帰還


あれから1か月以上たったけど、彼からはなんの音沙汰もなかった。
一般人の私には、任務がどういったものかなんて皆目わからないし、尋ねもしなかったんだけど。
今回ばかりはちょっとでも情報をもらっとけばよかったと、後悔したけどあとのまつり。
無事を信じて待つしかないらしい。

寝苦しい夜。
やな夢ばっかりみて、普段なら惰眠が趣味みたいな私なんだけど、ここのところ不眠症気味ですらある。
それでも眠っていたようで、ふっと何か気配を感じて眼を覚ました。
ま、枕元に、だ、誰か、な、何かいるっ!
こわばる体にむちうって、枕元へと視線をもっていく‥‥
黒っぽいかげ‥‥
やだ〜、うそでしょ〜、あたし霊感ゼロだってのに‥‥
え、でも、この影は‥‥カ、カンクロウ!!!!

「カンクロウ!」
がばっと起き上がって、枕元を見たら、‥‥誰もいない。
‥‥ただの、夢よね。
枕元に立つ、とかいうのナシ!
絶対、帰ってくるって、約束なんだから!!!!
‥‥‥‥
うっ、くそ、また涙のヤローが出てきやがった、もう、やめてよっ、なんでこんなにナミダってヤツは備蓄量があんのかしら。
それとも、こんなに泣き虫なのは私だけなのかな‥‥

突然
「ばあ!」
「きゃあああああああーっ」
って、カンクロウじゃない!!!
こんのヤロー、だましたな!!!
爆笑してるカンクロウ。
ちょっと、ひどいじゃない、本気で心配したのにっ!!!
ばしばしパンチするけど、歯が立つわけもなく、軽く手で受けられてる、んもう〜、コイツ!!!
うわっ、手をぐいってひっぱられてカンクロウの腕の中。
「‥‥心配したんだからっ‥‥‥よかった、無事で‥‥‥おかえりなさい」
「ただいま。‥‥‥悪かったな、驚かせちまってさ。
ほんとは顔見たらすぐ帰ろうと思ってたんじゃん、でも が起きちまったから、つい遊んじゃってよ‥‥」
なんなのよ、あたしは、おもちゃか。
「そう、おもちゃ、オトナの」
え‥‥やだっもう、バカーッ
「カンクロウ様専用の」
ボボボボボッ
「ひゃ〜はっ、はっ、はっ、はっ、あいかわらずノリいいじゃん、か〜わい〜な〜、 ってさ」
抗議しようと、口を開きかけたら、すばやく塞がれちゃった。
うわお、1か月ぶりのキスはかなり激しいですよ‥‥‥
でかい両手で私の頬をしっかり挟んで、不在の日々を埋めるかのように角度をかえて、何度も何度も、侵入してくる。
私のことをむさぼり尽くすかのように。
ああ、この感触、本物だ、幽霊じゃないよ、これがお化けだったらサギだわ‥‥
珍しく私の方からも手を回してカンクロウの首をかき抱く。
よかった‥‥よかったぁ‥‥ちゃんと脈拍もある‥‥

ずいぶん長い間ひっついてたような気がした。
ようやく口が離れたら、開口一番カンクロウいわく
「悪い、任務から直接きたからキッタナイんだった、おれ。
げ、汚しちまったかも。おまけにケモノ臭え〜」
確かに薄暗がりでもわかるくらいに汚れてる。
わたしのパジャマにも泥がついてるし。
んでもって男臭い‥‥顔もちょっとちくちくするな‥‥
でもそんなこと、どうでもいいわ、帰ってきてくれたんだもん。
「シャワーあびなよ、カンクロウ。
どうせ、親は法事でいないもん。」
「なんでお前は行かなかったんだよ」
「だって‥‥カンクロウが帰ってくるかもしれないじゃない。
来てくれたのにいなかったら、次いつ会えるか、わかんないし」
ニヤニヤしてるカンクロウだけど、なんとなく笑顔がよれてる感じ。
やっぱり長期任務でかなり疲れてるのは、いくら私がぼーっとしててもわかる。
反応の鈍い彼をむりやり脱衣所に引っ張っていって、押し込んだ。
「今度は私がなんか、作ったげるからさ、ゆっくり、おふろはいりなよ、ね?」
「‥‥悪いじゃん。さんきゅ〜」

よっしゃ〜、今日は汚名挽回だっ!
実はこの日にそなえて、ハンバーグを作って冷凍しといたんだvvvv
あとはサラダとお味噌汁でもつくれば万全よ、うしししし。
手際良くいったのでごきげん。
にしても、カンクロウ、大丈夫かな。
いつになくテンション高いかと思ったら、なんか疲れてるっぽいし、ちょっと様子見てみよっかな‥‥

「カ〜ンちゃ〜ん」
脱衣所からお風呂場にむかって、声をかけてみたけど、反応ナシ。
「ねえ〜、ねちゃったの?」
し〜ん。
「入っちゃうぞ」
こういうこと言うと、結構変にあせった反応返してくること多いんだけど、今日は全然。
寝ちゃったんだ、きっと‥‥
そ〜っと戸を開けてのぞいてみる。
やっぱり。
湯船に腕かけたまま、眼閉じてる。
うわ、すごいあざできてる、みみずばれもあるしザックリ生々しい傷跡も。
なにこれ、満身創痍だよ〜。
1か月前はなにもなかったよね、確か‥‥。
いつも私の前ではふざけたことばっか言ってるけど、危ない橋渡ってるんだわ、カンクロウってば‥‥
う、また眼が曇ってきた、今日は再会の喜びでいつも以上に涙腺が弱いみたい。
もうちょっとだけ、寝かせてあげよ、まあ、あんまり長湯して湯当たりしちゃまずいから、もう少しだけ、ね。

そっと出ていこうと背中向けたとたん、
「な〜んだ、襲ってくんないんじゃ〜ん」
こ、このヤロー、狸寝入りかよっ!!!!
「もう、カンクローのうそ吐き野郎‥‥うわあ〜っ」
くるっとむきをかえた拍子に濡れた床で足がすべって、思いっきりこけた‥‥
と思ったら、カンクロウの腕の中。
「あぶないじゃん、気をつけろよ」
「う、うん、ごめん‥‥」
って、なんか、抱きしめられてる体勢なんだけど‥‥
え、ちょっと、さっきより力はいってるじゃない、うわ、首筋に息吹きかけてきたよ、この知能犯め、あたしがそこ弱いこと知っててやってるわね、あん‥‥
「‥‥帰ってきたぞ‥‥約束守ったじゃん、だから、‥‥ も守れよな‥‥」
え、え、約束って、つまり、一晩つきあえとかいう、アレですか‥‥
「‥‥1か月は長かったじゃん‥‥」

まさに濡れ場、よ、これ。
寝間着のまま浴槽に引きずり込まれて、いいように愛撫されまくって、あちこちキスの雨。
ただでさえ息苦しい浴室なのに、もう酸欠状態。
濡れた服が絡み付いてきて思うように動けない私。
パジャマから透けて見える下着がよけいそそるみたいで、なかなか解放してくれない〜。
って、私も相当声出しちゃってて、あん、‥‥あ、あおってるよね、絶対‥‥
「いてっ」
あ〜あ、やっぱり、カンクロウだってあちこち怪我してんのに無理しちゃって‥‥
「何言ってるんだよ、こんなおいしい光景を前に手も出さないなんて、男がすたるじゃん」
そう言う問題かい、まずけがの手当ぐらいしたって‥‥
「こんなもん、なめときゃ直るじゃん、それよかこっちこいよ‥‥」
な〜んか、いつにもましてスケベ心ありありのカンクロウ。
うす緑の眼がキラキラしてるよ、ったく。
うわっ、いきなり上着、頭から脱がされて、え、腕ぬけてないよ、ちょっと、なにしてんのよっ。
「ん〜、いいねえ、濡れそぼる ちゃんを縛っちゃったじゃん」
何いってんのよっ、AV見すぎじゃないのっ。
「あんなもん、ニセモノじゃん、おれは本物志向。」
ちょっと〜、それって、良くないじゃない、全然!!!
「まあ、まあ、別に危害は加えないから付き合えよ」
ああ、やっぱりコイツは変態だぁ〜
「何言ってんだよ、お前には遊び心っつーもんが不足してるじゃん、
なんで、そ、そういうことになるワケェ?
「しゃべってるとギャグにしかなんねえな、ちょっと黙れよ」
や、うそ、手ぬぐいで、さ、さるぐつわ?や、やだ〜っ
カ、カンクロウ的には遊びなんだろうけど、やだ、こんなの、やめてよーっ、いやだーっ‥‥
え‥‥なんか目の前が暗くなって‥‥体がななめむいてるような‥‥立ちくらみかな‥‥
なんか、カンクロウが慌ててる姿が遠くにみえるよ‥‥
そのまま、私はどうも意識を失ってしまったらしい。

っ!!しっかりしろよ!!おい!!」
あれ?ここ、どこ?カンクロウがいる〜、そっか、戻ってきたんだっけ?
で、あたしはなんで、寝っころがってるのかな‥‥?
え〜と‥‥や、やだ、思い出した、カンクロウが急にAV遊びはじめて、それから‥‥
「おい、気が付いたのか?
はあ〜、もう、びっくりさせんなよ、急にぶったおれるからびっくりしたじゃんか」
上から私を覗き込みながら、珍しくちょっと心配そうな顔のカンクロウ。
ご、ごめん、でも、カンクロウがいきなり、変なこと始めるからよ‥‥
「わりい、つい悪ノリしちまって‥‥。
多分貧血だな、お前。
そういや、行く前よりだいぶ痩せたんじゃないのかよ。」
え〜、まあ、あんまり食欲もなかったし、暑かったし、(カンクロウいないし)‥‥
「そんなに、俺と会えなくて悲しかったのかよ‥‥感激じゃん」
くそっ、うぬぼれやめ。
で、あれ、ここベッドの上じゃない、うわっ、やだっ、あたし何も着てないっ!
おもわずシーツをひったくるようにたぐり寄せる。
「あったり前じゃん、べちゃべちゃのパジャマ着せとくわけにいかないじゃん」
そ、そりゃそうだけど、前回は着替えさせてくれたじゃない‥‥
「あの時はあの時、今回とは事情が違うじゃん」
って、また、のっかってくるう〜
「‥‥いやか‥‥」
いや、そうじゃなくって、あの、ちょっと、要するに、恥ずかしいのよ、ソレばっかりみたいで‥‥
「なんだ、やじゃないのか、ならいいじゃん」
ちょっと、ヒトの話聞いてんの?!
「うっさいな、好き=抱く、なんじゃん、オレにはよ!!」
んぐ、は、激しい、むしゃぶりつくようなキスに圧倒されて、ついでに押し倒されてる‥‥
内側から浸食されていくような、とどまることを知らないディープキス。
ああ、でも、本当に本物のカンクロウだあ‥‥
きょうはやられっぱなしの受け身じゃなくて、私も意思表示しようって決めてたんだ、この1か月の間に。
そっと、カンクロウの背中に手をはわせて、なでる。
非常に地味〜な愛情表現でべたすぎる気もするけど、しょうがないじゃない、私じゃこの程度よ。

それでもカンクロウは気が付いてくれて、薄緑の瞳で私をじっとみて、ニッと目尻を下げた。
「今日は をイカせてやるじゃん」
ボカン、大赤面!!
この妙な自信はどこから来るのかしら、オトコって、わかんない〜。
あ、ああん、や‥だ‥、前回研究済みって感じで、私の弱いとこすぐついてきたあ、‥‥
首筋とか、耳とか、乳首だとかをカンクロウの舌が這い回る。
うわ、こ、これだけでも、も、もう、なんか、体がふっ飛んでる感じだけど‥‥
あり、カンクロウがいない?
と思ったら、後ろにまわってる、きゃあ、後ろから手が攻めて来るっ。
首筋から、脇腹から、ちょっ、ちょっと、太ももとか、さ、さわんないで、きゃあっ‥‥
がっしりした腕に抱き込まれて、愛撫の雨。
「もっと、声だして、きかせてくれよ‥‥」
かすれた、ぞわっと耳にからまりつくようなカンクロウの声。
耳元を口と舌で刺激してくる、あ、あたしソコ弱いのにっ。
さ、さっき貧血でぶっ倒れた半病人相手にすることかっ、‥‥
「たまんないじゃん、 って、感度サイコー!!!」
やっぱり、カンクロウ、だいぶ切れてるよ、うっ、うあ、‥‥
ぐるっと引っくり返されて馬乗りにされる。
「‥‥いくぞ‥‥」
ぐいっ、とカンクロウが入ってくる。
うぐっ、まだ、やっぱりちょっと痛いけど、前よかましだわ。
やっぱり、この動きはなんか不思議な感じ‥‥
と、ウエストを掴まれた状態で素早くカンクロウが態勢をかえた。
おっと、え、アタシが上になんの、うわっ、下から突き上げてくるっ、
い、あれ、痛くないや、おわ、なんか今ぞわっときた、ふう、わっ、また‥‥
「こっちの方がいいみたいだな、おれもイっちゃう をよく見たいから、こっちのがいいじゃん」
とかなんとか、言いながら、下から攻めてくるカンクロウ。
やめ、て、よ‥‥ああ、ふうっ、なに、この感覚、波みたいに来ては去り、また襲ってくるような、
う、また、きゃあ、ゆ、揺らさないで、カンクローッ、めちゃくちゃ感じちゃう、ひっ
あん、下から胸掴んでくるなっ、‥‥あっ、また、突き上げられると、‥‥
か、体がかってにそっちゃう、何コレ、理性でおさえらんないよ、う、うああ‥‥

頭が真っ白になって、足下から押し寄せてくるおおきな渦に飲み込まれて、どこか高いところへふっ飛ばされた。
体中ばらばらになったみたいで、力が入んない。
支えてくれるカンクロウにしなだれかかる。
彼の手が触れる度、びくっびくっと、勝手に体がけいれんするみたいに反応する。
うつろな眼でカンクロウを見遣ると‥‥
あら、さぞかしスケベな顔してるだろうと思ったら、なんか、やっさし〜い表情でわたしのこと見てる。
なんで?なんでそんな、優しい眼で見てるの?
うれしいけど、超恥ずいんです‥‥
こんな乱れまくりのとこ、見られてさ、さかってるのはアタシじゃない‥‥
眼を閉じたらなんか涙がでてきた、またかい、もう‥‥

「きれいじゃん、 ‥‥」
え、うそでしょ、どこがよ‥‥
「お前は頭でっかちでさ、いつも、押さえてばっかりで、こうでもしなきゃ曝け出してくんないだろ。
‥‥覚えとけよ、おれだけじゃん、素のお前知ってるのはよ。」
うわあ、これって、すごい愛の告白っぽくない?
コイツはけっこうこういうキザな台詞吐くの平気なんだよね、本当に私と正反対。
‥‥腹立つ事も平気で言うけどさ。
私ときたら、このお言葉に胸一杯になりつつ、見つめ返すぐらいしかできない。
ぼさぼさのつったった髪の毛、薄緑のちょと薄情な瞳、がんこそうな高い鼻、いつもすこし歪んだ唇。
逞しい肩に、力強くて、繊細で‥‥いぢわるな手。
あ〜あ、私ってば完全にこの男に参ってるんだわ。
それが相手にバレバレなのも、くやしいような、うれしいような‥‥
ため息をついて、カンクロウの胸に火照った顔を埋める。

しっかし、体がいうこときかない、もうノビノビのTシャツみたくでれ〜っとたるんじゃってて、タコみたい。
カンクロウが私の様子見ていながら、言う。
「‥‥もう1ラウンドやんない?」
ちょっ、ちょっと、それは、無理と言うものですよ、お兄さん!
こんな状態で、はっきしいって、腰もたたないのに、できるわけないじゃない!
「ふ〜ん、残念じゃん。
まあもうちょっと待ったら回復するかも、な」
いつしてたのかわかんない、先っぽを結んだコンドームをくるくるふりまわしながら言う。
こういうとこ、ちゃんとしてるのは偉いよね‥‥あんまし、ロマンチックな眺めではないですが‥‥。
それにしても、なんでそんなもの、持ってんのよ‥‥
任務帰りなんでしょうが‥‥
「備えあれば憂いナシ、どうせ んとこに来るつもりだったからな。」
ああ、あんたたち、回復力抜群の忍びの方々と凡人のワタシを一緒にしないで下さい〜。
そんな傷だらけでもデキちゃうあなたとは違うのですよ〜。

ぐ〜。
あ、カンクロウだ。
「ああ、腹減った‥‥。」
ご飯つくってあるから、食べなよ、すぐあっためるから。
立とうと思ったものの、え、本当に腰が抜けてて立てない〜、うそみたい。
ふにゃふにゃのわたしを見てカンクロウがニヤニヤ笑う。
「本当に腰抜けたみたいじゃん。
ま、俺がやるから、お姫さまは座ってな」
下までお姫さまだっこで移動して、椅子にすわらされたまんま。
ちぇっ、今日はいいとこみせようと思ったのになあ。
でも、手際いいな、カンクロウ。
こういうのも、いいかもね。
あれ?なんで、あたしの分まであるの?
「お前も食えよ、そんなふらふらじゃ俺の相手できねえじゃん。
貧血をばかにするとこわいんだぞ〜、ホレ」
何か、釈然としないけど、ま、いいか。
「うまいな、サンキュー、 。」
えへへ、どういたしましてvvv
「‥‥お前も、おいしいって、知ってた?」
上目遣いでこっちの反応を楽しみながら切り込んでくる。
カーッ、油断大敵、もう、ヒトのことからかうのが生き甲斐ね、コイツ!!!
「デザートは、決まりじゃん。
一か月ぶりなんだから、フルコースでいくぞ」
ああ、さっきの話し合い(?)はなんだったんだろうか‥‥

安易にカンクロウと約束してはいけないという教訓を身を以て知った であった。

*閉じてお戻りください*

蛇足的後書:あ〜あ、いいのかね、このようなシロモノを。
ま、現実はこんなにうまく行きません(何がだよ)が、ドリームですから。