*よろずや暁*
メンバーが揃えばできない事はまずない彼ら。
  なんせ世界征服には金がかかる。
  ということではじめたのがよろずや家業。
  本誌からお呼びのかからないひまなメンバーも増えたこともあり(失礼)
  なかなか盛況のようだ。
夏場の打ち上げ花火にはもっぱらデイデラ、
  秋の収穫の肉体作業には鎌を扱い慣れた飛段、
  そしてこれから2月の確定申告にむけては会計係の角都。
  引っ張りだこの人材が決まって来る。
おもしろくないのがサソリのだんな。
「なんだ、永遠に残る美にはお呼びがかからないのか。
  しょうがないな、じゃあ医療行為ならまかせとけ。
  皮膚をひっぺがして臓物引きずり出して・・・」
  『ダンナハ、カラダニキョウミガアッテモ、
  ナオスキガナイカラナ』
  「そうそう、殺されちゃうよ」
  『ソウジナラ、イマノジキヨロコバレルゾ』
  「そうだよ、あの義手千本とかいいんじゃない」
まだ退場になってもいないくせに野次馬のゼツにからかわれる。
  しかしそんなことでめげていては傀儡はつとまらない(のかどうかは知らないが)。
「やかましい!掃除なんかするもんか、ホコリが関節に入るだろうが。
  見てろ、傀儡が役に立つってことをわからせてやる」
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北風吹きすさぶ冬枯れの街を行くデイと飛段、珍しい組み合わせではある。
「あんなこと言ってたけど、だんなどうしたんだろ」
  「知るかよ、飯でも食お〜ぜ、あ、カネ忘れた」
  「やっぱアンタあほだな、角都なしじゃてんでだめだな、うん」
  「んだと〜っ?!フン、引き出せばいいんだろ、ほら、銀行だぜ」
  「強盗は無理だぜ、今日からATMだけだからな」
入るとえらい行列である。
  しかもみんな暁コートを着ているではないか。
「な、なんだよ、こりゃあ?」
彼らを一斉に振り返った顔は・・・みんな傀儡。
「・・・・」
「なんだ、お前らか。金引き出しに来たのか?
  早く出したいなら金出しな」
ものかげからサソリがのぞく。
「サソリのだんな、何やってんだよ?」
  デイダラが顔をひくつかせて聞く。
  「見りゃわかるだろ、順番取りに決まってる。
  クソ忙しい師走に人助けだ」
  「・・・・」
  「フン、傀儡ってのは実に役に立つぜ、とくに数がこれだけありゃな。
  百機操演するまでもないがな」
  「コレクションは質じゃなかったのかよ、ええ?」
  つっこむ飛段。
  「うるせーな、世の中日進月歩だ、
  昨日の友は今日の敵、朝令暮改を恐れて進歩はねえ!
  おい、金払うのか、払わねえなら最後尾に並びな」
  「冗談じゃねえよ、よそ行こうぜ、デイダラちゃん」
  「無駄だ、俺の傀儡の数しってんだろ。
  この近辺は全部おさえた」
  「・・・払えばいいんだろ、払えば!」
げんなりした顔で銀行を出てきた2人。
  「お前相棒としてもうちっといい仕事紹介してやれよ」
  「人の言う事なんか聞くかよ、だんなが」
  「そりゃまあそうだがよ」
  「あ〜、そのうち遊園地とかにも出現するかもな」
  「・・・やめてくれ」
春には花見の場所取りの予定だそうな。
*閉じてお戻り下さい*