カンクロウのブラックスーツ(というのも変だが)の胸には赤と黄色のエンブレム、
もとい丸いマークがある。
「あれは一体どういうセンスなんだ」
いつもスタイリッシュな弟からすると謎としか言えない。
自分の足で移動する忍者に交通安全祈願の意味なんかないし、
かといって枯れ葉マークの年でもあるまい。
上忍に若葉でもなし。
「いいじゃん」
で片付けられる。
きっとカンクロウ自身もたいして意味なくデザインしたのだろう。
まあ、『まるか』マークじゃないだけいいかもしれない。
だが、ことあるごとに我愛羅が嫌みったらしい視線を向けていたら、
突然マークが消えて、真っ黒けになった。
「こんどは無印良品か」
「うっせえな、なんでそうからむんだよ」
「アクセントが顔のクマドリだけというのも、今イチなもんだな」
「顔が良ければ全てよし、じゃん」
マジで言ってるのか、切れていってるのか。
だが、やはりマークなしは縁起が悪かったようだ。
戦闘でこてんぱんになった後は、またもとのスーツにもどったから。
そして、我愛羅が砂に無事生還した数日後。
療養中の我愛羅を見舞いに来たカンクロウの衣装の胸には
巨大な五円玉が輝いていた。
「なんで睨むんだよ、縁起いいんだぜ」
「‥‥おれは縁起なんぞかつがん」
「あ、そ」
ある日は目玉焼き、またある日はドーナツ。
なんだか食い物系が多いのはやはりモデルの志向が大いに関係するらしい。
で。
今日は夏向けの新作を披露すると言って来た。
ばかばかしいと思いつつ、兄の登場を待つ。
ノックの音。
「はいれ」
「よ、例のブツもってきたぜ」
「‥‥ここはヤクザの事務所ではない、誤解を招く発言はつつし‥‥」
そこにあるのは枯れ葉でも木の葉でも若葉でもなく、
スイカだった。
半分が赤に黒いポチポチ、もう半分が緑に黒のシマシマ。
「夏仕様のクールビズ」
「‥‥どこがだ‥‥」
「なんだ、もっとうけるかと思ったのに。
だめじゃん、こういう時こそ笑いで暑さを吹き飛ばさなきゃ」
たたき出されたカンクロウは、
なんだよ、冗談の通じねえ男だな、と文句をたれつつ、
ここはやっぱり『だってばよヨーヨー』の方が良かったかな、
と理解不能な思考を巡らせていた。
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