*課題*

「さあ作るぞ」

かけ声もいさましくエプロンに身を包んだ4代目風影と
やや引き気味ながら同じスタイルの長男、カンクロウ。

「ほれ、メモの用意をせんか」
「・・・・わかってんじゃん」

取り出されたのは『朝ご飯に野菜を食べよう』と題されたプリント。
どうやらカンクロウが潜入した先の小学校で出た宿題らしい。
適当にやればいいようなものを(現にテマリは去年そうした)
明日の朝食は俺がやる、とカンクロウが口をすべらしたばかりに
またその場に珍しくバキではなく4代目がいたために、
尋問ばりに根掘り葉掘りその珍しい行動の原因を追求され、
このような光景が展開されている。

「メニューは野菜いためだ、これでいいだろう」
やや不安げにうなずくカンクロウ。
「キャベツ、タマネギ、人参、ブロッコリー、コーン、ハム、と」
父親の行動を心配そうに見つめていた彼だったが、手慣れたものだ。
こんだけあれば立派なもんじゃん、とちょっと父親を見直す。

ササッと手つきも鮮やかに野菜を刻み、油を引いたフライパンに放り込む。
さすがやもめになって年期がはいっているだけのことはある。
その手際を確認、これなら大丈夫だなとメモを読み上げるカンクロウ。

「選ぶ時のポイントも書けってさ、おやじ」
「野菜を買う時か?」
「そうじゃなくて、冷蔵庫から出す時。
読むから言ってくれよ」

「まず、キャベツは?」
「『しなびる前のを使う』」
「・・・(つまり古い順か)」

「・・・・じゃあ、タマネギ」
「『腐っていないのを使う』」
「・・・(ウチにある野菜が古いのばっかみてえじゃん)」

「・・・・じゃあ、人参」
「『切って残ってる奴から使う』」
「・・・・(書けねえよ、んなこと)」

「・・・・・じゃあブロッコリーは」
「『残り物だから使う』」
「・・・・・(正直すぎだ、おやじ)」

「・・・・・じゃあ、コーンは」
「『きのう解凍して使い忘れたから使う』」
「・・・(だめだ、こりゃ)」

「・・・・・ハム・・・」
「『賞味期限がすぎているが火を通せば大丈夫だから使う』」
「・・・・・」

「それだけか?しっかりメモれよ、カンクロウ。
俺は親がやもめだからと後ろ指をさされるような育て方だけはしたくないからな」

シャキシャキおいしそうに出来上がった野菜炒めを横目に
課題をどうねつ造するかで頭が痛い孝行息子カンクロウだった。

 

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