また、である。
我愛羅が書類にサインしようと思ってペン立てを探るとまたしてもボールペンがない。
  この部屋へ出入りする人間と言えば限られている。
  バキ、数名の上忍、テマリ、カンクロウ‥‥
  皆に問いただしてみるものの、一様に否定する。
  しかし現になくなるのである。
「ペンの一本や2本ぐらい、緊縮予算でもなんてことないじゃん」
  ‥‥こういうことを言う奴が一番怪しい。
丑三つ時にカンクロウの部屋へ忍び込む風影。
  忍び装束のポケットをさぐる。
  でるわでるわ、ごろごろ出てくる、合計15本。
  ポケットが深い分うっかり入れた事にも気がつかないのか。
翌日。
  我愛羅に呼ばれて執務室へ出向くカンクロウ。
  「報告書にサインがないぞ」
  署名をおえた手は無意識にポケットへ‥‥
  我愛羅の厳しい視線に気がつく。
  見れば手にはボールペン。
  ポケットにもボールペン。
  「げ、俺かよ」
  確信犯ならぬ無意識犯。
「あ〜」
  困ったカンクロウはペンをくるくる回す。
  「カンクロウ‥‥‥」
  「ほれ、見つけといてやったぞ、出所はプライバシー保護のため黙秘な」
  ポケットの中の在庫を放出。
  「カンクロウ!!」
  我愛羅の怒声を背に脱兎のごとく脱走。
翌日。
  出陣にあたっていつものポーズをとろうと思ったら、
  ポケットが縫い止められている。
  「‥‥」
  「カンクロウ、手持ち無沙汰らしいな」
  口の端をつりあげた我愛羅の声。
  フン、とそっぽを向くと彼と同じように腕組みをするカンクロウ。
  傀儡とのバランスをとるのにその日一日苦労したそうな。
その後、執務室のボールペンが無くならなくなったかどうかの報告はまだない。
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