ドリブル

ぶらぶらしてたらボールに足があたった。
なんとはなしに拾い上げてドリブル。
久しぶりだ、ボールで遊ぶなんて。
日中だけど人っ子一人いやしない。
頭を真っ白にしたくて町外れのコートの方へ駆け出す。
足音とボールが地面に叩き付けられる音だけが響く。
見上げれば、記憶の中よりずっと低くなっていたゴール。
なのにボールはボードに当たって跳ね返された。
ちくしょう、背が高くなってるから簡単に入ると思ってなめたのがいけなかったか。
今一度ジャンプ。
引力から自由に。
一瞬でいい。
このまま、青い空に向かって羽ばたいて行けたら。
かなうはずもない。
ならばせめて、お前をゴールへ。
さあ、俺を超えて行け。
地面に引き戻されながら網が揺れるのを見届ける。

持って生まれた器。
俺はいつだって、お前の後ろにいた。
そのことを妬んだことがないと言えば嘘になる。
お前の計り知れない力に怯えもした。
お前の兄であることを疎んじもした。
だけど、お前が安全な自分の殻をぬぎすてて荒波に向かってこぎだすと告げた時、決めた。
支えになろうと。
たとえ目には見えなくても。
力が及ばなくても。
助けなんかいらないかもしれないし、俺の出番なんかないままかもな。
でも、だめだと思ったときはいつだって帰ってこい。
兄貴なんてそのためにいるんだから。
超えて行くために、そしてありのままのお前を受け止めるために。

やっと手に入れた皆からの信頼。
お前が孤独の中から這い上がり勝ち取った勲章だ。
胸を張って、堂々とやっていくがいい。
頑張れよ、風影。

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蛇足的後書:すいません、趣味のサイトだからこんなヘタレ文も許して。設定は我愛羅が風影に就任してすぐです。弟の影にいる兄の心境を描きたかったので。
管理人は3人姉妹の一番下、男なしの我愛羅的立場ですので、しょせん姉や兄の心境は想像するしかないのですが、子供見てるとやはり、年上の兄弟が下を思いやる心というのはとても深〜いものを感じるのです。カンクロウが本誌で目覚めてすぐ書いたものです。しかしなんでドリブルやねん、とつっこまれるとツライです、とにかく飛ぶ=バスケ、になってしまったのさっ。