*夏の思い出*
夏になると忙しくなる業種がある。
  通称ドカタといわれる土木業だ。
  暁の肉体派スター、飛段はそういうわけで休む暇もない。
  夏休みの宅地造成工事に引っ張りだこ。
  そして意外なツーマンセルが組まれる。
  道具を使わせたら右に出る者はいないサソリだ。
「まったく、こう暑くちゃやってられねえよ」
  「そういうわりに嬉しそうだな、肌見せの大義名分ができるからか」
  「ヤな言い方するねー、暑けりゃ脱ぐのが普通だろォ。
  あんたが異常なんだよ、ホント」
  「傀儡に暑いも涼しいもないからな」
  「そりゃ結構なことだな、ヘッ。
  まあ脱いだってガキの裸だしな」
  「・・・・・・・・・・・」
陰険な会話のあとに仕事再開。
  が、どうも調子が狂う、やたら道具が飛段のところへ飛んでくるのだ。
「やめろ、ガキみたいに八つ当たりするのはよォ」
  「ガキだから仕方ないんだ」
  「・・・根に持つタイプだな、あんた」
  「死なないってことは忘れないってことだ」
  「おれも死なないクチだぜェ」
  「お前みたいに取れても縫い付けりゃいいザツな作りのものと、
  緻密で精巧な傀儡をいっしょにしてもらっては困る」
  「・・・・・・・・・・・・」
一勝一敗。
  さて。
「お~い、新入りども、スイカの差し入れだぞ~」
お約束通りがぶっと食いついてダイナミックに種を吐き出す飛段。
  それに対してあくまでもエレガントなサソリはどこから取り出したのか
  ナイフで器用に切り分け、種をあらかじめ弾き出して食べている。
「そんな食い方は邪道だな」
  「ジャシン教のジャの字か」
  「うるせーよ、なに上品ぶってんだ。
  スイカってのはこうやって食うもんだろうが!」
  「そうか、じゃあ見習おう」
サソリの仕込みマシンガン炸裂、ただしこめた弾はスイカの種。
  いつもの3段鎌ではなくつるはしではじき飛ばして応戦する飛段。
完成した邸宅の主は、なぜ庭にスイカが自生するのか首をひねることになるだろう。
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