ツリーのてっぺんに載せる星。
これでいつも我が家は大もめにもめる。
取るに足らない事と言えばそうなのだが、ひとたび家に足を踏み入れればそんな他人事は言っていられん。
何度大掃除師しようとも、バキがいくら言って聞かせようとも、
屋敷中が吹き荒れる嵐と傀儡を操る糸と殺意に満ちた砂で無茶苦茶になる。
「こら!いい加減にしないか、テマリ!カンクロウ!我愛羅!」
子供相手とはいえ、我が家のお子様方は忍びの端くれ。
プライドも実力も相当なものだから、子供騙しは効かない。
こちらも本気でかからねばならない。
「うるさいっ、親父は黙ってろっ、この星はあたしのもんだ!」
長女テマリ。
とほほ、女のくせにこの口の聞き方。
正直男親としては彼女に邪険にされるのが一番つらい。
「3人ひとからげにすんなよっ!
テマリっ、ちょっと年上だからって威張るなっ、その星は俺がのせるんじゃん!」
長男カンクロウ。
こいつは姉を姉と思っていない節がある、同時に親を親と思っとらん!
「‥‥それはボクのものだ‥‥‥邪魔する奴は許さない!」
次男我愛羅。
可愛い末っ子、ではあるが、油断大敵、扱う術が術だけに
兄弟喧嘩が兄弟殺しに発展しやしないかといつもひやひやさせられる。
砂の里にこんなやっかいな行事を持ち込んだ奴は一体誰なんだ!
風影特権でとっちめてやる!
「バキ!至急‥‥」
「はっ、もう用意できております」
こいつもよく出来た男だ。
皆まで言わずともちゃんと俺の指示を理解する。
‥‥毎年繰り返されているのだから当然か。
こうしてこの屋敷にはツリーが3本も立つ。
砂の里では泣く子も黙る風影の屋敷に、だ。
「‥‥フン、テマリやカンクロウのツリーなんか、ボクにものに比べればクズだな」
「この野郎!兄貴のツリーに少しは敬意を払ったらどうなんだ!」
「どっちもどっちだよ、ダサくて見てらんないね、こういうのはやっぱクノイチの出番さ」
「‥‥なんだ‥‥やるのか」
「なめられたまま、引き下がれねえじゃんよ!」
「弟だからって手加減しないよ!」
ああ、また始まった。
「こら!いい加減にしないか、我愛羅!カンクロウ!テマリ!」
クリスマスが終わるまで、我が家に平安はない。
サンタよ、はやくクリスマスを持っていってくれ!!
シングルファーザーは正月を待ちわびるのであった。
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