「‥‥まったく、お前は、ちゃんと歯を磨いたのか?」
「はたりはえだ、きたはい、ひようにはひをふはって‥‥ふがっ」
(当たり前だ、汚い、美容には気を使って‥‥ふがっ)
ここは暁診療所。
本日の診療科目は「死か」じゃなく「歯科」。
もっとも先生が例のサソリだから、どっちに近いかと言うと微妙ではある。
診察台にのっているのは今年のルーキー、デイダラ。
山のようなチョコを一気に消費したため、体の方は体術でエネルギーを消費するから心配ないとして
歯のほうはかなりダメージを受けた様だ。
「フン、まあ、いざとなりゃお前には手にも口があるから、そっちから食えばいいな」
開業医とはいえ、趣味の医者だから親身とか優しいとか言う言葉からはほど遠いサソリ。
うがいをしていた水をブッと吹き出して、慌てて抗議するデイ。
「バカ言うな、手の口は芸術用でものを食うような仕組みにはなってないんだよ、うん!」
「あ、そう」
サソリが素早く手をねじり上げて、手の平の口に指をつっこみ中をのぞく。
「確かに歯もねえな、これじゃ役に立たねえか」
「うるさいんだよ、どうせ旦那はチョコ食っても味も分らねえんだろ、
痛みもないかわりにさ、うん!」
「ホレ、この借り止め粘土を食わせてやろうか」
「やめろよ、変なもん食って口がへの字になったらオイラの人気が下がるじゃないか」
「ちょっと人気がでたからって、任務さぼるなよ、目的を忘れるな!」
「へん、脱落組が何言ってんだよ、うん」
旦那と若旦那コンビは、仲がいいのか悪いのか分らない。
ドアの外で楽しくこの会話に聞き耳を立てているトビくん。
なんせ、彼には歯もあるのかないのかわからない。
取りあえず今日の歯科検診もクリアでのんきなものだ。
「楽しいっすね〜、ここは!
テレビない訳がわかりましたよ〜」
「‥‥お前、暁を何だと思ってんだ」
順番待ちでナーバスになっているイタチが問う。
そうやら、神経質になる理由が口の中にあるらしい。
「何って‥‥順番を待ってりゃアキが出て入れる集団でしょ?」
「まったくアナタって人は、いつかその仮面をはいで顔を見せて頂きますよ!」
歯が次々出るから、と虫歯を見てもらえなかったキサメが八つ当たり開始。
「あ、いいっすよ、はいでもはいでも同じ顔の金太郎あめだったりね〜、歯歯歯歯はっ」
「「‥‥今のはシャレか‥‥」」
診療室の中も外もなごやかな暁診療所である。
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