『カルシウム』
「もうこれだけしかないのか?」
冷蔵庫を覗いたカブトが呆れた声を出す。
「まったく、あれほど買い込んでおいたというのに」
話題になっているのはカルシウムのもと牛乳。
骨を自由自在にあやつるためには当然骨の主成分カルシウム及びビタミンDが大量に必要になる。
「君麻呂を頼んだわよ」
大蛇丸に幼い君麻呂を託された日から、影の実力者、平たく言えば音の里のきりもり係カブトの頭痛が始まった。
「干し椎茸はまだ足りてるようだな」
日光に当てることでビタミンDの量が増す、というのでベランダに並べられたシイタケを数えながらつぶやく。
本当なら乳牛を飼いたいぐらいだ、とつぶやくカブト。
椎茸ならここのじけじけした隠れ家にピッタリだから問題ないのだが、
さすがに乳牛を飼うのにいい環境とはいいがたい。
「君麻呂は本当に才能豊かで素直だからやりやすいわ」
廊下の方から大蛇丸の嬉しそうな声が聞こえて来た。
「さあ、おやつを食べたら、もう一度新技をおさらいしましょうね」
新技‥‥どんな技にしろ骨がらみだ、また牛乳を買ってこなければ。
頼むから、早蕨の舞は控えて下さいよ。
眼鏡をクイッと押し上げるとふっと自虐的に薄ら笑いをうかべ‥‥
(なぜ、音にはスーパーがないのだ)(怒)
カブトはまた、買い出しに出かけたのだった。
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