カンクロウは口がでかい。
ふてぶてしいという比喩上のことだけではなく、実寸が大きいのだ。
対極に、寡黙な弟我愛羅はのそれは無口なせいもあってか、
カンクロウのように横にどばっとは開くことはまずない。
昼飯時の台所。
机の上にはいなり寿司が用意されている。
もそもそ食べる背中はカンクロウ。
「おい、カンクロウ、まだ昼前だろうが」
「は、ああ、はあらは。いいはろ、はらへってんはから。
(は、ああ、我愛羅か。いいだろ、腹減ってんだから。)」
振り向いた兄の食べ方は豪快そのもの。
口に消えていくジャンボいなりは横向きだ。
「‥‥よくそんな風に口が開くな」
「お前もやってみればいいじゃん、簡単だぜ、ほれ」
「‥‥入らんぞ」
「もっと横にぐわっと開くんだよ」
「‥‥無理だ」
「なんだよ、風影様は上品だな」
いちいち風影様とか上品とか言うな、と内心むっとする我愛羅。
しかし兄がやれて自分がやれないというのはしゃくにさわる。
「おい、カンクロウ、見ろ」
ぱくっ
我愛羅はいなり寿司を縦向きに口に突っ込んだ。
「え”‥‥‥」
ぎょっとするカンクロウを尻目に我愛羅はもぐもぐ、ごくん、と飲み下す。
「要するにだ、同じ容量を口中に治めればいいんだろ。
上忍傀儡師カンクロウよ、見たか風影様の技」
我愛羅はいいたいことを言うとフン、と立ち去った。
奥深い技ではあった。