*しょうぶアリ*

 

我愛羅が風呂に入ろうと思ったらまたカンクロウだ。
なぜか彼は風呂が長い、戦闘では速攻でケリをつけたがるくせに。

「おい、まだか、カンクロウ!」
「あ〜、我愛羅か?なんだよ、一緒にはいればいいじゃん」

カンクロウは冗談のつもりだった。
が、今日に限ってがらっと音をたてる引き戸。

「じゃあ遠慮なく」
「え、え、え、マジかよ、ま、いいけどさ」

ぽいぽいぽいっ
湯船につかっているカンクロウの頭に何かふって来た。

「おいおい、何放り込んでんだよ?」
「ショウブに決まってる、5月5日だ」
「‥‥バキみてえ、ジジむさい‥‥」
「何か言ったか」
「別に‥‥」

カンクロウの前に仁王立ちの我愛羅。

「カンクロウ」
「な、なんだよ」
「上がれ、背中流してやる」
「‥‥マジかよ、絶対熱じゃん‥‥」
「カンクロウ!」
「わ、わかったよ」

ごしごしごし

どうも落ち着かない。

ま、しかし、これも兄弟間のコミュニケーションと思えば。

「我愛羅、今度は俺が流してやるじゃん」
「‥‥そうか、なら頼む」

久しぶりにみた弟の背中は思ったより大きくなったような。
しかしこの背中に風影としての重責が全てかかっていると思うといかにも小さい。

「どうした、カンクロウ」
「な、なんでもねえよ」

感傷を振り払うように勢いよく湯をかける。

ざばあっ

とたんにざざざざ〜っとくずれる我愛羅。
砂分身である。

「我愛羅!!」

さっきメランコリックになった反動で怒り心頭のカンクロウが飛び出て来た。

「何だ、終わったなら俺がはいるぞ」

あっさりカンクロウをスルーして我愛羅は風呂へ消えた。