裏切り者。
  それが木の葉で俺たちの父親に送られた戒名だった。
  木の葉崩しでまんまと大蛇丸の企みに踊らされ、暗殺された風影、と。
もともと弱小だった俺たちの里はこの計画に失敗して致命的ともいえる深手を負った。
  木の葉と違い、厳しい自然環境に乏しい資源、理解のないパトロン、と三拍子そろったこの隠れ里。
  誇れるものといえば少数先鋭の忍び達ぐらいだ。
  この里は正直幸薄い里だと、ここに住む俺たちでも思わざるを得ない。
それでも。
  生きて行かねばならない。
  そして、俺たちに取っては、一見砂しかないこの厳しい環境も美しいものなのだ。
  激しく照りつける日中の太陽、砂嵐になれば自分の手すら確認できない果てしのない砂漠、一旦太陽が沈むと一気に氷点下にまで下がる気温。
  だからこそ。
  誰にも頼らない強さを砂の忍びは持っている。
  裏切り者呼ばわりされても負けないしたたかさを身につけている。
  なれ合いでは生きて行けない過酷な定めから目をそむけずに、現実と折り合いをつけて生きてゆく術を知っている。
その結果が、たとえ同盟国を欺く結末になったとしても、親父の取った道を間違っていたとは俺たちは思っちゃいない。
  あとからりこうな判断をするのは誰にだってできる。
  走りながら先を見極めることには常にリスクが伴う。
  こうしておけばよかった、とか、すべきではなかった、とかそんなことは誰にだって言える。
  だから、親父を非難する奴の声を聞いても俺たちはなんとも思わない。
  安全なところから生きるか死ぬかの決闘をながめている観客と同じだ。
味方を欺いたのだ、風影は。
  そうだ。
  だから?
  欺かれる方には落ち度はなかったのか?
  なぜそれに気付かなかったのだ?
  結果的に欺くまで追いつめたのは味方だったはずのお前達ではないのか。
  そして今でさえ、その事実に気がついていない鈍感さはお目でたいとしかいいようがない。
木の葉が再び同盟になったことは喜ばしいことだ。
  だが、また同じ状況にならないとは言い切れない。
  そうなれば、砂は何ら躊躇なく生き延びる最善の方法をとるだろう。
  汚いと言われようが、裏切り者を呼ばれようが、生き残ってこそ勝者なのだ。
欺く。
  この言葉の持つ意味は一通りではない。
蛇足的後書:あ〜あ、なんかめっちゃbitchyなお話ですねえ。
  ナレーターが誰かも釈然としませんが、まあ、現役の風影はこんなこと言えないでしょうから、歯に衣着せぬ長男、ということで妥協して下さい。
  私、木の葉の忍者大好きですよ、言い訳みたいだけど。
  我愛羅奪回編で木の葉が大活躍してくれてる今、何を書いてるんだ、といわれたら頭下げるしかないです〜。