土の匂い。

 

 

  そう言えば。

 俺が手のひらの感触を確かめ、モノクロの世界に色が付いたその日。

 砂埃とも違う・・・何か土の匂いを思い出した。

 この匂いは何だったかなぁと、隣にいる男に問うてみたが、間の抜けた返事しか返ってこなかった。

 

 湿った感触。

 黒にも近いような、こげ茶色の土。

 何だったかなぁ、昔、よく手の中で・・・この感触を確かめていた。この匂いと一緒に。

 

 おい、行くぞ。と隣の男に急き立てられ、我に返る。

 

 「なにボーっとしてんじゃん?お前らしくもない・・・。」

 

 ぽん、っと頭に手のひらを押し付けられ、ふいに思い出した。

 

 ・・・そうか、この感覚か・・・・。

 

 彼の手のひらに、確かに土の感触が戻った。

 ただこぼれ落ちてゆく愛情、感情、そして・・・身近にいる他人たち。

 砂のような代物だったそれらは、今や塊として、手のひらで味わうことすらできる・・・あの土の感触に似ていた。

 

*agasaさんから頂きました。
砂の無機質さと比べ、土にはもっと湿り気があり、生命が感じられます。
我愛羅がナルトとぶつかって心を取り戻したあとの設定でしょうか。
今までと違って、心ない他人の言動にかえって苦しむこともあるでしょうが、やはり人は一人では生きていけない。
我愛羅のことを大切に思う人の存在を彼が感じ取れるようになったことは、私は彼に取っては祝福だと思います。
agasaさん、素敵な詩をありがとうございました。
2007/4/28