*シニヨン*

鏡の前に陣取る事数十分。
テマリは一向に動く気配がない。

「いつまでやってんだよ、あとがつかえてんだから早くしてくれ‥‥」
「うるさいな!すぐすむ」
「さっきもそう言って、もう20分以上経ってるじゃん。
デートに遅刻する‥‥」
「余計なお世話だよ!」

姉の様子を観察していたカンクロウは
彼女の不機嫌の理由がすぐにわかった。
髪がどうにもまとまらないのだ。
テマリの髪の毛は柔らかいとはいいがたい。
姉弟で母親譲りの柔い毛をしているのは唯一我愛羅だけ。
立たせてなんぼの今時ボーイズヘア実践中の
カンクロウは固くてもいいのだが、
いろいろおしゃれしたい女の子にはやはりそれは重大問題。

今流行の頭頂部でつくるシニヨン。
どうもテマリはそれを狙っている様だ。

「それって無理がありすぎじゃん」
「なんでさ」
「テマリの髪の質があのヘアスタイルには‥‥」
ハリセン一発。

無理と分ると尚更やりたくなるというもの。

通りすがりのバキが、また余計なことを言う。
「テマリ、はやりのベッカム流のモヒカンか」
それって何年前だよ、というテマリの冷たい視線に
一向に動じないのはさすが年の功か。

今度は我愛羅が通りかかる。
「‥‥なんだ、髪型を変える気なのか」
「みりゃわかるだろ」
イライラと返事するテマリ。
「‥‥頭頂部で一つにくくるだけにしたらいいのに」
「バカ、そんなことしたらツンツンつくし‥‥」
スリッパがカンクロウの頭に命中。
「‥‥木の葉の試験官とお揃いにしたいんじゃないのか」
我愛羅にも対のスリッパが飛んで来た。
「バカだね、誰があんな奴とペアになんかしたいんだよ!
私がしたいのはシニヨンだよ!」
「‥‥じゃあやっぱりペアじゃないか」
「「誰と??」」
「‥‥チヨバアと」
「「‥‥‥‥‥」」

「今日はやけに遅かったな」
「‥‥まあな、ちょっとしたトラブルだ」

木の葉の試験官と打ち合わせをするテマリのうしろ姿は
いつも通り、4つにくくったポニーテールだった。

 

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