*交渉*

「トビ、何度同じ事を言わせるんだ。
暁のマントはスナップ仕様と決まっている」

今ナルトワールドで人気沸騰中のマント。
その先鞭を付けた暁のマントだが、新入りのトビには不満らしい。

「だってね、俺は先輩達と違って前をはだけたり、裾めくったり、
遠山の金さんみたいに襟元から腕出したりしないんすよ。
前ぴっちり止めて着るんだもん、チャックがいいなあ〜」

ぐだぐだ文句を並べて交渉中だ。

「仕様を人によっていちいち変えていては資金繰りが厳しくなる」

「でもゼツさんのなんか、首まわり1メートル以上あるんじゃないんですか?
普通せいぜい50センチっスよ、あれが特注でなくてなんなんすか?」

「あれは例外だ、マントで窒息死させるわけにいかないだろうが」

「でもでも鬼鮫さんだってあ〜んな背の高い人が
つんつるてんになってないってことは、やっぱ、特注じゃないっスか!」

「鬼鮫は例外的に背が高いだけだ、ミニスカの暁は頂けない(特におっさんで)」

「でもでもでも、サソリさんなんかLLどころか
Oサイズもびっくりの超ビッグサイズだったじゃないっスか。
なんせ傀儡ごとマント着てたんだし、あれこそ特注でしょ?」

「ごちゃごちゃいうな、先輩は立てろ。
他の奴らはみな標準サイズだ」

「でもでもでもでもでも‥‥」

「いいか、トビ、ファスナーに落雷の危険もあるんだ」

「‥‥‥リーダー、無理がありすぎっすよ。
それに俺は木偶の坊(でくのぼう)っすから落雷の心配はないすよ」

「‥‥‥えらく自虐的だな。
まあいい、そこまでいうなら、セコハンだがファスナーのものをやろう」

「わ〜い♪」

よろこんだのもつかの間。

「・・・・・リーダー、お古って言ってもコレはないでしょ?!
上までチャックがあがらないどころか、ほとんど半開きっすよ!」

「仕方ない、前の持ち主の趣味だからな」

「っていうと‥‥飛段先輩っすか‥‥」

「まあ、そういうことだ。
扱いが乱暴だからファスナーは壊すわ、
皮膚を挟んで大騒ぎするわ・・・。
しょうがないからマジックテープ製に交換させた」

「‥‥‥挟まれてマゾの本懐だったんじゃないのかなあ」

「何か言ったか」

「な〜んにも。先輩は立てなきゃだめなんでしょ?
しょうがない、いまのままのマントでいいっすよ。
でも世界征服できたらボクのもファスナーにして下さいよ〜」

「ああ、世界征服のあかつきには、必ずそうすると約束しよう」

世界征服がまた一歩、遠のく予感。

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