*成長*
図書室で図鑑を開き、直々に我が子に他の里の生物について教える我愛羅。
  少女は乾燥の激しい砂隠れの里ではお目にかかれない多種多様な動植物に目を輝かせる。
「これなに?」
彼女が指差したのはナメクジとカタツムリ。
「それは、いわば陸にすむ貝だな」
  「ふ〜ん、ナメクジが大きくなったらお家を見つけてカタツムリになるの」
  
  子供らしい疑問に笑いそうになりながら訂正する。
  「同じ仲間だが、カタツムリはもともと貝殻をつけて生まれてくる。
  貝殻ごと成長するんだ」
  「そうなの、重くないのかなあ」
しばらくそのページを見つめていた少女は急に我愛羅を見て
  「ねえパパは、ずっとそのヒョウタン背負ってたの?」
いきなりの質問に面食らう。
  「ああ、そうだ」
  「小さな頃からずっと?」
  「ああ」
  「お砂がはいってるのよね。
  子供には、きっと、すごく重たかったでしょ」
  「・・・そうだな」
オレの背負う十字架ともいえるか。
「かわいそう、パパ・・・」
  少女の心配そうな顔にフッと表情を緩める。
  「心配するな、もう慣れた」
その微笑に少女もほっとした顔になり続ける。
  「そう・・・そうよね、段々大きくなったんだものね」
は?
「だって今説明してくれたじゃない。
  カタツムリは貝殻ごと大きくなるんだって」
「・・・カタツムリはな」
「カンクロウおじちゃんの背中の傀儡や、
  テマリおばちゃんの扇子もきっとそうなんだね」
いや、そうじゃないから。
我が子の誤解をどうフォローしたらいいのか分らないまま、
  固まった顔で彼女と図鑑を眺め続ける風影だった。
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