*隣のチョコ*

いつものことだがカンクロウは報告書の提出が異様におそい。
業を煮やした我愛羅は、ついに敵陣に自ら乗り込んだ。
あいにくカンクロウは部屋におらず、予想はしていたが芸術的に散らかった部屋に呆れる。
「‥‥まったく、傀儡はあれだけクソ丁寧に手入れするくせに。
目的の書類を見つけ出すのに何日かかるかわからんぞ」
とりあえずベーシックに机の上を探しながら独り言。

一見がらくたの山に見える机の一角に、なにやらいろどりも華やかな小山を発見。
最初は一体何かさっぱり分らなかったのだが、その山に隣接して甘いものの苦手な我愛羅が下取りに出した
バレンタインチョコの一回り大きな山があって正体がわかった。

「‥‥俺のもらったのとずいぶん違うな」

当然だろう、我愛羅には馴染みのないあまりにも庶民的なチョコの軍団。
チ○ルチョコに百均の麦チョコにウエハースチョコ、チョコフレ○クにパラソ○チョコに
ペロティにコアラの○ーチ、うま○棒チョコ味に○ッキーにアポ○チョコ、ハート○ョコに
サッカーボールチョコにコインチョコ、お徳用キッ○カットにキ○コの山にタケ○コの里に
なつかしのチョコbaby、etc‥‥‥
義理チョコ丸出しだ。

対する我愛羅からのお裾分け品はそうそうたるブランドモノばかり。
駄菓子の山に隣接すると一層違うオーラを放ち、本命の気合いとプライドが漂う。
しかし、甘いものが嫌いな我愛羅にしてみればチョコであることには変わりなく、
かえって兄のもらったチョコの見慣れぬ外見にばかり注意が行く。

「わりい、我愛羅、報告書だけどさ‥‥」
任務から戻ったカンクロウが報告書が遅れている言い訳をしに執務室に飛び込むと、
我愛羅がパラソルやコアラやきのこを並べて遊んでいる。
いや、本人はいたって真面目に眺め回しているのだろうが、はたからみればそうとしか見えない。

「な、何やってんだよ?」
「ノックぐらいしろといつも言ってるだろうが」
まずいところを見られた、と我愛羅は舌打ちをしつつ、体裁をとりつくろう。
「カンクロウ、書類提出の遅延の罰およびお前の部屋の卓上整理の代償としてこのチョコは没収だ」
「‥‥回りくどい言い方だな‥‥」
「しかし、貴重なバレンタインの報酬を全部なくすのも気の毒だ。
相応量の代替えを置いといたから安心しろ」
「つまり、物々交換ってことじゃん」
「‥‥そうとるならそうとっとけ」
「なんだよ、欲しいなら素直にそういえばわけてやるじゃん、お前がかわいいチョコ好きとは‥‥」
なんだか形勢がカンクロウに有利になりそうと悟った我愛羅は声にすごみを出す。
「さあ、俺は忙しいんだ、言い訳はいいからさっさと報告書を仕上げてもってこい。
ほら、行け!」

部屋からたたき出されたカンクロウ。
「フン、要するに隣のチョコは青いってことじゃん。
あんなお子様にはああいう手合いの方がふさわしいってことだな」
トンビでタカGET、と鼻歌をうたいながら部屋へ戻るカンクロウ。

しかし美麗な箱を開ける度に出てくるラブラブなお手紙やら口寄せの手紙だのに胸焼けを起こし、
(彼のものには普通ついていないから)
カンクロウが交換取り消しを申し込んだものの、
コアラを一列に並べた机越しに
「男に二言はない」
との男らしい一言で風影に却下されたそうな。

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