メヂカラ

待ち合わせの店でカンクロウはもういつもの席にいてる。
「おまたせ〜」
「お・そ・い」
「え〜、でも今日は時間ぴったりだけど」
「冗談じゃん、俺が早く来すぎた」
「へえええっ、そんなに待ち遠しかったんだ〜」
「へっ、ヒトと会う時は5分前にくるもんだぜ、常識じゃん」
憎まれ口をききあいながら腰掛ける。
「おっ、、つけてくれてんの、それ」
そう、今私がしてるチョーカーは珍しくカンクロウがくれたんだ。
「そうだよ〜ん、似合う?」
「いいじゃん。やっぱ、俺の見立ては確かだな」
くっ、普通相手をほめるとこで自分をほめる、この自信がなんともいえん。

‥‥何?
何よ?
テーブル越しに座る私にずずっと顔を近づけてきて目を覗き込むカンクロウ。
ちょっと、調子狂うじゃない?
なんか言いなさいよ?
黙り作戦と来たわね、この野郎!
あんた目つき悪いんだからやめてよ‥‥その、心の中まで見透かされるみたいな瞳で
じろじろ見られたら、なんて言えばいいのかわかんなくて‥‥困るじゃない‥‥
意地悪な薄緑の目で私の反応を楽しんでる。
自分でも顔が熱くなるのがわかるだけに悔しい!

「ちょっと、俺サマのメヂカラチェック」
やっと顔をはなして、ニヤニヤと斜に構えるカンクロウ。
「な、何アホなことやってんのよ、もうっ」
いいながらもほっとする、たまんないよ、あんな風に理由も分んないままずうっと見られたら。

照れ隠しに運ばれて来たカップに口を付けたとたん、
「んじゃ、そろそろ行くか」
「え、どこへ?待ってよ〜、私の今来たとこなんだもん、飲ませてよ〜」
「あ、悪い」
せっかちだなあ、もう。
でもどこ行くっての、まだ何にも予定たててないハズなんだけど。
「まだ?」
「も〜、そんなにせかさないでよ、カプチーノ熱いんだもん」
は猫舌かよ、どれ」
人のカップをさっと取って味見。
「全然熱くないじゃん、猫決定」
「も〜、カンクロウが不感症なのよ」
「‥‥‥俺があ?ほ〜、チャン、マジで言ってんのかよ」
「え、ああ、だからさ、その‥‥」
しまった、こういうあやうい言葉は避けるべきだった、と今更あわててもカンクロウの思うツボ。
の本日のセクシーなスタイルにびんびん感じちゃってんのになあ〜」
え?
あ、ああ、めずらしくミニスカだからか。
「いや、だからさ、そういう意味じゃなくて‥‥」
「そういう意味って何だよ、説明しろよ」
できるかよ、んなもん。
え、ちょ、ちょっとお、膝頭になんか触ったとおもったら、カ、カンクロウの手じゃないっ
こ、こら、こんなとこで、やめてよっ
正面にいるカンクロウは素知らぬ顔。
ぺしっと、テーブルの下でカレの手をはたく。
「ふふん、も猫だけあって、ちゃんと感じんじゃん」
当たり前じゃ、このスケベめ!

じーっ
な、何よ、また!
あんまり見つめないでよ、その眼光で凝視されたらドギマギしちゃうじゃない‥‥
「‥‥今日のはマジヤベ〜カッコしてんな‥‥」
うわっ、何よ、急に、耳元でささやくなよ、そんなこと。
「‥‥いつものジーパンもいいけどさ‥‥
でも、今日みたいなミニもいかすじゃん‥‥膝とか触りたくなっちまうぜ‥‥」
‥‥そういうこと、こういう場所で話さないでよっ、か、顔が熱くなるし、
その、耳元でわざと息を吹きかけて話すのも、ちょっと、どうなのよ、
しかも、‥‥よ、弱い右を狙って、って‥‥
すっ、とカンクロウがもとのように腰掛ける。
も、もうっ、思わす耳元に手をやって首をすくめてしまう。
ニヤニヤしないでよ、恥ずかしい。
はほんと、うぶだねえ、これくらいでもう真っ赤になっちゃってさ。
目も合わせらんなくなるんだからな、堪んないよ、いじめがいあるじゃん」
く、くそっ
「ほれ、もう冷めただろ、飲めよ」
何よ、冷めるまでの時間つぶし?
ぶつくさ思いながらカプチーノを飲み干す。
「口、ふけよ、ヒゲになってるじゃん」
やだあ、もう。
「行くぜ」
せっかちなのはよくわかってるけど、今日はまた、格別ね。

店を出て、足早にどこかへ急ぐカンクロウに遅れまいと小走りについて行きながら聞く。
「ねえ、どこ行くの」
「ラブホ」
ちょっ、うそでしょ?
「冗談だよ、おれんち」
えっ、マジで?まだ、一度もいったことない、カンクロウんち?
「い、いいの、でも、なんか前言ってたじゃない、一般人は入れないって‥‥」
「ああ、そんなこと言ったな。
まあ、いつもお前んとこ行かせてもらってるのに、一度も俺んちに来てないのもどうかな、と思ってさ。
どうせ行き方はホウコウオンチのには覚えられねえし、いいんじゃないの」
なんか、よくわからない説明‥‥おまけに馬鹿にされてるような‥‥
「そんなにふくれるなよ、じゃやめようか」
「や、やめないでよ、行く、行く、行きたい、カンクロウんち見てみたいもん!」
「よしよし、んじゃちょっと、人ごみから離れるじゃん、普通の行き方じゃ永遠につかないからな」
しばらく歩いて人気のない裏通りへやって来た。
「ま、ここらまで来たらいいかな、んじゃ行くぞ」
ひょいっと担ぎ上げられて、出た、忍術飛び!
スカートなんてはいてこなきゃよかったっ!風で足がほとんど丸見え!!
「‥‥ひゃあ〜、いい眺めじゃん、やべ〜、どっかにぶつけるかもしんねえぞ、気が散ってさ」
楽しそうにどんどん飛ばして行くカンクロウ。
そのスピードの早さにしがみつくしかない私。
景色が走馬灯みたいに流れてとてもじゃないけど、どこにいるんだかまるきりわかんない。
10分もたったころ、カンクロウがスピードを落とした。
「そろそろ着くじゃん。‥‥スカート、直せよ、もったいないけど」
あわててまくれあがったスカートを元に戻す。

おろされた場所には大きなお屋敷。
うわあ、すごい‥‥
圧倒されてる私を尻目に、手でなにやらささっと印を結んでつぶやき、
私の手をとってでかい門をくぐる。
「す、すごいお屋敷だね‥‥」
「おれがたてたんじゃねえし、どうでもいいじゃん」
「そ、そんなつもりで言ってないよ」
「ま、気にすんなよ、砂の里の司令塔も兼ねてるからこんなにでかいんだよ」
‥‥なんか、はげしく場違い‥‥
「今更気が引けたとか言って帰んなよ」
「で、でも、いいの、わたしなんか来てさ‥‥」
「かまうもんか、どうせ秘密の場所なんて行きたくても行けないじゃん、
あちこち結界だらけだからな、ここは。
ただ、おれにくっついとけよ、まよったら困るからな」
冗談じゃないわ、こんなとこでまよったら死んじゃう!
ひしとカンクロウの腕にしがみつく。
「おいおい、そこまでしなくても大丈夫じゃん、心配すんなって」
「う、うん」

うねうねと複雑に入り組んだ廊下を歩いて、ようやくカンクロウの部屋へたどり着いたときには、
なんか気圧されてくたくた。
ドアを開けて中にはいったとたん、へなへなと膝をついちゃった。
「大丈夫か」
「う、うん、ちょっと、びっくりしちゃってさ‥‥」
いいながら、部屋の中を見回す。

へえ〜、ここがカンクロウの部屋かあ。
けっこうきれいに片付いてるなあ。
男の人の部屋っていったら、もっとなんか雑然としてて、
ポスター(水着姿のおねえさまの)とか貼ってあったりすんのかな、とか思ったけど、
そんなものもなく、こむずかしそうな本がぎっしり入った本棚があって、
一方の壁にはぐるぐるまきの傀儡と思われる物体が2体‥‥
多分何回か見たカラスとクロアリ、だったっけ、があるだけ。
反対側の窓のあるかべぎわにはベッドがあって、机があって、クローゼットがあって、それでおしまい。
ちょっと殺風景かも。

「なんか、あっさりしてんだね」
「まあな、あんまりいないしな」
そっか、任務で出ずっぱりなんだ、ご苦労様。
「じゃあ、ここにいるとき何してんの?」

質問に答えずに、後ろからカンクロウの腕がのびてきて、私を抱きしめた。
「‥‥なあ、ここじゃ、いやか?」
そ、そんなことない、け、けど‥‥ちょっといきなり過ぎませんか?
「短気すぎってか?
が今日みたいなそそる格好するから悪いんじゃん。
いつもはシャツの第2ボタンも開けるの迷うくせにさ」
う‥‥
「ちょ、ちょっと流行を取り入れただけじゃない‥‥」
「フフン、ちょっとそれにのせられてあげるだけじゃない

ふざけてた彼の口調がフッと変わる。
頭を私の肩に乗せかけて低い声で言葉をつづけるカンクロウ。
「頭ん中のつくりものじゃない、本物のお前を、ここで抱きたい」
体の芯を熱いものがきゅ〜んと駆け抜けた。
そんな告白みたいな台詞いわれちゃ、どきどきしちゃうよ‥‥
ひょいっと抱きかかえられてベッドの上。
こ、ここにいつも、カンウロウが寝てんだと思うと、なんか、恥ずかしいような照れくさいような‥‥
私の上に覆いかぶさって、ぎゅって、抱きしめられた。
「ここにひとりでいると、お前のこと考えてばっかじゃん‥‥やっと、連れて来れた‥‥」
どう答えていいかわかんない。
私も胸いっぱいになりながら、カンクロウをぎゅって抱き返す。

ややあって、顔をあげて、唇を重ねてくる。
ゆっくりゆっくり、何度も何度も軽いキスを続けて、だんだんと私の唇を開いて舌を滑り込ませてくる。
丁寧に、丁寧に、舌を絡めて角度をかえながらキスを続ける。
ああ、体中の力が抜けて行く‥‥
カンクロウの手が髪を手櫛し、そのまま首筋を通って胸元へ来る。
上着の上から胸をまさぐり、やさしく愛撫する‥‥
口が離れたかと思うと、右耳に息を吹きかけながら甘噛み‥‥
ああ、もうだめ、どうしたって声がもれちゃう、わたしの一番弱いとこついてきたんだもん。
胸元から手が離れたかと思うとスカートのすそがまくれ上がり、膝裏へカンウロウの指を感じる。
「ん‥‥」
「思った通りじゃん、やっぱりここもヨワイな‥‥」
かすれた声が耳に聞こえる、もうクラクラする。
「いっぱい感じさせてやるよ、おれでなきゃだめだって体に覚えさせてやる‥‥」
内股へ指が滑り出す。
「ど、どうしたの、なんか変、そんなこと言うなんて」
喘ぎながら聞く。
「ふん、なんでもねえよ」
「うそつかないでよ」
「‥‥お前が,他の奴と寝てる夢みた‥‥」
えええええっ、冗談でしょっ
「俺の今までの人生で最悪の夢じゃん」
吐いて捨てるように言うカンクロウ。
そ、それはそうかもね、って、そんなありえない夢のせいで私は今、カンクロウにくみしかれてるの?
この早い展開はそのせいなの?!
「ぜってーさせねえじゃん」
「してないし、しないって!」
「‥‥わかってるけどな」

急にベッドからカンクロウが上体を起こして、真面目な顔で私を見る。
「‥‥何?」
じれったくなって私から聞く。
「‥‥あのさ、脱いでくんない?」
「は?」
「その、のヌード、見たいんだよ」
「‥‥見た事、あるじゃない‥‥何を今更‥‥」
「だから、俺が脱がせるんじゃなくて、お前から脱いでほしいんじゃん」

どう返事すりゃいいんだろう。
ええっ、私が、自分で脱ぐの??
そりゃね、カンクロウとはもう、こういう仲だから裸見られてどうのこうのってわけじゃないんだけど、
こんなふうに面と向かって脱いでくれって頼まれるのは初めてで、どうしたらいいのか混乱する。
自分で、ってとこが、どうも大事らしい‥‥
まあ、正直なとこ、いつも彼が脱がせてるっぽいのは確かだけども‥‥
こう、相手が正面で見てる前で、脱いでと言われても‥‥‥
躊躇してる間もカンクロウの視線はたじろがない。
じっと私を見つめてる。
ど、どうしよ‥‥
脱がなかったら、疑われちゃう?!
そんなことないとは思うけど、でも、なんかがっかりさせちゃうよね?!
まあ、期待させるほどのシロモノでないことは、もう、彼だって分ってるはずだけども、
今はそんな事はどうでもよくって、ただ、私が自分から、ってのがポイントなのよね?!
頭がパニックになって、蛇に睨まれたカエルみたいに、うごけないまま、
情けない顔でカンクロウを見つめ返す。
きっとすごく困った顔してるよ、私。

「‥‥やっぱ、難しいよな」
「‥‥う、うん‥‥」
その、こんな風にあらたまられるとね‥‥
が。
「じゃ、俺が先に脱ぐじゃん」
ええっ、ちょっと、そうじゃないって、って‥‥

止める間もなくカンクロウは、あっという間に服を脱いでしまった。
がっしりとした、均整の取れた引き締まった体。
目のやり場に困るとか思いつつ、目が離せない。
逞しくて、彼の心そのままの、荒削りで大きな体。

「これでいいだろ、俺も裸なら恥ずかしくないじゃん」

じっと私を見るカンクロウの瞳は真剣そのもの、笑ってごまかすことなんて出来やしない。

「さあ、、脱いでくれよ」
「‥‥分った‥‥後ろ向いて‥‥いい?」
「‥‥いいよ」

背中を向けて、緊張で震える指先でボタンを外して上着を脱ぎ、スカートのファスナーを下げる。
背中に手を回してブラのホックを外し‥‥ショーツを足から取った。
もう恥ずかしいのを通り越して、なんか怖くなってる。
別に見知らぬ人の前でストリップやってんじゃないだけどね‥‥
黙ったままだったカンクロウの声が聞こえた。

「‥‥、こっち向いて」

静かな、でも有無を言わさない声。
目をぎゅっととじたまま、覚悟をきめて後ろを向く。
つい、手で前をかくす。

「俺じゃん、、目、開けてくれよ。
手も、どけて」

そうくると思ったよ‥‥
ええい、どうとでもなれ!

真っ赤になったまま、目をあけて、手を下ろす。
カンクロウのまっすぐな瞳が私の目を射る。
息ができない。
心臓がバクバクいってる。
永遠にも思える時間が流れて、でも実際はほんの数秒だっただろう。
ふっと空気が和らいで、カンクロウがぎゅっと私を抱き締めた。

「ありがとな、

黙って頷きながら、なぜか泣きたいような気持ちに襲われる。
なんか、内側からむき出しにされたような、心細い気持ちがして。
カンクロウ相手なんだから別にいいじゃない、と思うけど、やっぱ、私にはかなりの難問。
好きな相手でもこうまで自分をさらけ出すのは、やっぱり難しい。

「ごめんな、がこういうの苦手なのはよく分ってたんだけど‥‥
いつも、俺が、だろ。
たまには、はっきりお前の意思を示してほしかったんじゃん。
‥‥俺だって、いつもそう確信持ってるってわけじゃないからさ」

一言一言が心にしみいる。
ごめんね、カンクロウ、不器用なカノジョでさ。
もっと積極的にカンクロウが好きって、意思表示できたらいいんだけど、しなきゃなんだけど。
つい甘えちゃって。
‥‥でも、自信もっていいよ、カンクロウ。
こんなこと、カンクロウ相手じゃなきゃ絶対にしないし、できないもん。

しばらく、じっと裸のまま何もしないで抱き合う。
カンクロウの体の重みが感じられてなんだかすごく安心する。
私の事を、外からも中からもまるごと分ってくれてる感じで。
変に飾る必要なく、素のままの私を受け入れてくれてるんだって。

しばらくしてカンクロウが、またいたずら小僧みたいな目で私を見る。
「でも脱いでもらうのっていいな、女の服っていろいろ面倒だからな。
ファスナーが後ろだと思ったら横だったり、ボタンが飾りだったりな、トラップだらけじゃん。
そうそう、ヌードにチョーカー、ぐっときたぜ、俺の女ってかんじでさ。
また頼むじゃん」
ちょっと、さっきと言う事が違ってるんですがね?!
「今のでさ、俺以外だめだって思っただろ、狙い通りじゃん」
前言撤回、計画犯め!
「安心したぜ、逆夢決定」
まったく‥‥

でも、なんか、カンクロウがたかが夢見が悪かっただけでそんなに不安になるなんて、なんか新発見。
ふてぶてしくって人の言う事なんて気にしないようなイメージがあるだけに。
意外にかわいいとこあるじゃん。
「なんだよ、、何にやけてんだよ」
「え、別に‥‥」
「嘘つけ、なんかやらしい事考えてんだろ」
「違うよ、もう!カンクロウがでっかくて、頼りがいあって、あったかくってその‥‥」
「なんだよ」
「‥‥ふとんみたいだな、って‥‥」
「ふとん〜っ?!?」
「いいじゃない、ほめてんだよ、くるまれてると気持ちいいなってさ」
「ほめてんの、フ〜ン」
「そう、ほめてんの!そう聞こえないけどさ‥‥」
の表現はなんともいえねえな。
んじゃ、お前は枕だな」
「まくら〜っ?!?」
「ほれ、ちっこくて、ふわふわしてて、ひんやりしてて、だっこしてたくなるんじゃん」
枕ねえ‥‥
「ほれ、枕だから、こんなことしてもいいなあ」
急に胸に顔を埋めて、犬がやるみたいにごそごそしてきたっ!
「きゃはは、髪の毛がこそばいよ!」

「な、はどんな風にしてほしい?」
突然聞かれて戸惑う。
「聞かなきゃわかんねえことだってあるだろ?
正直に吐けよ、ちゃんと努力するじゃん?」
「ええっと‥‥」
「ま、いいや、いわねえなら今回は勝手にいくぜ」
せっかちなカンクロウがまた、攻撃を始めた。
やだ、足の指の間とか、そんなとこ、さわったことないじゃない‥‥
体をくねらせて逃げる。
「やばいとこいっぱいあんなあ、お前。
開発しがいあるじゃん」
も、もうっ、恥ずいから、やめてよ。
がしっと肩をつかんで、私の目をまっすぐ見つめて言い放つ。
「やだね、俺しか知らないを開発すんだからな。
他の野郎じゃあだめだって、今度は体に覚えさせてやるんじゃん」
さっきとはうって違った荒々しさ、息もできないような激しいディープキス。
‥‥まだ疑ってんのかな、カンクロウに充分夢中なんだけどなあ。
と、心中を見透かしたみたいに、キスを終えたカンクロウが言う。
「お前が俺のこと,好きなのはわかってる。
でも、頭で好きなだけじゃだめなんだよ、俺じゃなきゃだめな理由を体に刻み込んどきたいんじゃん」
き、きざみこむ、んですか///
だからって、あん、へんなとこ触んないでよ、もうっ。
「‥‥きれいだぜ、もっとやらしい声だせよ‥‥」
な、もちっとロマンチックないいかたしてよ、それじゃ変態じゃない‥‥
「そんなこと思ってねえよ、が感じてるとこみるとスンゲ〜嬉しいんじゃん。
他の奴には見せねえ俺だけが知ってる姿だからな」
やだなあ、なんか自分がすんごい淫乱みたい。
耳元でささやくような声で言うカンクロウ。
「やっと連れて来たんだ、俺だけが知ってるかわいいになってもらうぜ」

今日のカンクロウは、なんかちょっといつもとは違う。
‥‥自信満々に見えても不安になる事もあるんだ。
あんな何でもお見通しって感じの目をしてるくせに。
なんだか、そんなカンクロウがちょっぴりかわいく思えた。
やる事は相変わらず『ど』のつくスケベで、好奇心の固まりで、まったくもって
歩く18禁男って感じだけど!!

「じゃな」
送ってもらって(あそこからじゃ一人で帰りたくても帰れない‥‥)家の近くで別れのキス。
普通なら路上で?って躊躇するんだけど、あんなことの後だとこんなの可愛い、可愛い///。
「気をつけてね、カンクロウ」
「ああ」
今日は珍しく歩いて行く彼。
遠ざかって行くその後ろ姿を見送ってたら、ちょっと切なくなった。
あのでかい屋敷で、あの部屋で一人で寝転んでる姿が頭に浮かぶ。
もっと一緒にいられたらな、となんか目頭が熱くなる。

「あら〜、泣いてくれるの」
え‥‥
「分身の術、じゃん、ちょっとどんな風に効果があったか見たくってさ」
「こ、この、嘘つき!はったり男!バカバカバカ〜ッ!!」
ばんばん叩いてもへとも思ってないな!
ニタニタ嬉しそうに笑いやがって!
と。
何よ、何よ、何よっ!
また、メヂカラ大作戦ですかっ!!!
その三白眼は違反だっ!
その緑の瞳はまちがいなくルール違反よっ!
乙女心を弄びやがって!!
私は負け犬決定よ、その憎ったらしくも魅力的なエメラルドが鎮座してる限りね、悔しいっ!!

ぐいっ。
襟元がひっぱられて、カンクロウがボタンを一個とめた。
何?
「1個しか開けなくていい。
俺といる時だけは2個、もしくはそれ以上外してもいいけどな」
ちょっと赤くなって空咳を一つ。
「あばよ」
シュッ
瞬く間に私一人取り残された。
ニタ〜ッ
緩む頬。
何よ、何よ、何よ!
可愛いじゃん!
いつもわたしばっかりいいように扱われてる気がしてたけど、実は私も捨てたもんじゃないのね。
知らないで、あのカンクロウを翻弄しているのだわ!
そんな風に思ったらちょっと嬉しくなっちゃった。

*閉じてお戻りください*

蛇足的後書:カンクロウ誕生月お祝い第2弾裏バージョンです〜。
かなり久しぶりの裏で甘い事この上ないのですが、まあ、いいじゃん(^^;)。
こんな風に攻めでありながら可愛いカンクロウにべた惚れされたい、という管理人の願望丸出しですね。
ま、ドリだから!!