『駄菓子ジャン』
カンクロウはかなりの駄菓子好きだ。
今日も買い出しに消えたと思ったら、怪しい袋を持って帰って来た。
「‥‥またか。」
甘いものやスナック全般が苦手な我愛羅の冷たい反応。
「なんだよ、人生遊び心なしじゃつまんねえじゃん」
もう慣れたもので、カンクロウは軽く流すとさっそく戦利品を机に並べる。
なんやかんや言って、我愛羅もこの鑑賞会にはしっかり参加するのが常だ。
「おっ、うまい棒の新しい味じゃん!」
「‥‥何だ、見ないで買って来たのか」
「箱買い」
「‥‥そこまで入れ込むほどのことなのか」
「いいじゃん、俺には大事なことなんだよっ、お前も食えよ」
「‥‥いらん」
すでに一本目を口に頬張っているカンクロウがなにやら不明瞭に言う。
「ほういわずにふえって、ほれはお前のふきな、す‥‥」
「‥‥砂肝か?」
そんな味のうまい棒があるのか、といぶかりながら、我愛羅も興味本位で一口かじる。
「ほうだ、ふまいか?」
カンクロウはもう2本目に突入している。
「‥‥もくまからん(よくわからん)」
なれないスナックのボソボソした感触と、リアルなようで、フェイクなような味付けに戸惑いながら食べる我愛羅。
テマリが部屋に入って来た。
「なんだ、静かだとおもったら、スナックタイムか、どれ、味見」
ひょいっと一本取り上げる。
「あ”〜、ぼれはぼれの‥‥」
カンクロウ、お気に入りのチーズ味をとられた模様。
「ふるはい(うるさい)、あだじもごれがびいの(あたしもこれがいいの)」
2人がもめている間に、我愛羅はようやく一本食すのに成功したようだ。
「‥‥よくわからない味だった、スナックになると砂肝も変わった味になるな」
テマリが我愛羅の前に落ちている空き袋をつまんで何味か確認しようとしたが、
さっとカンクロウがそれを目にもとまらない早さで取り上げると我愛羅の肩をぽんぽんたたく。
「まあ、風影ともあろうものがしもじもの食いもんをしらねえのは問題だしな、よかったら、もう一本食うか」
「‥‥一本で十分だ。
口直しに今晩は砂肝を頼んでこよう」
ドアがしまった後でテマリが聞く。
「本当にそんな味のうまい棒があるのか」
声を潜めてカンクロウが言う。
「嘘に決まってんじゃん。するめ味だよ」
実は結構これを気に入った我愛羅が、2人のいなくなった台所で、
自分の食べたうまい棒が何味だったかを知るのはそう遠くない未来だ。
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