*参観日*

♪いいとこ見せよ♪
‥‥などという発想はカンクロウにはまるでないようだ。

教室の後ろにずらりと並んだ父兄の中に紛れ込んだ風影は、
いらいらと息子のやや丸め加減の背中をにらみつけていた。

木の葉アカデミーをヒントに
砂隠れでも質の一定した初等教育を、と始まった新しい試み。

「はい、では次の質問が分る人」
「は〜い」
「は〜い」

‥‥ええい、こんな簡単な質問になぜ手をあげん!

風影のただでさえ悪い目つきが一段と厳しくなる。
背後の殺気に肝心の息子は動じず、
その形相を正面から見ざるを得ない教官はびくびくし通しだ。

「では、ノートを取ります」
めいめい鉛筆を取り出し、帳面に板書を書き写して行く。
カンクロウは‥‥鉛筆回しでウォームアップののち、ようやく書き始める。
しかし、どうも書き損じが多いのか、消してばかりだ。
消して、消して、消して‥‥

いぶかる風影の方を振り向いたカンクロウの鼻の下には
練りケシ製の黒々とした立派なひげができていた。

「カンクロウ〜ッ!!!」

風影は自分の怒鳴り声で目が覚めた。

翌日の審議会で砂隠れアカデミーの案が
風影の一存で握りつぶされた本当の理由を知る者は、彼の枕以外なかった。

 

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