ふと見る自分の手。
  そこにもう死んだはずのおやじの手を見る瞬間がある。
  任務帰りの憔悴しきった自分の顔が鏡に映る時、写真でしか知らない祖父が俺を見つめ返してる。
俺って誰だ?
  カンクロウって誰だ?
  結局この砂の忍びの一派の一人にすぎない。
  たまたま2人風影が出た、ちょっと毛色の変わった一族の出であるというだけ。
  任務を与えられ、それを忠実にクリアすることを求められるのには何のかわりもない。
  結局の所、俺たちは里に、運命に操られてるだけのカラクリ人形なのかもしれない。
  命令通り、里のために、任務に命を捧げることを要求される存在。
  そんなことを考えちまう日もある。
俺のするべき事は本当にこれでいいのだろうか。
  今やってる任務に何か意味があるのだろうか。
  答えのない問いを投げ続けても誰も返事はしてくれない。
  底の見えない濁った沼に小石を投げ続けているだけ。
  広がるのは波紋ばかりで答えが浮かび上がる事はない。
だが確実な事が一つある。
  何かに命を掛ける事なくとも日々は過ぎ、時はうつろう。
  任務を放り出して、自分という名の最大の謎を解き明かそうと身構えても
  ぼうぼうとひろがる砂漠の中で蜃気楼を追いかけるようなもの。
  いつまでたっても幻との距離は縮まらない。
  その間にも命の砂時計は確実に砂を落とし続け、やせ細って行く。
ならば。
  一見、里と言う化け物に操られているように見えるカラクリに、あえて俺はなりすまそう。
  自分の事だけを考えつづけても答えが得られないのなら、
  自分の意志を押し殺す事で初めて見えてくる何かがあってもいいだろう。
過去と未来をつなぐ壮大な鎖の、一つの輪でしかないちっぽけな自分。
  でもその自分の中には過去も未来も確実に存在している。
  そして俺自身も。
   
*閉じてお戻り下さい*
蛇足的後書:弊サイト1周年記念にいただいたリキマルさんからの激渋カンクロウ。
旅立ちって感じですが、出て行ってもらっちゃ困るので(笑)、自身の葛藤からの脱却みたいな感じをイメージしました。
17歳と言えば自分のアイデンティティ確立に最も悩む頃だと思うのです、それは忍びとて同じでしょう。
いや、生きてる限り自分の存在意義を問い続けてこそ人間かも(いい年した管理人でも悩んだりして;汗)。
リキマルさん、素敵なイラストをありがとうございました!これからもよろしくです!