「バレンタインの前に診てやろうってんだ、
  礼は言われても文句を言われる筋合いはないと思うがな」
ピカピカと光る歯医者の忍具(?)を楽しげに弄びながら白衣のサソリが独り言。
トップバッターは大役を果たして現在有休消化中のダテ男、飛段氏。
「フン、こんなお子様にちゃんと歯の治療なんかできんのかァ?
  まったく暁ってのは目的といい、人選といい、よくわかんねェなァ」
「一番わからん人選はお前だろうが」
  「うわっ、いってえな!!」
いきなり診察台を後ろに倒され、
  ダメージ500点の飛段を無表情に覗き込むサソリ。
「ひてえんはよっ、フイフイふうなっ」
  (痛えんだよ、グリグリすんなっ)
「ふん、大口叩いてられんのも今のうちだな。
  ‥‥ほ〜、立派な歯だな、暁には珍しく虫歯ゼロだ」
「へっ、不死の俺様をなめてもらっちゃ困るね」
「フン、不死だか不死身だかしらんが、どうせ肉体は生身だろう。
  傀儡と違って年は食うんだから、
  死ななくてもよぼよぼになることには変わりないな」
「えっ‥‥‥ゲハハハハハ、冗談キツイぜ、サソリちゃんよぉ!」
「入信前にちゃんとヒアリングしたのか?
  暁の目的だって知らないまま入団したんだろ。
  ま、歯の方は心配ないだろ、ちゃんと年食っても生肉でも噛み切れるぜ。
  ほれ、うがいして終わりだ」
露骨に不愉快そうに診察台を降りる飛段に話かけるサソリ。
「そのままの体でいたいならいつでも相談に乗るぞ」
このクソヤロー、角都が戻って来たらいいつけてやる。
  とサソリを睨みつける飛段だったが心中穏やかではなかった。
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