頭巾

カンクロウといえばクマドリと頭巾。
物心ついてしばらくの間、傀儡使いはみんなあんな格好をしているものだと
思っていた我愛羅は、実際はそうではないと知って大層驚いた記憶がある。
ポーカーフェイスの彼のこと、はためには単に動きが止まった、
ぐらいにしか見えてなかったであろうが。

最近、しかし、カンクロウはこの頭巾着用をさぼっているようである。
「‥‥なんで頭巾をかぶるのをやめたんだ」
何かの折りにそれとなくふってみた。
「え?ああ、水着姿なのに頭巾付きのイラストとか描かれてやだったんだよ」
マジかジョークか判別できない答え。

ずっと着用して来たものなのに、思い入れはないのだろうか。
そう、例えば我愛羅のヒョウタンへのこだわりのような。
「‥‥なくても済むものをなんで今までかぶっていたんだ」
「からむことねえだろ、俺の勝手じゃん。
え?お前のヒョウタンみたいなものじゃないのかってか?
俺だって傀儡背負うのはやめねえぜ。
そういう我愛羅だってマトリックスの服になってから、
例の羽衣みてえな、マフラーみてえな、腰巻きみてえな布つけんのやめただろ」
「‥‥腰巻きは余計だ」
それに、あれがなくても風影の衣装なら充分裾がなびくから演出効果は変わらない、
とこれは彼が頭の中で思ったことである。

「ともかく、好みの問題じゃん、深く考えることねえよ」
そうだろうか。
風影たるもの、兄のような軽いノリで物事を決めることは許されない。
何か、何か理由が必要なのである。

「‥‥‥」
立ち去らない弟を見て、兄は我愛羅の性格上今の説明では不満らしいと悟った。
「実はな、小さくなったんだよ」
本当だろうか。
忍びたるもの、何事も疑ってかかるべし。

実物を持って来て、テレビの前でごろ寝の兄の頭にかぶせてみる。
入るではないか。
「‥‥うそつきめ」
「なんなんだよ、お前が理由を欲しがってたからこじつけてやったんじゃん。
理由なんてねえっていってるだろ」
「‥‥ものごとすべてに理由があり、根拠があるからこそ、結果があり、帰結があるものだ」

ヘの字の口、ハの字の眉毛になるカンクロウ。
「オイオイオイ、勘弁してくれよ」
「カンクロウが素直に理由を言えばそれで決着がつく」
「だから素直に吐いてるじゃん、理由なんてないってさ!」
「なぜ言わん!!」
「言ってんじゃん!!」

水掛け論。
こうなったら持久戦である。
そうなったら勝ち負けは決まっている。

次の任務の時、カンクロウが頭巾頭にもどっていたらそれは弟のせいである。

 

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