*キズつきます*

野外温泉につかるプチバカンス砂姉弟。
もちろん姉は塀をへだてた隣の女湯だが。

「は〜、やっぱでかいとのんびりできていいじゃん♪」
家でものんびりだろうが、と心の中でつっこみつつも
「‥‥そうだな、たまにはいいな」
時差が出たがとりあえず返事する我愛羅。

のびのびとへりにもたれかかるカンクロウ。
その胸板は我愛羅と同じ兄弟とはいえ、彼より遥かに逞しい。
同じ兄弟なのにこうも差がつくものか。
我愛羅は寝不足がたたっているのか兄に比べると全体に小作りだ。
薄くはないが、あばらが見えるような見えないような。

「フン」
面白くない。

と、その胸に残る傷跡に目が止まる。
ああ、サソリにやられた跡か。
我愛羅にも同じようなところに傷がある。
うちはサスケの千鳥をくらった跡だ。

「‥‥‥」
ニヤリ。

「なんだよ、気持ち悪いな、何笑ってんだよ」
「なんでもない」
「なんでもあるだろ、吐けよ」
「‥俺のキズの方が大きい」
「は?」
「ほら見ろ」
「‥‥そう‥‥か?」

微妙な間とイントネーションにジェラシーを感じ取り
さらに嬉しそうにニヤっとする我愛羅。
それを見てムカっと反応する悲しき兄のサガ。

「かわんねえじゃん!」
「‥‥かわる」
「かわんねえよ!」
「‥‥ひがむな」
「ひがんでねえよ、事実を言ってるだけだ!」
「一目瞭然だ、俺の方が大きい」しょうぶ
「でかくねえ、俺のがでかい!!」
「俺の方だ!」
「俺のだっていってるじゃん!!」

「デカいのデカくないの、うるさい!!
お前ら二人ともたいしたことないくせに騒ぐな!」

隣の女湯からテマリの怒鳴り声が降って来た。

激しい誤解ではあるが、あまりにぴったりな天啓の声に
二人は他の客の忍び笑いを背に、すごすごと退散したのであった。