『宿をたつとき、舌切り雀はおばあさんの前に大小のつづらを二つ並べました。
  「おばあさん、どちらかお好きな方をおみやげにお持ち下さい。
  ただし道の途中で絶対にあけてはなりません」
  「わかっとるわい」』
ここまで読んだ所で一息おく。
  バキは砂三姉弟に昔話をつかっての教育の真っ最中。
  こんな話だれでも知っている、と言うなかれ。
  早くに母親を亡くした彼ら、知識に思わぬ穴があるのだ。
「‥‥なんだ、この話は」
  案の定よくわからないといった顔の我愛羅。
  「どうせ正直者が得する話さ」
  ばっさり切って捨てるテマリはそろそろ反抗期。
  「夫婦なのに水くせえじゃん、じーさんがきっと戦利品をわけてやんなかったんだぜ」
  微妙な意見はカンクロウだ。
どうしてそういう感想なんだ、と舌打ちしながらも聞く。
  「このあとの展開、どう予想する」
「俺なら絶対でかい方だな、砂忍は背負うのが得意じゃん」
  話がどうもずれているカンクロウ。
  「だからカンクロウはバカなんだ、じーさんは小さい方で金持ちになったんだろ。
  でかい方はトラップに決まってる、小さいつづらをもらうべきだ」
  さすがテマリ、年の功、女の勘。
  バカと言われたカンクロウはぶんむくれだ。
  だまっていた我愛羅が口を開いた。
  「‥‥両方取ればいいんだ、砂さえあればなんでもできる」
ため息をついて部屋をでるバキ。
  風影様にとりあえず報告しなければ。
「入れ」
  「失礼します」
手短に結果を報告する。
  難しい顔で耳を傾ける先代。
  きっと今後のことを考えているに違いない。
「フッ、連中はまだまだ、だな。
  屋敷ごと捕獲すればつづらの大小に悩む必要もない」
この親にしてこの子あり。
  砂の未来に栄光あれ。
  扉を後ろ手に閉じたバキだった。