今回は久々に俺一人の任務じゃん。
さっそく依頼書をもらいに行くとそこにはフル装備の我愛羅。
「行くぞ、カンクロウ…。」
なんだよ、今回は俺一人じゃないのか?
「俺はお前を送り届けるだけだ。」
そんなのいらねえって。ガキじゃねえんだから、それより依頼書くれよ。
「依頼書の内容は俺が知っている。」
だーかーらー。
今回は俺一人の任務じゃん。
お前が知ってるだけじゃだめなんだって。
「ごちゃごちゃとうるさいな。」
ザザザ――ッという不吉な音と共に我愛羅の瓢箪から砂があふれ出す。
あふれ出た砂はよりによって俺の身体をがっしりと拘束する。
「砂縛柩!」
ぎゃーーーーーーっっっ!!!!
じ、冗談じゃねーぞ!!!!!!
子供の頃の記憶が甦る。
我愛羅が大事にしていたクマのぬいぐるみの首をもいだことがある。
ちょっとした嫌がらせだったが、俺がやったとわかったとき、我愛羅の眼が光った。
次の瞬間俺は砂縛柩で捕らえられ、砂瀑送葬で葬られそうになった。
あの時は親父とバキがいてくれたから、腕とあばらの骨折だけで済んだ。
思い出すのも恐ろしい人生最大の恐怖だ………。
多分今度はダメだ。
俺が何をしたかなんて全然心当たりは無いけれど、これこそ"この世の恐怖"ってヤツ
だ。
この砂に拘束された奴らの末路は何度もこの目で見てきた。
身体がガタガタ震える。
けど、黙って殺られるつもりもない。
「我愛羅、離せ!
っく……、こんなことしてただで済むと思うな!」
悪あがきとわかっていても、俺はできるだけ抵抗しようともがきにもがいた。
自由になる口で目一杯わめき散らす。
「うるさい。」
今度は大きな砂の手が俺の頭をがっしり掴んで固定する。
マジかよ!?
この手がグーになったら、俺、もう終わりじゃん……。
身体だけならうまくすれば骨折だけで済むけど、頭やられたらそれっきりじゃん
よ………。
テマリ! テマリはどこだよ?
『姉さん』の説得で俺をこの状況から助けてくれよ。
もう身内はお前しかいないじゃん!!!
なあ、俺、何かしたか?
ただ任務の依頼書を取りに行っただけじゃん。
やがて我愛羅が移動を始めた。
がんじがらめにされ、死の恐怖と隣り合わせの俺の頭の中で繰り返すのは、たった一
言。
「オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬ
のか?オレ、死ぬのか?
オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬの
か?オレ、死ぬのか?
オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬの
か?オレ、死ぬのか?
オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬのか?オレ、死ぬの
か?………」(以下繰り返し)
やがて、見覚えの無い街の、とある家へとたどり着いた。
我愛羅が呼び鈴を押すと、子供二人とその母親らしい人が出てきた。
「依頼のレンタル忍(にん)だ。好きなように使え。」
砂に埋もれたままの俺をズイッと我愛羅は差し出した。
「依頼通り、俺が宅配したぞ。」
小さい方の子供が大声を上げる
「我愛羅だ! お母さん、我愛羅だよ! そうだ、さばくそうそうやって!」
バッ、バカヤロー!!!
全身から汗が噴き出す。
ガキ二人が目をキラキラさせて『砂漠葬送』を待っている。
嫌な沈黙が流れる――。
1秒、2秒、―――――――――。
俺は滝のように汗を流して、身体を硬直させた。
「それは今回の依頼にはないからな。やらん。」
じゃ、さっさとそう言えよ!
今までの間は何だったんだよ?!
殺るか殺らないか悩んだってことかよ?!
ザッと音をたてて砂が瓢箪へ戻るなり、我愛羅は姿を消した。
俺は今、そのウチの雑用係で毎日あくせく働いてる。
荷物の配達とか、子供の相手、家事の手伝い―――本当に雑用だ……。
こんだけの雑用のために住み込みまでしなきゃならないのはなんでなんだ?
「我愛羅、また来ないかな〜……?
ねえ、お母さん、今度はさばくそうそう見せてって頼んでよ。」
罪のない笑顔でとんでもないことを言いやがる!!!
母親の目が無いところで、チビのほっぺをツネる。
チビの発言はともかく、今、俺の一番気になることは、この家にいるとやけに熱っぽ
い視線を感じるんだよな―――。
着替えの時とか、風呂の時とか―――。
誰もいないはずなんだけどよ―――。
GIFT目次へ戻る
蛇足的後書:弊サイト一周年記念にいただいたアイコさんのイラストにヨーコさんがお話を付けて下さったコラボ作品です!
砂の包装でお届けものにされてしまったカンクロウ君の困ったチャンぶりがいい感じです!
ヘタレ加減もかわいいカンクロウといけず気味な我愛羅、そしてなぜかこのお調子者的性格がうちの次男にそっくりなお子様!
そして‥‥ふふふ、これって管理人ですよね、ほほほ、上忍にも気づかれる事なくおいしいシーンをいただく超上忍な私!
ありがとうございます、うちにはこんな素晴らしい忍びが出張してくれてますの、いつかこれに続編を書こうと日々妄想してます。
お二方、本当にありがとうございました、これからもどうぞよろしくです!