、それができたら苦労はしないわよっ、やっぱ、心の準備として、色々知っときたいなあとか、思うもんなの!!」
「ふ〜ん、そう言うんならそうなんじゃん」
「気の抜ける言い方してくれるわね〜。ま、まあ、半年は確かに長すぎるかもしれないけど‥‥
振られること思ったら、恐くて言い出せなかったんだもん‥‥。
自分一人で盛り上がってる分には、別に傷付くこともないし‥‥。」
「でも、現実味、ないじゃん」
「ま、まあそうだけどさ、憧れてるだけで、ある程度は我慢できるもんなのよ」
「でも、今回は違ったって、か」
「/////うん‥‥」
「残念だったなあ〜、どうせなら、司書のニイチャンじゃなく、 から直接、告ってほしかったなあ〜」
わざとイヤミったらしくいってやる。一目惚れも知らないバカ扱いされた仕返じゃん。
「ご、ごめんなさい‥‥で、でも、そんなこといってたら、本当にいつになったら言えてたかわかんない、かも‥‥」
「んなことは、どうでもいいんじゃん、もう、知っちゃったからな。
‥‥なあ、言えてないつもりで、俺に告ってみてよ」
「え‥」
固まる
「俺もそのつもりで聞くからよ、ハイ、どうぞ」
「そ、そんなあ‥‥///////」
あ〜あ、真っ赤になってやがる。
気楽く適当に言うという手もあるだろうに、真剣に悩んでるよ、 のやつ。
こりゃ、本当に本番のつもりで聞けそうじゃん、ウシシシシシ。

5分も経った頃ころ、ようやく lが重い口を開いた。
「あ、あのお、カ、カンクロウさん、の、こと、
ず、ずっと、す、好きだったんです、わ、私‥‥
ご、ご、ご迷惑で、なければ、お、お、お、おつきあい、し、しし、していただけませんか‥‥」
もともと、ちょっとどもる癖のある だが、今回のはすごい。
当然ながら耳の付け根どころか、肌の露出してるところ全部が真っ赤になっちゃってる。
おいおい、もう付き合い出してる相手にこれじゃあ、本当に、カテキョの助けなしじゃあ成就できなかった可能性大、だな。
だてに のセンセイしてなかったわけだ、あのシショは。
「‥‥ありがとよ。ぜんぜん迷惑じゃないじゃん。よろこんでつきあわせてもらうじゃん」
うつむいたままの の頭をクシャッとなでて返事する。
まさか、俺も告白ごっこの返事を返すとは思ってなかったみたいで、予想外のことにちょっと面食らった顔で がうつむいてた顔をあげる。
「おれも、マジに返事してるじゃん、これでいいだろ」
ニヤッと笑い返したら、 の瞳が急にうるんできた。
え、な、なんだよ‥‥
「ご、ごめん、なんか、す、すごく、う、嬉しくって‥‥
へへへ、私のへたな告白受け止めてもらえたってカンジ?!
ありがとう、言えてよかった!!」
涙目で極上の笑顔をみせた
なんか、胸に、稲妻が走り抜けたような気がした。
‥‥ヤバイ、こういう感じなのかな、ヒトメボレ、とかいうヤツは、もしかしてよ。
まいったな、自分でカマかけといて、自分でひっかかっちまったみたいじゃん。
俺も照れくさくなって頭をボリボリとかく。
「ま、まあ、よろしく頼むじゃん」
「ふふふ、へんなの、私たちって」
二人して照れ笑い。

こうして、おれと のオツキアイが始まったのだった。

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蛇足後書:え〜、かなりクサイ話ですね、今読むと。出歯亀、と評して下さった方もおりました、大正解。
ハンバーガーショップでこういう雰囲気の若いカップルを見て思いついた話。
カンクロウがこういう視線でみてるというより、私がこういうヤラシイ見方をしてるのかも。
オバハンですみません(といいつつ、悪いとはみじんも思ってなかったりする、年を取るっていいわねえvvv)、ヤケクソ。
2004年9月作です。